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先生全員参加!連島東小学校の動画配信の取り組み

今回は、学校HPにチャンネルを作成して様々な動画をアップしていった、連島東小学校のT先生に、取組みの数々やICT教育についての考えなどを伺いました。

きっかけ

卒業式が迫っていた中、休校で練習もできないという課題がありました。そこで動画を使ってみることに。ハモリの練習も家でできるような、校歌や卒業式の歌に関する練習動画を作ったのが最初です。そして4月になったら先生が入れ替わるので、新しい先生が登場するような動画を作ったり、という感じで始まっていきました。

事務員さん、調理員さんも、全員参加の動画撮影
――その後、どうやって次の動画を決めていったんですか?

基本的には全部の先生が出演することがポイントでした。校長も教頭も、事務員さんもスケジュール合わせて出てもらって。全員先生が出て子供たちにちゃんと向き合えるのが大切だなと。

中でも印象的だったのは、調理員さんが「給食を作るために学校に来ているのに、給食が作れない。私たちも何かしよう」と、子どもたちが家で作れるメニューの動画を撮影していたこと。

ちょっとエネルギーが余ってたからかな、2回目の撮影をするときには調理員さんたちが「某Youtuberに似せたら興味を持ってくれるかな?」と考え、自らサングラスを用意して、もう撮影段階から準備万全。しっかりチャーハンもできました。子どもたちからの反応もすごくよかったですね。


試行錯誤
――今回の取り組みを行う上で試行錯誤した点はありますか?

数十年前に、美観地区や大原美術館の紹介ビデオを作成する活動をしていたので、その時に教えてもらったビデオの撮り方とか、あとで編集でしやすくなるように撮り始めてから3秒たって喋り出すとか、ちょっと知識がありました。
その蓄積をみんなに伝えながら、子どもたちが見やすい動画になっているかを意識して編集した点は試行錯誤したところかもしれません。
喋りも苦労しましたね。一応コンテもあるし、頭では時間のことを分かっていても時間通りには収まらなかったり。

――ただ発信するのではなくて、伝えることをしっかり意識されていたと。その中で、先生が特にお気に入りの動画はありますか?

個人的には都道府県クイズです。

最初の頃は割と真面目に撮影してたのですが、この動画は楽しんで撮影するというターニングポイントになりましたね。


実際に動画の取り組みをしてみて

――動画の取り組みの中で、どんなことを感じられたかお聞きしたいです。

先生の中に、県のバスケット代表選手だった人がいて、彼女が高度な技を交えたバスケットボールの動画を配信したんですよ。それを子どもたちが見て「真似できん!すごい!」と。
再登校になったとき、動画を見た子たちが先生これどうするの?って話題になって。学年が違うと交流が生まれないこともありますけど、この配信で新しい繋がりが生まれたんですよね。だから、学校のことをより知ってもらえる機会にもなったのかなあと思います。

――動画配信が生んだ良い影響ですね。他にも感じた変化はありましたか?

①ICT活用のハードルが下がった
授業でロイロノートを使う状況になっても、子どもたちが嫌がらなかったです。保護者の方も、オンライン化がどんどん進んだときに、学校からこうやって受け取って返すんだなとか、実感が生まれる機会になったと思います。GIGAスクール構想の関係で今後は端末が配られますし、変化する環境に対してのハードルを下げる効果があったかもしれないです。

②教員の働き方改革
次に、今まで学校でしかできなかった作業が家でもできるようになったことは大きいと思います。子どもの宿題を家で見て、あっていたら次の日に学校へ行って判子を押すだけ。躓いている子がいたら学校でそのポイントを一緒に考える。確認作業が終わった状態で学校に行けるというのは、かなり時短という働き方改革ですよね。

③発信者の意識をもった
あとは、今までSNSを使っている人は多いけど、発信者側の意識を持っている人間ってあんまり多くなかったと思うんですよ。
でも動画を配信することで、見ているものには発信者の意図があることや、見てもらう動画を作るために、受け手の視点に立って考えることの難しさも分かったと思います。


ICT化が進む中での学校の役割

――動画配信をする中で、リアルの良さを逆に感じたことなどはありましたか?

デジタルとリアルがうまく溶け合う
今回の軸は先生全員が参加することだったので、配信した動画は教科もバラバラ。算数のかけ算、解き方みたいな系統的なかたちではありませんでした。
動画教材としての使い方ももちろんあるとは思うのですが、ドリルを説いて間違えた問題を繰り返しできるとか、そういうことはパソコンには敵わない。ならパソコンにかなわないところを学校が担っていく、学びの場をつくるというのが大事だと思います。

やっぱり対面にも対面の良さがあって、話をしながら笑ったりしながら授業するのはいいなと思うんですね。授業中の子どもたちから出てきた発言で広がる脱線した話とか、そういうことが子どもたちも心に残るし。多分今度テストしたときには、間違えないと思います。

学校みたいないろんな人が交ざった環境であれば、自分の書いてるものを人に見てもらうとか、意見をもらったりして、お互いのよさや直すところを伝えあえる、そういうツールの使い方ができたらいいなと思いますね。デジタルの部分とリアルがうまく溶け合うというか。

ICTを家電っぽく使えるかどうか
――ツールの一つであるICTを使われての、先生の思いの部分をもっと知りたいです。教育にICTが重なったときの将来の展望とか、どんな熱量を持って先生は取り組んでいるのでしょうか?

情報学習センターにいたことがあったのですが、その時にお聞きした印象的な言葉があります。

「とにかく先生が、みんなが使えないと駄目なんだ。すごい複雑なものじゃなくて、ICTは家電ぽくあるべき」

スイッチ入れたらすぐ使える、くらいじゃないと結果的には先生も子供も使わなくなるということですね。使ってみて授業の手助けになると先生が思えたら、みんな使うようになるよと。

当たり前にみんなが使い、意見をみんなに見てもらえるツールとして使えるようになったら、発表というスタイルでは意見の共有が難しかった子が、タブレットだと意見を伝えやすくなるとイメージしています。先生側も考えを拾いやすくなると思いますし。

小学校と中学校の架け橋に
あとは、小中の連携にうまく使えたらいいなと思いますね。
現在、小学校と中学校の連携が進められていますが、(明確な方法はこれからとして)何か小中のギャップを埋めるツールになればいいなと思います。


最後に

まさに今の小学生たちはデジタルネイティブで、僕らが小さい時には思ってもみなかった時代です。きっと僕たちが想定していないこととかがどんどん起こるんだろうなと感じています。でもそこから逃げては帰れないので、いかにICTを使って子どもたちを育てるというか、子どもたちと理解していくか。という意識でいます。

機器が入ってきて子どもが壊したらどうしようとばかり考えるのか、こんなことができますよね、と思うか。そうやって前向きに取りくんでいくにはまず使ってみないことには始まらない。そして楽しくないと続かないと思うんですよね。私たちは今回の動画配信をすごく楽しんでいましたし、やっぱり楽しみながらするって大事だなと思います。

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