見出し画像

H先生、2年前から始めた教育のICT化

A小学校で情報担当をされているH先生に、取組の数々やICT教育についての考えなどを伺いました。

30回も授業に飛び込み、重ねた多くの実践。

――早速ですが、教育のDX化についてどんな取組をされてきたのか教えてください。
まず、GIGAスクール構想という言葉が浸透していないので、この構想で国が何を目指しているのかなど通信にまとめて先生方に伝えています。すごく濃い内容なんです。タブレットがくるからICTの部分だけが変わるわけじゃなくて、全体的にいろんな授業が変わってくると思います。授業を1から見直していく段階にきています。

あとは、ロイロノートです。一昨年は30回ぐらい飛び込みで、いろんなクラスでタブレットを使った授業をさせてもらいました。子どもたちはそれなりにゲームや動画でiPadなどを使っているから全く触れられないわけではなくて、教員の方が使えなかったりすることもあります。教員が使えないと子どもも使えない、という雰囲気がありますが そんなことないんだよと、子どもたちと一緒に先生たちも使い方がわかっていけたらいいのかなと思います。

――ちなみにどんな授業を?
まずモラルについて話をします。慣れていくと自分のやりたいようにやっていくので、簡単なパスワード入力とか、基本的なルールを押さえてスタートしました。
あとは、iPadで文字を書きそれを採点してくれる”美文字検定”というアプリがあって、これはすごく楽しくて。子どもたちに積極的にiPadに触れてほしくて利用しました。
そしてiPadがどんなものかが分かった後に、ロイロノート使ってスライドを作る練習を。使いながら覚えていくような感じです。

すごくリスクがあるんじゃないかと思われそうなのですが、意外と子どもたちは自分で方法を見つけていきます。「違う色が使えるんだ」とか「写真を撮って文字もつけれるんだ」とか、音楽をつける子も。自分で触る中でそれを見つけていくことができます。
またペアで取り組むようにしたので、ああでもないこうでもないと自然な会話がたくさん生まれていき、そこから答えを得ている子もいました。教師と子どもたちで一緒に確認しながら・・・ではなく、教師が投げかけた課題を子どもたち全員で協力して解決していくみたいな感じです。

ある程度スライドが作れるようになったら、「あったらいいな、こんなもの」という2年生の国語の単元で、自分が「あったらいいなと思うもの」を考えて、ロイロノートでプレゼンする授業をしました。教科書では紙に描いたものを説明するという内容なのですが、それをロイロノートを使いながら自分でプレゼンテーションを作るようにしました。
これはすごく好評で、紙で行うことの良さもありますが、タブレットですることの良さもあるなと感じました。何より子どもたちがすごく楽しそうでした。圧倒的に紙でやるより早いですし教師側も管理がしやすいです。これからは多分ロイロノートがくるんじゃないかと思います。

――実践がうまくいったポイントは何だったのでしょうか?
1つは、教えすぎないことでしょうか。教師は最低限でいいと思うんです。導入でも、ipadを使う上で何が大事だと思うか子どもたちに尋ねました。すると「パスワードを覚える」「課金はしない」とか意外と出てくるんですね。
あくまでも教師はきっかけを与えるだけ、禁止事項をひたすら覚えてもらうというよりは、慎重に扱うべきツールであることが認識できる。と理解できることが大事なのかなと思います。

あとは、機器を使うときは子どもたちも不安があるんです。なので「壊れないから、いろいろやって学んでいくのがいいよ」と言ったんですよ。そうすると子どもたちも勇気を出して、これはOKですか?とかサインインしますか?とか、分からないなりに友だちに聞きながら自分でやろうとして、それが広がっていきます。一つの主体的ということなのかなと思います。ある意味このGIGAスクール構想はよく言われてるアクティブラーニングに繋がっていくのかなと思いますね。

合言葉は「タブレットを教具から文具へ」と「授業を再発明」

――先生が教育のDX化に期待することは何でしょうか?
このGIGAスクール構想の合言葉が「タブレットを教具から文具へ」と「授業を再発明」だと思うんです。今までは教員がタブレットを授業の中で使うという視点でしたが、これからは子どもたちが機器を文房具として使えないといけない時代になります。教具は先生が使うもの、文具は児童が使うものです。

「あったらいいなこんなもの」の授業では、子どもたちにロイロノートを使ってプレゼンをしてもらいましたが、本来は紙を使って発表してもいいし、また別の発表の仕方があってもいい。そういう選択肢が増えるような形が望ましいです。
タブレットとかは新しい可能性を開くというか、子どもたちの表現の仕方も変わるので、話すのが得意な子は音声を吹き込んだり、描くのが得意な人は描いたり、打つのが得意な人は打つのでいい。書くのができないから授業を受けたくないと思う子も活躍できるような可能性が広がる、ワクワクが広がっていく・・・。
その授業を受けたいなっていうワクワク感とか楽しい気持ちが、学校っていいなと思う機会に繋がってほしいなと思います。

――ちなみに、お話を聞く中でツールなどにお詳しいなと思ったのですが…どこで蓄えらたのですか?
自分の力の持っていきようや方向が定まらなかったときがありました。そこで以前、相担を組んだ先生といろいろ話をして、「これだけは負けない部分を作っていったらどうか。」ということで情報を勉強しはじめました。
たまたま情報主任だったからというのと、iPadを触ることは嫌いじゃなかったので。でも実際、情報機器を授業で使うと子どもたちも楽しそうだし、変わっていく姿が見えるので、こちらもどんどん楽しくなっていきました。

やっぱり思考ツールが入ってみたり、タブレットが授業に入ると子どもたちが全然違います。従来の一斉授業だけだと、子どもは退屈になっちゃうかなと思います。僕のメンターの先生も「子どもは隙をつく天才」と言っていました。子どもの前では隙をつくらないようにするためにも、子どもたちをぐっと引き付けられるように教師側が変えていかなくてはいけないところもあると思います。


学級経営がGIGAスクール構想の肝に

――その熱量はどこから来るのでしょうか。
一番は「退屈だなっていう子どもを作りたくない、こちらの努力でもう少し変わるんだろうな」というのがあります。教室に入れない子、授業を受けられない子もいるし、勉強が苦手な子もいるし、いろいろな子がいるけども、でもなんかクラスっていいな教室っていいな、というのは、子どもたちにもっていてほしいです。「学校に行きたくない」っていう気持ちはやっぱり作りたくないです。
そこでDX化が進み、解決される幅やスピードが変わることは少し期待する部分です。実際にここまでの授業でも、普段恥ずかしがり屋で勉強も苦手な男の子が、前に立ってiPadを使いながら説明する場面がありましたから。

――なぜそれができたと思いますか?
そのクラスの子どもたちがお互いをどうみているかが大事です。さらにそのクラスの子どもたちは先生をよく見ているんですよね。だから先生自身が諦めずにどんな子どもたちとも関わり続けると、クラスの子どもたちも必然的に「見捨てちゃだめだ、フォローしていかなくちゃいけない。」という気持ちが芽生えていくのではないかと思います。
タブレットが入り新しくできることが増えると同時にトラブルはもちろん出てくるので、それを防止するためにも、クラスの雰囲気作りとか学級経営はかなり大事なんだろうと思います。

――その学級作りというのは先生の場合でいうと、誰も取り残さないという根底の思いが大きいように感じます。
一番大事なのは「人を想う心」、そして「認め愛支え愛」です。自分の得意なこともあれば、苦手なこともありますが、自分の得意が実は相手の苦手をカバーできることであったり、逆に自分の苦手なところを誰かが支えてくれたり、それができた上でのICT活用です。もちろんICTが得意な子もいれば苦手な子もいると思うので、みんながICTを活用していくためにはその土台はいるかと思います。そこが多分GIGAスクール構想が成功するかしないかの肝になるんじゃないでしょうか。まだ導入されて間がないので想像の範疇を得ないんですけど、、

――同じ感覚を持っている先生方は先生の周りにいますか?
同期にも先輩にも、後輩にも仲間がいて、その人たちが私のモチベーションの一つでもあります。私たちは本気で子どもたちの成長のために学び合っています。

先生たち自身がこれならできそうだという感覚をもつことが大事だと思います。そのためには、こんなことができますっていうのを焦点化して先生方にわかりやすく伝えていかなくちゃいけない、そこが今GIGAスクール構想担当や情報担当に求められているのかなと思います。

――最後に
このGIGAスクール構想が失敗に終わってほしくないです。私はもう「授業の再発明」なんて聞いたら楽しいしワクワクします。机上の空論だけで終わってほしくない。そのためにも、ルールをきちっと決めるところは決めて、しっかりタブレットを使って、本当にタブレットが文具になっていけばいいなと思います。そして子どもがそこでかがやけて、"新しいを楽しめる人”がもっと増えていって、1人1人が学校楽しいな行きたいなって思える環境をつくっていけたらいいですね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?