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NPOも、お金を稼いでいいんです。

今年に入ってから、学校や自治体から、月に3〜4回のペースで講演依頼が来る。

人の前で話すのは好きだし、いろんな人の意見も聞ける貴重な場なので、私自身も楽しみにしている仕事の1つなのだけど、私が心底衝撃を受けた講演は今までに2回ある。

1回は終わってから駐車場の車の中で1人で大泣きした。

2回目は終わってから速攻で説明資料を大幅に書き直した。

1回目の衝撃講演の方が聞きたいと思うが、それはまたの機会にとっておいて、今回は2回目のお話をしたい。

あれは、2年ほど前の夏で、私は山形の工業高校の先生から講演の依頼を受け、周辺地域の社会科の先生50人ほどを前に、aLkuが行う事業やソーシャルビジネスについて話していた。

私が黒板の前に立って、座っている先生に向けて話すというシュチュエーションは初めての経験だったし、先生特有の異様な威圧感を感じて、ただでさえ山形の夏はあっついのに、より暑くなった。

社会科の先生が具体的に何を教えているのか、自分が高校の時を思い出そうにも、こっそり友達と手紙のやりとりをしていた光景しか思い出せず、「そっか、授業聞いてなかったら思い出せるわけないか!笑」と早々に諦めたが、”社会科の先生なのだから、社会を教えてるのだろう”と安直極まりない結論に至って、いつものように話を始めた。

なぜ、都会から山形に移住したのか、地方でソーシャルビジネスを起業するに至った経緯や、メリット、デメリット。ソーシャルビジネスが若者のシビックプライドを育てることや、地域課題の解決にどうつながるのか、実際に行なっている事業の説明など40分くらいスライドを使いながら、ざっと話して質疑応答の時間になった。

「質問ある先生いませんか〜?」と私が聞くと、2人の先生が手をあげた。

手前の先生を指すと「ソーシャルビジネスとは何ですか?」と聞かれた。

(・・・そっか、ソーシャルビジネスって単語がわからないのか、それは失礼した、今度から最初にそこの説明からしよう。)

私は「社会課題を解決する事業のことで、ビジネスとしてお金をきちんと生み出し、社会課題を解決することを言います。そういうビジネスを立ち上げる起業家のことを社会起業家と言い、今すごく増えつつあるんです。」と答えた。

もう一人の先生に質問を聞いてみると

「佐藤さんはNPOを立ち上げられたのに、ソーシャルビジネスを行なっているということですか?」と聞かれた。

(・・・ソーシャルビジネスを行う法人は、もちろん株式でも一社でもなんでもいいんだけど、NPOが一番多いのは当たり前だ。NPOなのにって、どういう意味だろう・・・)

私は一言「そうですね」と笑顔で返したが、先生は首を傾げたままだった。

私の方が首を傾げたかったが、ここで私から先生たちへの質問が一個浮かんだ。

NPOはお金を稼いではいけないと思う先生は、手をあげてください」と50人の社会科の先生に投げかけると、なんと45人が手を挙げた

(・・・なるほど。)

さっきまでの違和感にやっと納得できた。確かにNPOは日本語訳すると、特定非営利活動法人という。

非営利という文字のせいで、NPOはお金を稼いではいけないと思い込んでいる人が多いのは知っていたが、でもまさか社会を教える社会科の先生までそう思っているとは知らなかった。

確かに日本のNPOはまだまだボランティア団体が多く、事業として成立させている団体は少ないが、NPO法人フローレンスなど社員500人規模で助成金や補助員に頼らず、数億円単位の事業収益を上げて、社会課題を新規事業でどんどん解決しまくっているベンチャーNPOも都心を中心に増えている。

そんなNPOの事業を国が真似して、制度化されているのだ。(例えば、障害者のために駅にエレベーター設置義務が作られたのも、待機児童対策で少人数保育園、おうち保育園が作られたのもNPOの事業を国が真似してできたもの)

助成金、補助金、寄付金もNPOの収入としてもちろん大事だが、それだけでは事業の継続は難しいし、雇用の創出や新規事業を展開するなど到底無理な話だ。

きちんとビジネスとしてお金を生み、雇用を生むことができるから事業が継続できて、社会課題を解決できる。

今は、有名大学を出ても"社会のために働きたい"とNPOへ就職する若者も多い時代なのだ。

それなのに、社会を教える先生がわかっていないという事実は衝撃だった。そして地方でのソーシャルビジネスの認識の低さを痛感した。

この講演をきっかけに、私はまず"ソーシャルビジネスとは何か?" "なぜ必要なのか?"から、話を始めることにした。

少子高齢化で過疎化が進み、地域課題が山積みな地方にこそ、それらをビジネスでなんとかしたい!と立ち上がってくれる若者が必要だから。


NPOの大事な収入の1つに"寄付"もあると先ほど書いたが、これもまた苦労している日本のNPOも多いと思う。

もともと寄付文化が根付くアメリカと違い、日本の寄付は単発だ。

災害があった時や、コンビニの募金箱が目についた時しか基本的には募金しない。しかし、普段からもっと社会課題に関心を持っていたら応援したい活動をしている団体が必ず見つかるはずだ。

そして、そこの正会員になったり定期的に寄付をしたりして、間接的だが常に社会貢献ができるし、認定NPOだと税控除も受けられるので税金対策にもなる。つまり寄付が日常になって社会への関心がより深まる。

単発も重要だし、それで助かる団体や命があるかもしれないが、100円玉を募金箱に入れてそれで満足して、なぜ入れたかを考えずにすぐに忘れてたら、社会は決して良くならないのではないだろうか?

「なぜ、この募金箱に100円を入れるのか?100円玉は誰に届くのか?その人は何に使うのか?」

まずは募金するときに、この3つの問いを、自分にしてみて欲しい。


子育てしたい理想の場所」を探して3年前に川崎から山形へ移住し、ソーシャルビジネスを展開する社会起業家のシングルマザー。 noteの収益は、NPO法人aLkuが行う非収益事業「ひとり親支援事業」に100%充てられます。 http://npo-alku.jp/