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中高生の居場所「INBase」のオープニングイベント企画運営を通して高校生の心に生まれたもの

2021年10月、岡山県備前市に中高生のためのフリースペース「INBase」が誕生。オープニングイベントの企画・運営も、地域の高校生が中心になって進めてきました。

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企画・運営にかかわった高校生たちにインタビューし、一連のプロセスを通して何を感じ、何が生まれたのか話を聞きました。



キックオフ-「高校生活の最後に、何かやってみたい」

「ユースのための場所だから、オープニングイベントもユースで企画してみよう!」そんな呼びかけに最初に応えてくれたのが、備前緑陽高校3年生の3人でした。
それぞれどんな動機だったのでしょう?

大夢(だいむ)くん
「ボランティアとか興味あったし、カフェとかにも興味があったので、やってみたいなと思って。受験優先だったけど、最後の思い出作りとして何かしたいなと。」

香月(かづき)くん
「大夢が誘ってくれたのがきっかけです。地域にかかわれるようなことを、高校生のうちにやっておけたらいいなと。」

胡桃(くるみ)さん
「学校で配られていたチラシで興味を持ちました。自分はもともとあまり積極的な感じではないんですけど、(クラスメイトの)大夢や香月もやるというので、自分もやってみようかと思って申し込みました。」

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学校で配布されたチラシ

高校生たちが実際にこのスペースに来てみると、想像以上に広く、なんでもできそう!とわくわくしたと言います。

開設準備中のINBase

「INBase」の館長で「備前若者ミライproject」リーダーの守谷さんは「中高生がやりたいと言ったことを、伴走する形で実現していこうと思っていた」と常に中高生が主体になることを意識されていたそう。

そのおかげもあり、高校生たちはキックオフミーティングの初めこそ緊張したものの、初対面の大学生・社会人にもしっかり話を聞いてもらい、常に肯定してもらえたことでとても話しやすかったと口を揃えました。

企画のプロセス-「うれしい!」&「楽しい!」

オープニングイベントの企画プロセスでは、それぞれがやってみたいことを伝えあい、どうすれば実現できるか?を探っていきました。

コロナ禍ということもあり、案としては出たものの実行できなかったこともたくさんあります。いろんな人の様々な考えをすり合わせ、状況に応じて具体的な形にしていく経験は、高校生にとってどのように受け止められていたのでしょう。

胡桃さん
「ミーティングの話し合いの中でみんなそれぞれたくさん意見を出しました。ああでもない、こうでもないといっぱい思いつきでも話したのですが、それらが実現に向けて進んでいったのが印象的です。
今までの自分だったら、“これをやったら、あれは無理だろうな”とどちらかをあきらめちゃいそうなことでも、大人は “これとあれを組み合わせてみるのはどう?”みたいに言ってくれて、柔軟性というか、吸収のしかたが、私はすごく勉強になりました。

香月くん
「このプロジェクトのミーティングでは、いつでも周りの大人や大学生が、意見を出しやすい雰囲気を作ってくれていたので、すごく話しやすかったです。高校生だけどちゃんと大勢の前で意見を出せたことが、うれしかった。そして、その意見が反映されて、本当に形になっていくというのが、めっちゃやる気が出て楽しかったです。

大夢くん
「1回1回のミーティングごとに、意見をみんなで考えたり反映したりで、達成感がありました。
なかでもビンゴ大会をやろうということになって、地域のお店に協賛依頼をしに行ったのが特に印象的です。カフェからはお茶菓子、焼肉屋さんからは割引券、銀行からは洗剤セットとか。自分たちで企画を説明して、お店から協賛をもらうなんて高校生の力でできると思ってなかったんですけど、皆さん温かく接してくれたし、協賛もたくさん集まって。
学校の文化祭とかももちろん楽しいんですけど、次の世代のために地域に何かを残すということがとてもうれしかったです。

等々・・。「意見をすり合わせる」「やりたいことを肯定してもらえる」「出した意見を実現に向けてやってみる」「地域のためになることができた」と言う体験が新鮮かつ貴重だったと、みんなうれしそうに振り返ってくれました。

当日のビンゴ大会の賞品は、すべて地域のお店などからの協賛でした Photo:モリケンくん

迎えたオープニングイベント当日-知らない人との出会いから学ぶ

9月に予定していたオープンがコロナ禍で延期になるハプニングはありましたが、いよいよ迎えたオープニングイベント当日。胡桃さんは残念ながら都合で当日参加できなかったのですが、当日の運営の際はそれぞれどんな気持ちだったのでしょうか。

ここからは直前からカメラマンとしてジョインしたモリケンくんにも話を聞きました。

モリケンくん
「大人のいるプロジェクトにかかわるのは初めての経験でした。“学校の知ってる子”ではなく、“知らない人”にカメラを向けるってことがそもそも初めてで、すごく勉強になりました。いかに楽しい姿を撮れるのかを意識して、声かけさせてもらったり。難しかったですが、楽しかったです。
イベントでは市の職員さんとも話す機会があって、写真にアドバイスをしてくれたりとか。大人の人たちは想像していたより堅苦しくなくて、身近に感じました。市にも貢献できたかなとうれしかったです。

Photo:モリケンくん

香月くん
「僕はあんまり、第一印象がいいって言われることがないんですけど(苦笑)。でも当日は、せっかく来てくれた人たちなんだから楽しんでもらおうと、初対面の人だらけだったけど、なるべく笑顔を意識して。受付でも話し方とか対応のしかたをいつもより明るくするとか気をつけて。それでみんなうれしそうにしてくれていたので、やりがいあったな、って思います。

大夢くん
「僕は当日、司会をさせてもらいました。学校で生徒会をやっているので、司会経験は何度もあったのですが、当日は市長・教育委員会の人・地域の人とか、自分を知らない目上の人がたくさんいる場での司会は初めてで、言葉遣いとかも意識したので、よい経験になったと思います。司会をしたことをきっかけに、知らない人とも話すことができました。」

Photo:モリケンくん

オープニングイベントの企画・運営を通して―地域が近くなった

オープニングイベントの企画・運営全体を通して、みんながどう感じているかを聞いてみました。

モリケンくん
趣味や特技で社会に貢献するのって楽しい、って感じました。大人たちが支えてくれてのことだけれど、自分のできる範囲で恩返しのようなことができるのが、やっていて楽しかったです。自分だけでやることだったら、自分の関心のあることばかりになってしまうけれど、知らなかったことを知ったり、経験を積んだ人と交流したり、そんな体験ができること自体貴重だし、刺激になるし、これからの生活にも生きてくるんじゃないかな、と思います。カメラも続けていきます。」

胡桃さん
次の世代に残す経験というか、“イベントが終わったら終わり”じゃなくて、“次に繋がって続いていくんだ”と感じています。大学は県外なんですが、(高校を)卒業したあとも帰って来れる場所、居場所、ふるさとができたというか。また、声をかけてもらえたら力になりたいと思います。」

香月くん
「地域創生っていうんでしょうか、地域の発展のためにできたことというか、育ったところへの恩返しとして、これまで見たことがなかった“若者のための施設”という場所を、大人と関わってつくれたことがうれしかったです。高校生の自分でも、何かできるということが学べたなあと。ほかにもこういう場所がいっぱいできたらうれしいです。人とのかかわりができたことがよかった。」

大夢くん
「高校生が地域の目上の人と触れ合う機会って数少ないんですけど、ここが、若者が何か実現したいと思ったときに行動できる場所、そして地域と若者をつなぐ場所になってほしいと思います。
同年代の人とは趣味とかで話す内容が近いから話しやすいんですけど、いろんな経験をしてきた大人の人たちとは、共通の話題が少ない。でもここにはいろんな角度で人をつなぐものがあるから、いろんな話し合いができて。目上の人からから吸収することって、近い年代の人たちと話すときと違うと感じました。社会に出ていくのに必要なコミュニケーションの力が養われた感じです。」

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INBaseは、備前市での中学生・高校生だっぴをNPO法人f.saloonの協力を得て実施したのがきっかけで生まれました。


「学校での教育プログラム以外にも、地域の若者と大人が断続的・日常的にかかわる場が必要」―そう思ったNPO法人f.saloonの代表・守谷 克文さんを中心に、2020年から備前市と協議を開始。

JR伊部駅前の観光拠点「伊部駅南ふるさと交流センター」として使われていた場所を使わせてもらえることになり、「備前若者ミライproject」が主体となって「放課後スペース INBase」のオープンが実現できました。

伊部駅南ふるさと交流センター

地域の中高生を中心とした若者の「やってみたい」という気持ちを大切に、彼らの自己実現と社会参画の機会をと願っていたのですが、その気持ちは、高校生たちがしっかり受け止めてくれていたようです。


▼放課後スペース INBase


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