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vol.2 寛太さん インタビュー    【NPO Times】

初めに


今回のテーマは、今流行りの地域おこし、地方創生である。皆さんはその言葉をどれほど知っているだろうか?また、どんなイメージを持っているだろうか?過疎化する地域を盛り上げるのは大変そう?はたまた、今注目されててアツい分野?実際にこの記事を読んでいる人の中には今地方に住んでいて、この分野に興味をお持ちの方がいるかもしれない。一方で、聞いたことはあるけど実際どんなことをしているのか想像がつかないという人もいるだろう。そんな人が少しでも地域おこしの問題を知り、関心を持てることを願って記事を執筆したのでぜひ最後まで見てほしい。さあ、前置きはここまでにして早速本題に入っていこう。

インタビュー


寛太さんとは?


今回インタビューの依頼を快く引き受けてくださったのは、鈴木寛太さんだ。寛太さんは大学在学中に東日本大震災がきっかけでボランティアに行くようになり、岩手に何度も行くうちに思いが募って一度就職した神奈川のIT企業をやめ、岩手にIターンなさった方だ。現在は岩手県花巻市大迫町にお住まいになっており、大迫町内外の交流を促進させつつ自身のぶどう畑を手がけ、その傍ら「KANTAWINE」という自分のワインを作るなど本当に幅広く精力的に活動されている。写真の通りなのだが実際にお会いすると本当に優しく実直な方で、大迫町の方も寛太さんととても仲が良く、みんなから慕われている。

大迫町の様子

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インタビュー開始


NPO-times(以後N):それでは、本日はよろしくお願いします。早速ですが、インタビューを始めさせていただきたいと思います。

寛太さん(以後か):よろしくお願いします。

Q1.大迫に来た経緯

寛太さんは東京の方とお伺いしたので、岩手にいらっしゃった経緯をお伺いしたいです。

か:東日本大震災を機に岩手県遠野市にボランティアに行くようになったんですね。そこに何度も行くうちに人の温かさなど東京では知りえないことがあって、もう一つの故郷のように感じ、岩手で働きたいなと思い始めました。でも就職活動をいざすると岩手で働くっていうのはなかなか現実的ではなく、関東で就職活動をして神奈川のIT企業に就職先が決まりました。ただやっぱり岩手の思いが募って、1年ちょっとでやめたんです。それは大学時代の友達が花巻市の地域おこし協力隊っていうのがあるよっていうのを教えてくれたことがきっかけで、本当に勢いだけでしたけれどこれだったら岩手で働けるんだ、もうそれしかないなと思って地域おこし協力隊になったんですよね。

N:すごいですね....!!!!自分だったら辞める決心をするのは簡単じゃないだろうと思います。

か:決心するのは結構悩みましたね〜。せっかく入った会社を本当に辞めていいのかなとか思ったんですけど本当にやりたいことをやろうと思いました(笑)。

N:そうなんですね。

Q2.地域おこし協力隊について

:寛太さんが岩手にいらしてからなされていた地域おこし協力隊では、具体的に何をなさっていたのですか?

か:僕はぶどうとワインが有名な花巻市大迫町で活動していたのですが、その町はぶどう栽培の農家さんの数が高齢化で年々減っていました。僕は生産者をどうやったら増やせるかとか、産地をどうやって盛り上げられるかとか、この街を盛り上げてくださいみたいな結構ふわっとしたテーマ設定で頑張ってました(笑)
 実際のところぶどうに触れる機会は少なく、むしろ人対人で仕事をして大迫に東京から友達を呼んでワイワイお手伝いをしてもらったりとか、PRとして大迫のワインを東京のお店にやってイベントを開いたりとかしていました。 

N:あ、そうだったんですね(笑)寛太さんのHPを見るとその後に就農され、かんたはうすを作ったと書いてあるのですが、それはどんな経緯だったのでしょうか?

か:就農したのは、3年間任期の協力隊を卒業する年の5月です。そのちょっと前に友人のぶどう農家さんから家の畑をやめちゃうから誰かやらないかっていう連絡を受けて、僕もやってみたいって気持ちがふつふつと湧いてきたんです。それは3年間大迫に居るとありがたいことに本当にたくさんの仲間がいて、ぶどうを使って地元を盛り上げたいという気持ちがどんどん芽生えていたからなんです。
 そして大迫には毎年夢や希望を持って来ていただいている新規就農の人がいるんですけど、彼らがいざ農業を始めると理想と違う部分が出てきて苦しむところを見てきました。その時によそ者の僕自身がぶどう栽培を行い、自分ごとにして寄り添いたいと思いました。

N:確かに実際に就農した寛太さんの存在は新規就農者にとって心強いですよね...!では、かんたはうすの話はいかがですか?

か:かんたはうすの方は僕の家の屋号で、そこの管理団体がかんたはうす運営組合っていって、僕と後一人のメンバーが一緒にワイン用のぶどうを作っています。
 かんたはうすは、大迫にゆかりのある花巻の協力隊で、家を設計できる方が僕と一緒に大迫に拠点を作ろうって話が出てきて、僕も協力隊卒業を迎える間近だったのもあり、農家さんとか友達とかを泊めるような交流の場所を初めて大迫に作ろうと思っていたのが実現しました。何十軒も空き家を探し​​てようやく見つけた家を改修したんですよ(笑)できたあとは、ロケットストーブの火を見ながらぶどう農家さんの仲間と交流会を開いたりしてました。今はここによその人を受け入れて、一緒にぶどう収穫をやったりしていますね。

かんたはうすの様子
かんたはうすにあるロケットストーブ!迫力満点だ!

N:めっちゃ楽しそう(笑)

Q3.今の寛太さんの活動

では、今やっている活動は主にどんなものなんですか?

か:​​メインはぶどう農家をしていて、他には大迫高校という地域に一つしかない学校のコーディネーターをしています。実は全校生徒が県内最小の56名で、学校の生徒確保をするべく協働しています。活動内容としては、例えば地域にある古いベンチを自分たちでデザインしたものにおきかえるベンチプロジェクトをしたり、地域未来留学っていう首都圏やよその県から高校生を招いて3年間宿かホテルで下宿して大迫高校に通ってもらうっていうことがあります。あと教育関連でいうと、地元の大迫小学校の校庭に一列ぶどうが埋わっているのですが、小学3年生が総合学習でそのぶどうのお世話をする「ぶどうめげな会」も手伝っています。めげなっていうのは「可愛い」を岩手ではめんこいっていうんですけど、それがさらに訛った名前ですね。実は私会長をやってるんですよ(笑)でも自分一人じゃできないところもあるので、今年から大迫高校から学生を連れてきて一緒に体験をさせるっていうことをスタートさせました!
N:そうした仕事同士を結びつけられるのも寛太さんがいろんなことを手掛けているからですよね!
 
か:うんうん。あとはやっていることはかんたはうすのある枡沢地区の公民館長です。これも地域のつながりを強くする仕事が多いですね〜。住民が集まる公民館の管理や、資源回収をしたり、連絡事項を一軒一軒回したり、地域の運動会などの行事にも参加しなきゃいけないっていう感じですね。ちょっと話は変わりますが、僕は協力隊になる前から関わることをすごく大事にしてきたんですよ。なぜかというと関わることによって地域の人たちも若い人が来たとか、あの人誰なんだろうみたいな会話がどんどん生まれて行って相乗効果というか化学反応がおきるような気がしているので僕はどんなに忙しくてもやっぱり関わる人たちを増やしたいです。それが課題解決につながるんじゃないかなというふうに思っています。

N:なるほど。本当にその通りだと思います...!

 Q4.活動の魅力

では、その活動の魅力を教えてください。

か:ぶどう栽培だと、やっぱり食べた人が自分の作ったぶどうを美味しいって言ってくれるのがやりがいだし自分の生きがいにも通じるところがあるなと思いますね〜。あとは、ぶどうを通じて首都圏から収穫のお手伝いに来てくれる事があって、その人たちみんなと一緒に作業をして苦楽を共にできることも本当に嬉しいです!
 大迫高校だと、生徒たちが少しずつ成長して行くような姿を見るっていうのが一番やってて良かったなあって思うし、たくさん苦労はあるんですけれどもそこが楽しくてやってますね。
 公民館長の楽しみって....なかなかないですね....(笑)割と雑務って感じが強いんですけど(笑)… 魅力でいうなら地域の繋がりが強くなっていくっていう感じですね。公民館長同士の集まりがあるんですけど、そこに出席することで名前が売れるみたいな(笑)

N:なるほど(笑)

Q5.達成できたこと

今まで達成できたことはなんですか?

か:いや〜全て道半ばって感じがあって、なかなか達成できたなんて事はないですね。
 ぶどうで言うと、必ず毎年実るんですけど自分の思った通りに行かなくて良いぶどうにならないなあとか、それは高校や小学校でもそうでして、それをどうにかして目標に向かってやっていくっていうのは自分の楽しみでもあり生きがいだと思っているので、達成はまだできてないです!

N:なるほど..他の人が足を止めるかなって僕が思うような所でもそれを道半ばって捉えてなんか やられてきてるっていうのが寛太さんの本当に尊敬できるところだなというふうに感じています。では、次の質問に行きますが

Q6.課題

今課題に感じていることはなんですか?

か:もう課題山積なんですけど(笑)例えばぶどう農家だってやっぱり7,80歳ぐらいの人がメインなので、もう5年10年したらちょっとやばいんじゃないのっていうところもありますね。栽培者がどんどん減っていくので。
 そうすると大迫は、県内ではぶどうの名産地として有名だということをどうやって打ち出していくかっていうことも考えねばならない一方で、ぶどうの生産量も確保しなきゃいけなくて、僕の中ではじゃあぶどう農家を増やしていこうねっていうのが優先だと思ってるんですけどなかなかうまくいってないですね…。僕も新規就農希望者の相談にのることもありますが、やっぱり生産量を増やしていかないと今後やばいんじゃないかと思っていますね。
 あとは高校で言えば唯一の大迫高校が無くなっちゃうとドミノ倒し的に次は中学校、さらには小学校となくなっていってどんどん人も減っていくと思っています。大迫高校が最後の砦だと思っているのでなんとか生徒数を増やしていきたいと思っていますが、高校の魅力をどう外に伝えていけるかが課題だと思っているのでそこを自分の中で掘り下げています。
 あとは現状だと公民館も維持が難しくなってきて、いずれ無くなるんじゃないかなと思っています。だから、この地域だけに縛らずよその人が関わりをもって運営して行く形にしていかないとと思っています。公民館がなくなると関わりが薄れてしまうっていうところが大きいのかなと思っていまして、どうやったら今いる人たちが負担を抱えずに幸せに生きていけるかなっていうのが自分の中では課題ですね。

N:素敵なお言葉ありがとうございます!では

Q7.大迫の魅力

寛太さんから見て大迫にしかない魅力ってありますか?

か:ぶどう、伝統芸能、ワインと何をとっても一つ一つに歴史があるんですよね。そしてそれを支えている人たちがたくさんいて、その人たちと関わる魅力があるのが他の地域と違うところかなって思っています。皆さん温かく協力的で、僕のやりたいことも後押ししてくれたり、かんたはうすや新規就農の時にも助けてくれたりしていて、人の温かさは一番感じられる部分です。僕はもう8年ぐらい大迫に居るんですけど、その理由の一つはこうした人の温かさかなと思います。
N:ありがとうございます。それでは次の質問にいきたいです!

Q8.目標

現在寛太さんの行っている活動における今後の目標はありますか。

か:来年あたりから二拠点生活しようかなと思ってて、夏はこっちでぶどうをやって冬は東京にいるっていう感じなんですけど。やっぱりもっと関わり合いを増やして行きたいなというのがあるので、岩手で出会った東京在住の友人達等に会って交流を楽しみつつ、田舎と都会の垣根を取っ払い、関わり合いを加速させていくっていうのが目標ですね。何人くるかはわかんないけど、今までかんたはうすでやってきた受け入れの下地があるので、外からの人達を取り込みたいなと思ってます。

N:ありがとうございます。では、

Q9.寛太さんと関わるには?

この記事を見て寛太さんとかかわりたいと思った人がいたらどうすればいいですか?

か:特に若い人は、ぶどう栽培に一緒に来てほしいです。これからの日本社会を担っていくような人たちに農業の現実を知ってもらいたいと思っていて、農業と関わりがないけど興味があるよっていう人に来てほしいです。この取り組みってそういった人たちが岩手でなくても例えば自分の故郷のよさを再発見するきっかけになってくれると思うし、私としては大迫を好きになってくれたらバンバンザイです(笑)あとはそこで知った現状からさらにアクションが生まれればなおいいって感じです。
 やっぱり第一次産業は海のものでも山のものでもそうですけど、農業人口もどんどん減っていくし育てたりとる人がどんどんいなくなっています。すると我々の食べ物は海外からの輸入品に頼るしかなくなり、日本の産業ってどうなのってなっちゃいますからその辺を考えるきっかけをみんなでつくれればいいなというふうに思ってますね。
 他にも、高校だと大迫高校の学生さんがこの学校に来て良かった!と思えるようにフォローしていきたいです!よそから学生が来てこういう人がいるという生き方を見せるだけでも非常に良いと思っているので、やってほしいと思っています。来た学生さんも田舎の高校の現状をわかってもらえると思っていて、教育関係に進む人にもいいのではと思っています。とにかく色々と関わり方があり、私が案内しますので是非一度大迫に来て、一緒に活動していければなと思ってます!

N:ありがとうございます!では、時間も押してきましたので最後になりますがお願いします!!

Q10.寛太さんからのメッセージ

最後に一言メッセージをお願いします!

か:大迫みたいな人口4,5000人の町って日本中にあって、もっと少ない地域もあるんですけれど、そうした地域の人は自然と減っていくんですよ。これはしょうがないことだと思う一方で、何度も言うように僕は大迫を元気にするためにやっぱり人と関わることをすごく大事にしていて、若い人たちに一度ぶどう畑に来ていただいて一緒に栽培して欲しいと思っています。そうすることで、生産者ってこういうふうに毎日頑張ってるんだなとか全然違った生産物の見方ができると思います。まずはこの記事を読んでもらって大迫のことを少しでも気になったら、全然敷居を高くしないでふらっと遊びに来て頂けたらなと思います。僕に連絡頂けたら案内しますのでよろしくお願いします!!!

寛太さん連絡先:kan063kkss.san20100ah@gmail.com 

Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100003011842804 

Instagram:https://www.instagram.com/cantasuzuki/?hl=ja 

素敵な笑顔の寛太さん


【執筆者】


東京大学経済学3年 伊藤 憲佑
出身が岩手県なので、教育格差を含む地方格差に一番関心がある。サッカーとK-POPが好きでBLACKPINKの京セラのライブに最近行った😭



【編集後記】

:僕と寛太さんの出会いは、2022年夏のぶどう体験プログラムでのことだった。
 ぶどう体験プログラムは「神楽とワインの里」である大迫町でぶどう生産現場を実体験し、高齢化や担い手不足などの問題を抱えるこの地域越しに自分の故郷や大迫町を見つめ直すことが目的のプログラムだ。僕は小学校まで岩手県で過ごし、中学進学と同時に上京したので岩手はホームグラウンドと思っていた節もあり、そのプログラムを通じて地元に還元できることは大きいはずだと思って応募した。
…しかし、実際に農業を体験すると、自分が知っていた岩手は岩手ではないことを思い知った。想定していなかったことは数えきれないほど例をあげることができる。例えば収穫中に出てくる巨大な虫。ブドウの房を切るたびに立ち込める蜂の羽音、日が暮れてから真っ暗になってしまう道路、ぶどう畑までの急峻な山道。形が少し悪いだけで生食用ではなく、加工用として価値が下がってしまう大量のぶどう。もちろんネガティブなことだけではなかった。隣の家に住んでいる人からの巨大な野菜のお裾分け、綺麗な夕焼けや田んぼ、かんたはうすの名物ロケットストーブ、地元の人たちの僕に対する目線。この文章では到底表しきれないような全ての事柄が自分の五感に語りかけてきた。僕はそこで、書こうとすると文字からこぼれ落ちる、そこでしか触れられない何かに触れられたと思う。このことは寛太さんがよくおっしゃっていた言葉が上手く表してくれている。
「事件は会議室で起こっているんじゃない。現場で起こっているんだ!」

この記事で僕が表現できている大迫は僕が経験した大迫のほんの一部でしかないし、寛太さんからみればもっと少しだけだろう。一口に地方、町おこしといっても実際に現場に行かなければわからないことだらけなのだ。それを知れただけでも僕はこのプログラムに価値を見出すことができたし、寛太さんと出会えてよかった。
 まずはこのインタビューを最後まで読んでくれた方、本当にありがとうございます。何か心に残るものがあったと思いたい。でもその心に残った気持ちを自分の行動に起こせたらなおこの文章を書いた意義があったと思える。例えば大迫(もしくは自分の故郷)に戻って、自分の手で、自分の目で地域を見つめ直すこと。ぜひそんなことをしてみて欲しい。実際に大迫に来たら寛太さんという強力な助っ人と共に地域の現状や農業、人とのつながりを深く考える機会になるはずだ。寛太さんは優しいながらも自分の中に太い芯を一本通している方で、影響力や行動力は凄まじい。寛太さんがいなかったら、僕が大迫に関する記事を書くことはなかったに違いない。デスクワークやYoutubeを見ているだけでは映らない、ありのままの世界を知ることでその現状に問題意識をもったり、行動してくれるような人が増えることを願っている。この記事がそんな読者の行動を手助けする一助になれば幸いだ。


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