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【小松成美×高島宗一郎】福岡をアジアのリーダー都市に!若き市長の熱狂する瞬間

はじめまして!
NewsPicksアカデミア アンバサダーの猪狩久子です。

このブログでは、2017年4月にスタートした「NewsPicksアカデミア」のイベント・講義の様子や、アンバサダーの活動、雑感などを発信していきます。
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【講義レポート】「熱狂人」小松成美×高島宗一郎

ノンフィクション作家・小松成美さんが、第一線で活躍している人物の「熱狂した瞬間」に迫る、NewsPicksアカデミア講義「熱狂人」が、10月25日(水)、東京・フクラシア東京ステーションにて開催されました。

今回が第2回目となる「熱狂人」のゲストは、福岡市長の高島宗一郎さん。若きリーダーとして福岡市を牽引する高島さんに、小松成美さんがインタビューするトークイベントです。

入念な準備と神がかりな対話力でスムーズなトークを展開した小松成美さん。ただ聞くのがうまいのではなく、人の心を開き、相手の胸の奥にある思い、出来事、記憶までをも引き出す小松さんのインタビューの力は、高島市長に「なんでも知っていて話がしやすい」と言わしめるほど。そして、高島市長。元人気アナウンサーだけあって、伸びやかな声での軽妙なトーク、身振り手振りしながらの熱く語る姿はカリスマがあり、誰もが魅了される、これぞリーダーという風格でした。

当日はあいにくの雨にも関わらず、ほぼ定員が参加した大盛況のこのイベントをダイジェストでお届けします!

登壇者プロフィール
■小松 成美(こまつ・なるみ)/ノンフィクション作家
1962年、神奈川県横浜市生まれ。日本大学藤沢高等学校卒業。専門学校で広告を学び、1982年毎日広告社へ入社。放送局勤務などを経たのち、作家に転身。生涯を賭けて情熱を注ぐ「使命ある仕事」と信じ、1990年より本格的な執筆活動を開始する。主な作品に、『アストリット・キルヒヘア ビートルズが愛した女』『中田英寿 鼓動』『中田英寿 誇り』『イチロー・オン・イチロー』『トップアスリート』『勘三郎、荒ぶる』『YOSHIKI/佳樹』『熱狂宣言』『五郎丸日記』『それってキセキ GReeeeNの物語』『虹色のチョーク』などがある。2014年9月、高知県観光特使に就任。現在では、執筆活動をはじめ、テレビ番組でのコメンテーターや講演など多岐にわたり活躍中。
■高島宗一郎(たかしま・そういちろう)/福岡市長
1974年11月生まれ。アナウンサーを経て2010年に福岡市長として史上最年少の36歳で就任。2014年、同市長選挙における史上最多得票で再選し、現在2期目。国内外で積極的な発信を続ける日本の若き政治リーダー。2014年5月に獲得した「グローバル創業・雇用創出特区」を活用し、スタートアップビザ、スタートアップ法人減税といった様々な規制緩和、制度改革を実現するなど日本のスタートアップを、ムーブメントと政策の両面から力強く牽引する。

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なぜ巨大な穴は2日で埋まったのか_博多陥没事故

小松 みなさんも記憶に新しい自然災害や事故の時に、若き市長のリーダーシップはどのように発揮されたのか、そのことをぜひ最初にお話を聞きたいと思っています。

高島 それまで福岡は、さまざまなかたちで順調だったんですが、ああ終わったって思いましたね、その瞬間は。あの時ちょうどインドの首相が来日していて、総理がトップセールスで新幹線を売ってたんですよ。日本の技術はすごいと日本の総理が言っている時に、アレなんですか?って言われてしまったら、日本の評判を落としてしまうんじゃないかと。また、SNSの書き込みでは「これ、どこどこの国かと思った」、「日本じゃないあそこかと思った」などの書き込みを見て、私は日本の信頼を落としたと、ものすごく責任を感じていました。

時間は戻らない、戻せない。できることは唯一、今からすることだけだから協力をしてほしいと関係各社に話を聞いてもらったんです。例えばインフラの復旧に関して、ガス会社、電力会社、通信会社、下水道、上水道、いろんなものが地下に埋まってます。これを同時に作業って絶対にしないんです、安全性の観点で。わかるけど、安全も何もこういう状況だっていうことで、頼むから同時並行で作業してくれと、それから二段階復旧で、まずは仮復旧してくれと。今は一刻も早く力をあわせて元に戻す、復旧させて、日本の土木、日本の底力を見せようじゃないかと頼んだら、みんな協力してくれたんです。2日で穴は埋まりました。

小松 私たちはニュースで壊滅的なあんなことが、政令指定都市の真ん中で起きるのかと衝撃を受けたわけですが、2日間で穴は埋まり、1週間で元通りの生活が戻った。それは渾身のリーダーシップ。これこそ、すべてのご経験を結集したと言ってもよかったくらいですね。

高島 リーダーの仕事って決断することしかないんですよ。決断をし、その責任をとること。有事対応となったら、私は防災服にすぐ着替えます。すると職員が見てわかるのです。あ、今市長がこの服を着ているってことは、平時のようなのんびりした手続きをやってる場合ではないと。有事と平時はまったく違う。助けるためだったらなんでもいいし、助けられることができるはずなのに、できない理由なんて持ってきたら絶対許さない。いくら普段は受動的であっても、能動的じゃないと、災害有事対応なんて絶対にできないのです。

小松 決断とみんなを説得する力、コミュニケーションを取る能力の高さ。シン・ゴジラのヤシオリ作戦ですよね。

高島 とはいえ決断だけすればいいかというと、それだけではないんですね。よく「安全安心」とさらっといいますけど、「安全」と「安心」は別物です。例えば、原子力発電所の安全に関する数値を説明しても、不安な人にとっては関係ないんです。不安な人に、安全の話で説明しようとするからいつまでたっても解は出ないのです。市民は安全も大事なんですが、安心感というのがもっと大切で、それに対応できるのは、専門家ではなく町のリーダーです。平時は、民間にまかせておけばよくて、むしろ行政は邪魔しないのがいちばん大事なのです。

情報が錯綜する有事の時は、町のトップが説明し、声をかけることが、みなさんにとっての安心につながる。だから私はSNSを使って市民のみなさんに安心してもらうということに注力をしたのです。例えば博多陥没事故がヤフーニュースが出た時、それに対するコメントを薄目で流し読みしていたんです。目をはっきり開けてひとつひとつに囚われてはいけない。これは極端な意見だからどうでもいい、ここはみんなが共感している、こういうところは意外と伝わっていないんだなというのを確認します。これらを放置していると間違いなく次の日コメンテーターがしたり顔で指摘しますよ。先読みして、ここは不安なんだな、伝わってないなと思ったらQ&A式で答えておく。言いたいことが、いちばん短いフレーズで伝わるのはQ&Aなのです。このように不安に先回りをして手当をするということを心がけました。

小松 じつは私は現場に取材に出向きました。現場に行って工事の方たちに声をかけたら、「市長のために頑張る。あの人は絶対に福岡はできると言ったので恥はかかせない」と聞き、泣いてしまいました。素晴らしかったです。


中東問題に関心を持ち、放送局へ入社

小松 どのようにしてこのような若きリーダー、市長ができあがったのか。プロレスが大好きだとか。

高島 たしかにプロレスは好きでした。アントニオ猪木さんの『たったひとりの闘争』(集英社)という本を読んだのですが、猪木さんが参議院議員当時、イラクに日本人人質解放に行ったんです。猪木さんて、モハメド・アリと戦ってそれ以降に改宗してイスラム教なのです。彼は迷ったらまず相手の懐に飛び込めと、直接イラクに入って人質を連れて帰ってきたんです。当時はアメリカは正義の味方、典型的な悪い人をやっつけるようなものをテレビで見て感じ取っていたのが、その猪木さんの本を読んだらぜんぜん違った。どちらにも正義があって、正義の反対は悪じゃなくて正義なんですね。もう一方の正義ということ。メディアを鵜呑みにしていたら危なくないか?と思い始め、高校1年から中東問題、パレスチナ問題に興味を持っていたんです。

小松 そしてはじめて中東を訪れた時に、日本という国を考えてみた。

高島 よく「国家」のために、とか言いますよね。そんなのわかんねーよ、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、たしかに私も国家というものを考えたこともなかった。ですが、パレスチナという国家がないところに行った時に、国家があるというのはどれだけ恵まれているのか、私たちはこの赤いパスポートでどれだけ守られているのかということを実感したんです。その後、メディアを通すと人の主観が入ってしまうので、直接自分で確認したくて、学生同士で交流をやっていったんです。なんとアラファトとも会えて握手をしました。

小松 そういったことが就職へ関わってくるんですね。中東のエキスパートになり、中東のことを伝えたいということになりますね。

高島 中東のことしか頭になかったので、このままではいずれ中東戦争が起きてしまう、その時に自分はキャスターか現地の特派員になりたいと思っていたんです。

小松 そしてKBC九州朝日放送入社へと。

高島 はい。実際に入社後、キャスターは年に2回リフレッシュ休暇が取れるんですが、ニュースのメインキャスターが休暇を取り、私がピンチヒッターでメインキャスターで入っていた時に、イラク戦争が開戦したんです。本当に、戦争がはじまったということを伝えることができました。


集中力と準備、チャンスは誰でも掴むことができる

小松 キャスターの中でも、高島さんほど守備範囲の広い方はいないのではないか。ものすごく人気があり、中東の報道もプロレスの実況中継もされますよね。

高島 そういう日もくるかもしれないとずっと準備をしていたんです。

小松 プロレスを見ながら実況の練習をしてたんですか?

高島 そうです。あるプロレスの福岡大会の時に、私の同期のテレビ朝日のアナウンサーが、高校野球の中継で急遽来られなくなったんです。そして私がやることに。まさか本当にプロレスの実況中継ができるなんて思ってなかったんですよ。ですが、ここが私の素晴らしいところで、その時に準備していたノートをぜんぶ持ってきていたんです。

チャンスは誰にでもあると思ってるんです。野球がぜんぜんわからない私が言うのもなんですが、たとえストレートなチャンスボールが来なくても、塁には出られるチャンスはある。でも打ち返せるチャンスが来たとしても、集中力がなく、バッティング練習してなかったら打ち返せないでしょ。チャンスはやってくるけど、それを見極める集中力とふだんの準備をしてなかったら逃してしまうということ。チャンスがあったら口に出して言う。ふだんから準備をしておくことです。いきなり棚ぼたはありませんから。


人気キャスターから市長選出馬へ

小松 市長選出馬へすると、お友だちが離れていったとか。

高島 みなさん携帯電話に登録している友人知人いますよね。もしもみなさんが選挙出たら、その人たちは誰も応援に来てくれないですよ。「陰ながら応援してる」と言う人、選挙の時に一回も顔見なかった。陰に入るってことは、相手候補に見られたら困る事情があるんだろうと思ってしまいます。みなさん何気なくその言葉を使っているとしたら、本当に勝負している人からすると、ニセモノだって判断されてますよ、私はそう判断します。私は福岡市中が友だちくらいに思っていたんですね。視聴率1位を取っていたので、あちこちで声かけてもらっていたし。要するに、自分の調子がいい時、自分が順調だからまわりに人がいっぱいいるんですよ。だから逆境の時って、友だちいなかったのかって傷つきますよ。でもよかったと思ってます。順調でなかった時にいてくれた友だちは大事にしなくちゃいけないことに気がついたのですから。

小松 ある日長老がやってきて、市長選に出てくれってことだったんですね。

高島 「あ、時が来た」って思ったんです。学生時代に中東に行き、国家というものを考え、日本はすごいと感じた時に、将来政治家になりたいと少し思っていたんですね。でもいきなり政治家になれるわけはない、選挙に強くなければ政治家になれない、改革できない。まずはアナウンサーになろうと思ったのです。ニュースを伝えたりするのはやり甲斐がありますし、自分のキャリアをつくりながら、その次を考えていったのです。

小松 国政と思っていたけど、都市が国をつくるという思いが強くなり。

高島 どのように導かれても、そこで自分はやるべき運命なんだってことで納得できるんですね。だから「市長選に出てくれ」と言われた時に、「へー、自分の運命ってそうか、市長なんだ」と思いつつ、これは絶対に意味があるはずと考えていたんです。そうか、自分がよりよくして次の世代に渡したいと思っている日本というのは、さまざまな輝ける地域が集まった宝箱のようなもの、それが日本という一国になるのだ。それぞれの地域が首長によって変わる。地方の首長のほうが権限を持っているので、どんどん町を変えられる。そんな町を増やしていったほうが、日本が早くよくなるって思ったんです。


福岡市長に就任、革命を起こす

小松 すべて増、ありとあらゆることが。観光客増、国際会議増、税収増、市民満足度過去最高の実績ですね。

高島 税収の伸び率も最初の4年間で全国1位になって、国際会議の数も東京都に次ぐのが福岡市。一昨年、日本全国で国際会議は163件増えたんです。そのうち福岡市が63件増えたのです。

小松 東アジアを考えた時、まさに福岡が中心であるし、ハブになってますよね。とてつもないアイデアと、そして交渉力。海外に出向いてどんどん実現してしまう。

高島 その発想、アイデアについてよく聞かれるんですが、リーダーって、先が見えないと絶対に引っ張っていけないんです。例えばマラソンで真ん中で走ってる人に、前はどうなってますか?と聞いてもわかりませんよね。でもトップランナーに聞くと前が見えているわけです。私が行っている方法は、医療の分野、教育の分野、科学の分野等、あらゆるジャンルのトップランナーの視界に入ってるものを一緒に見せてもらうのです。トップの人たちが集まる会議などにおいて、今何が見えていて、何か課題で、この先どういうことが起こるか、彼らの視界にあるものを共有させてもらうことによって、次が見えてくる。そしてグローバルなものであれば、ローカルに置き換えてみるんです。


新しい価値をつくる人が評価される社会に

小松 「スタートアップ支援」は、福岡の象徴的な施策ですね。

高島 これからは成熟社会というが、我々の世代は成長を体験していない。それを社会や人のせいにしてもはじまらない。日本はこれからは人口も減り、成熟に向かうしかない。しかし、これまでになかったビジネスやサービスが生まれ、さまざまな社会の前提が変わってきている。果たして同じ前提のままでいくのか。そこまでは想定できてないはずでしょう。私と同世代やもっと若い世代、近隣諸国の人々は、みんな成長できると夢を抱いてチャレンジしている。なぜ日本の子供たちに、これからは成長はなく成熟だからとか言うのか。絶対に受け入れられない。この想定を絶対壊していきたいと思ってるんです。

そのためにいちばん手っ取り早い施策は、新しい価値をつくる、新しいビジネスをつくることです。もっとみんなが欲しくなるもの、マッチしたものを生み出すリスクを取ってチャレンジした人が評価される社会にならないといけないのです。だからそのような新しい価値をつくるチャレンジする人を応援しようということを福岡で行っているのです。


人生100年時代の持続可能な社会モデルづくり

高島 人生でいちばん進んでいるプロジェクトだと思っています。「福岡100」は、人生100年時代の、100のアクションです。人生100年時代なんてあっという間ですよ。いかに健康寿命を伸ばしつつ、介護の時間を極めて短くしながら最後の医療につなげるか。こういったことが大事になってくるんですよ。それに対するアクションがいっぱいあるということなんです。

小松 IT、AIの力も使うけれど、ちゃんと人が介在するんですね。私福岡に住もうかな。


猪狩久子 Hisako Igari
NewsPicksアカデミア アンバサダー
Web・メルマガのディレクター/編集/ライター|コルクラボ2期生|
https://newspicks.com/user/510845

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