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富士山のバイプレイヤー、宝永山に登る。

2023/9/12

おとといで富士山の登山シーズンは終了。マイカー規制も解除されたはず。ほんとに5号目の登山口まで車で行けるのかな?。ちょっとだけ不安も持ちつつ出かけてきた。今日は何かと騒がしい登山シーズンが静まったことを期待して富士山へとやってきた。だからと言って頂上に行こうとなどという大それたことを考えているわけではない。まあ、明日も普通に出勤なので疲れを明日まで引きづらない程度のところまで登って降りてこようと思っている。でも、ほんとに富士山は静かになっているのかな?。試しというのもなんだけど、シーズン中のバス発着点の水ケ塚駐車場に寄ってみた。朝6時前だけど何台か車が停まっている。とはいえやっぱりもう富士山シーズンは終わってるんだなって実感。シーズン中は車と人でごった返してる。ちょっと寂しさも感じるけど、人が少なくなった富士山を訪れのは正解だったなと実感。さらに今日は超晴天。ここからも富士山がバッチリ見える。テンションあがるなあ。さあ、富士スカイラインで5号目までドライブだ。今年の富士山。シーズン中に一度来たけど、その時は交通規制のない御殿場口コースから2800mぐらいまで登った。ここのコースはずっと下から登らなきゃいけないし蟻地獄のような砂利道なんだ。キツかったー!。今日は5号目から登れるから2500mまでは車で行ける。富士宮登山口へと続く道に入る。九十九折りの林間の道が続く。合間合間に富士山の勇姿。快適なドライブロードだ。広葉樹の林は徐々に唐松の林に変わり、高度が上がってきていることを実感。車窓の向こうが開けると信じられないほどの高さの眺望。この感じは他の場所ではそうそう見ることができない高度感だ。まるで飛行機に乗らないと見られないような眺望。この景色を見れただけでも、ここまで来たかいがあると行ってもいいと思う。下から見る富士山も素晴らしいけど、富士山から見下ろす下界のダイナミックな眺望は格別なんだよ。だからこうやって一年に何度も来てしまう。唐松の林も開けていよいよ富士宮口の5号目の駐車場に到着。やはり車がいっぱい停まっている。でもずっと進んで奥の方に空きを見つけた。ラッキー!!。よかった。半分あきらめたんだけど。車を停めてドアを開ける。スーッと冷たい風。日差しは強いけど、下界とはだいぶ季節が違っているみたい。さあ、身支度しよう。靴を履き替えて。富士山歩く時の必需品、靴に砂や砂利が入らないようにするためのゲーターを装着してと。これで足元の装備は完了。あと、ポール2本出して。服装は長袖の下着にTシャツの重ね着です。あと水忘れないでリュックに捩じ込む。さあ、出発です。でもなんか今日は息苦しいような感じがするな。身体に仕事の疲れが溜まっているような感じがする。眠たくてあくび出るし。そんなことも言ってられないか。登山口の階段のところまでよたよたと歩いていく。この登山口に来たのは去年の11月だったな。登山道には雪が積もってた。もうすぐ、いろんなところに行く時はチェーンスパイクを忘れずに持っていくことになるんだろうなあ。ま、その時まで秋の穏やかな山を楽しもう。階段を登り切るといきなり岩の登りになる。今日はちょっと面食らった感じがする。キツイな。ここんところ楽ちんな山行しかしてないから身体鈍っているのか?。富士山の岩道。軽石っぽくて置いた足がフラフラする感じで怖い。岩道というより浮石だらけでメチャ歩きが不安定。ポール伸ばして慎重に登っていく。まだ調子出てないから、ほんとおぼつかない足取りになっている。それに、やっぱり息苦しい。一旦岩の登りが終わりだらだらの登りに入る。六号目まではほんのそこまでなんだけど、全然近づいて来る気がしない。六号目までってこんなに遠かったっけ?。ふつうに急登の山道登ってるみたいに難儀してる。六号目までのラスト。もうちょいで小屋だと思ったところで、大声で声かけながらブル道を下りてくる人々。わ、横たわった人の乗った担架を運んでいるよ。運ばれている人は布かけられて様子はわからない。事故かな?。それとも体調崩したか?。どっちにしても無事でありますように。きっとちょっと前まではこんなことになるとは夢にも思っていなかったんじゃないか?。それが山というものだね。今、ふつうに歩いている自分だって数分後はどうなるかわからない。まもなく六号目の小屋の前に到着。早くも今日はベンチにドッカと座ってしまう。息上がってるな。苦しい。富士山にいること実感。さてこれからどうするか?。ここから七号目、できたら八号目まで登ってみようかとも思っていたが見上げると上を行く人が歩いて行く登山道が今日はあまりにも急に見える。そしてさっき担架で運ばれていった人をみたこともあって、ちょっとびびっている。さらになんか体調イマイチだしね。今日は上に行くのはやめて宝永山の方にしておこう。息も整ったところで、立ち上がる。富士山山頂へのみちはバリケードで封鎖されている。でも横の茂みの間から人々は入り込んで登山道を登って行く。ここからは自己責任ということでね。自分はそれを横目に見ながら、正しい登山道を進む。だからといって自己責任は回避されるってわけじゃないけど。この富士宮口は六号目と宝永山までの登山道はまだ通行禁止にはなっていない。だから、宝永山経由でも富士山頂にも行けるし。登山シーズンは終わっていますと宣言されているけど、結局は登る登らないは自由。あくまでも自己責任。でも万が一のことがあったら、さっきの担架の人みたいにたくさんの人の手を煩わせることになる。そういう多大なリスクを背負って登っていく。山行では迷ったら止めるというのが自分のルール。だから今日は止めた。王道の富士山を登ることは止めたけど富士山を歩いていることは止めていない。なんだかややこしいこと言ってるけど、富士山の横っ腹にドカンと開いた穴のような宝永山。今日の目的地はそこに行くこと。六号目に向かう道からも小屋の前のベンチからも驚くような絶景。駿河湾。伊豆半島が信じられないほど遠くまで臨める。眼下には愛鷹山、さっきまでいた水ヶ塚駐車場も見える。山側を見れば富士山の七号目や八号目の小屋。ハイマツが茂る岩の道をしばらく歩いていく。なんだか今日は歩いていると体が左にぶれていく。これって疲れてくると現れる現象だ。まだ1時間も歩いていないのに。しかもほぼ水平移動。一体どうしたんだ?。ちょっとした下りも足がおぼつかない。大丈夫か?。そんな不安を抱えながらも宝永山の火口を臨む場所までやってきた。ここから先は樹木はまるっきりない。火星?のような風景が広がっている。火星なんて言ったことないから似てるかどうかなんて知らないけど。ともかく殺風景だけど圧倒的な風景。火口の中を宝永山の頂上へと向かう道がくっきりと見えている。遮るものが何もないからこの道を進んで頂上に辿り着くのもすぐに思えるんだけど、そうじゃないんだよね。その前に一旦下って火口のところにベンチあるからそこで休憩しよう。いまだに調子出ていないし。今日はいい陽気なのでこの辺りも爆風とか吹いていない。人もまだまばら。ベンチも今なら独占できそう。休もうと思ったら、ちょい歩みもはやまるというもの。火口をぐんぐん下ってベンチになだれ込む。疲れたーっていうほどではないが、やっぱり疲れた。まだ登る前なのにね。実際ここから先の道の厳しさ思うと今日の自分に登り切れるのかと疑問符がいくつもいくつも並ぶ。ここでパン食べて帰ろうか?。という選択肢もあるけど、それには乗らないで、水一口飲んだだけで不用意に立ち上がってしまった。ポールを握って登る気満々じゃないか。それじゃということで、自分の意識も追従する。歩き始めるとまもなく蟻地獄のように進んでも進んでもズルズル引きだり込まれる道になる。こんな道、ここでしか経験したことがない。苦手な岩岩の道とも違う。足の下には安定するするものが何もない道。一歩踏み出しては半歩下がる。そんな感じ。近くに見える岩を目標に歩いていてもいつまでもいつまでも近づかない。御殿場登山口からの道もこんな感じなんだけど、ここの道はさらに傾斜がキツイと思う。ただ、御殿場コースの道ははるかにながい。どっちにしても、キツイコースだ。さらに今日は調子悪かったはず。でも、それも忘れてしまった。あまりにもキツくて息することに夢中になって、不調を気遣う余裕もなくなっている。ズルズルともつれる足をなんとか持ち上げて高度を1ミリ1ミリと上げていく感じ。ふつうに生きていたらこんな経験できないよね。何倍かの重力を全身に受けて富士山の皮膚にへばりついて歩いている。そんな微々たる歩みでも一歩一歩の積み重ねはいつかは結果を出すみたいで、宝永山の頂上への道の最初の曲がり角のところまで来た。やったー。と思ったのも束の間。ここから先はさらに道は急になる。さらに歩みも遅くなる。しかも止まると仰向けに倒れてしまいそう。踏ん張って立っているのも大変。だから、頑張って歩き続けるのが最善の方法という地獄。見上げれば頂上付近の稜線がすぐそこに見えているのにな。そこまで登り切るにはどれだけ時間かかるんだ?。まるで人生?。人生楽ありゃ、苦もあるさ~♩。何バカなこと言ってる?。苦ばかりで楽なんてどこにもないじゃないか?。そんな愚痴言っても状況は何も変わらない。ただただ一歩を踏み出すこと。半歩ずり下がってもまた一歩。それが今できること。一歩一歩。頭上の稜線のさらに上には怖いほどの青空が控えている。そこを雲がすごい速さでかすめていく。朝の無垢な時間が刻々と過ぎていくに従って完璧な富士山の容姿も陰ってくるのかな?。そして富士山から見下ろす風景もガスってくる?。それはそれで仕方がないのだけれど、できればくっくりした景色を眺めたいし、そこに立ちたい。さあ、頑張りどころだ。五歩も進めば足が止まる。息を吸ってまた歩く。ようやく最後の曲がり角のところまで来た。ここからは今までの傾斜が少し緩んで、ストックで体を持ち上げるような歩行をしなくても進める。もう少しもう少し。稜線が近づく。今まで砂利の壁に阻まれていた視界がバーンと開ける。まるで空の上だ。日本の空の上に立ったような感覚。雲が日本の空にぷかぷか浮いている。日本一の山から見下ろす空。なんと表現したらいいのかわからない。でもここは富士山の頂上ではない。あくまでも富士山の頂上のずっと下2700mぐらいの場所。それでもここから見る風景の満足度は富士山の頂上で味わう気分に近い。かえって人もあんまりいなくてしっかりじっくり感動を噛み締めるにはいいかもしれない。さあ、宝永山の頂上の標識があるところはもうちょっと稜線を歩いた先だ。ここから先は平らな道。風景をじっくり味わいながらのビクトリーロード。空中を歩いているような高度感。無数に湧いている雲が眼下にあふ。この視点は中途半端な山では味わえない。まさに神の視線を付与されたかのよう。高いところって景色いいなあ!。みたいなレベルをはるかに凌駕している。見渡せる範囲が怖いぐらい。もしかしたら水平線とか地平線とかかもとまで思ってしまう。そこまで行かなくても日本列島はカバーしてんじゃね?。ぐらいなレベル。だいたい関東地方ならどこからでも富士山見える。だから富士山からならどこまでも見えるってことじゃないの?。山梨側からだと南アルプスから八ヶ岳から、北アルプスまで見える。北アルプスの向こうはもう立山とか日本海だよね。日本地図をリアルに体験できるんだ。すごすぎる。こんな夢想は富士山に来なきゃ経験できない。3700m越えのホントの富士山の山頂に立つのは体力も時間もいるから、そうそう行ける機会もないけど、宝永山だったら一年に何度も行けるかも。しかも富士山のエッセンスは十分に満喫?できる。もちろん富士山の山頂に行けた時の感動は普段味わえない高揚感と達成感がある。はるか下方に宝永山の噴火口見下ろした時の驚き。でもこうやって宝永山から見上げる富士山も異様にデカいし。圧倒感に打ちのめされるばかり。大砂走りの上方に見える小屋。富士宮口から登るコースに点々と見える小屋。いつかまだ登れる日はあるのかな?。死ぬ前にもう一回行きたいな。そんな微かな望みを抱かせる場所も宝永山だ。たくさん湧き上がる感情と共に宝永山の山頂の標に向かう。ベンチはまだ空いているやっと座れる。崩れるようにベンチに雪崩れ込む。疲れたー。まだ雲はここまで上がってきていない。眼下も振り返っても。眺望良し。まずは水と食事だな。パンをリュックから取り出してかぶりつく。もくもくと眼下に漂う雲の群れを眺めながらのアンパンと水。最高のランチ。ここで休んでいる人も少ない。富士山を登る道々にある小屋のように賑わってあるわけではない。静かに登ってきた達成感に浸れる。聞こえてくる会話。さっき六号目から登って行った人たちどの辺までいったかしらね。無事かしらね。みたいなこと話している。富士山に登るという道程を選ばずに客観的な立場にいる人たち。自分もそうだけど。でもこういう関わり方もある。ここにこうしてあるのだって富士山の一部にお邪魔していることに違いないのだし。今の自分の能力じゃ上に行くのは無理。でも決して悪い気分じゃない。パンをしっかり平らげ。ちょっと近辺ブラブラと撮影タイム。飛行機からの空みたいな写真と火星の表面の赤い砂の大地みたいな写真ばっかり撮って。だいぶ歩く気力も回復してきたみたい。さあ、下りようか。さっき歩いてきた道を引き返す。すぐに下りのザレ道。登ってくる時、メチャ疲れて、この道無事に下れるか、心配だったけど、大丈夫!。わりとすんなり下りれる。大砂走りみたいに爆速が止まらないような道ではない。ある程度スピードは出るが、怖いほどではない。転んでも怪我もしなさそうだし。蟻地獄は這い出すのは大変だけど、落ちていくのは楽みたい。途中で犬を連れて登ってくる女の子。こんなところまで犬がいるのか?。すごいな。やっぱり犬は元気なんだな。と思って犬の表情伺うと物凄く苦しそうに息ている。ぴょんぴょん駆け上がるたびに半分ズルズル砂に足を引っ張られる。なんだ自分と同じじゃないか。やっぱりワンちゃんだって苦しいんだ。頑張れ頂上すぐだよ。頭をわしゃわしゃしてエールを送った。よかったね。もう少しだって!。ありがとうございました。会釈を交わしてさようなら。こちらはもう頑張った後だから。余裕のふるまい。さあ後はエスカレーターで降りるように宝永山の火口に吸い込まれていく。火口の休憩ベンチにあっという間に到着。ここでもう一回休憩していくか?。水一口。ここからもう一回登り返すんだよな。ちょっとキツイけど、朝の体のキレの悪さはもう感じないから六号目まで行けるかな?。その後も休憩なしで五号目の駐車場まで無事ゴールできそうだ。今日の富士山けっこうキツかったけど、天気にも恵めれて気持ちよかった。今年もう一回ぐらい来たいな。今度は吉田口の方。今日も貴重な思い出をsりがとうございました。

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