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馬の瞳を見つめて 渡辺はるみ

ナイスネイチャの渡辺牧場に嫁がれた方による本。昨今の引退馬支援ブームの中で話題に上がることも多く、絶版本ながらAmazon上でも値段が乱高下している。

読む前は、例によって引退馬支援のためのお涙本かと思っていたが、全く違っていた。サラブレッドを扱う牧場の、極めてリアルで壮絶な生と死の経験談が続く。

経済的な理由から健康な馬の命を絶つという、極めて厳しい場面も登場する。ご本人も「一方では、若く健康な子たちを先にあの世に行かせ、もう一方では、年とった不健康な子を生き長らえさせる」ことへの矛盾に悩んでいる場面もある(214-215頁)。本人が安楽死やむなしと判断したものの、ご主人が反対した場面も描かれている。

その意味で、渡辺さんの考え方は万人受けするものではない(一部の獣医との確執もある)。読んでいてなにを思うかは人それぞれだと思うし、問題提起として極めて意義深い。
まさに馬の生死と向き合っている、北海道のサラブレッド生産牧場の姿を見ることが出来る。

また、当たり前といえば当たり前なのだが、馬を埋葬するということが簡単なことではないということを再認識させられた。破傷風や疫病への対応をしないといけないし、500kgを超える馬を埋葬するのは容易ではないのだなあ(渡辺さんも出ている映画「今日もどこかで馬は生まれる」に埋葬シーンが出てくる)。

競馬の現実を知ることが出来る本として極めて重要な本だと思う。
桜桃書房は既になくなってオークラ出版に引き継がれているようだが、なんとか再発売してもらえないだろうか。


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