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地域における社会連帯経済部門の育成が行政の福祉化の鍵(大阪市立大学名誉教授 福原宏幸先生)

NPO法人福祉のまちづくり実践機構ではホームレスや障がい者、ひとり親家庭など、職につくことが難しい人たちを就労につなげるしくみづくりとして、「行政の福祉化」の発展につながる調査研究に取り組んでいます。

資本主義の行き過ぎや社会課題の解決に向けて、社会的連帯経済の必要性が説かれている中、行政の福祉化は社会連帯経済の一つとして注目されています。

福原宏幸先生は長らくフランスにおける社会的連帯経済の実例について調査されてきました。前回に引き続き、福原宏幸先生に社会的連帯経済についてお話を伺いました。


福原宏幸先生

大阪市立大学名誉教授。労働問題が専門。現代社会で深刻化している雇用の不安定化と、それに対する回答・政策を求めて研究を進めている。著書に福原宏幸編著『社会的排除・包摂と社会政策』法律文化社、2007年。

社会的連帯経済部門と市場経済部門ははっきり区別されるものではない

社会連帯経済といっても、日本ではそれほど認知は高くありません。とはいえ、シンポジウムや研究者、実践者の間で、よく言われるのは、社会的連帯経済が市場経済にも一定の影響力を持つように、もっと大きくなる必要があるということです。

市場経済部門と社会的連帯経済部門は別の世界で、市場経済に対するオルタナティブとして社会的連帯経済があると誤解されていますが、そんな簡単に二分できるものではありません。
二分するのは、一見わかりやすいのは確かです。ただ、社会連帯経済自身も市場経済の上に乗っかって活動してるので、ここからここまでが社会的連帯経済部門でここからこっちからは市場経済部門という見方はあまり成立しないと思います。

フランスにおける社会連帯経済法

私はそこまでたくさんの国の事例をよく知らないのですが、フランスの社会連帯経済法でもそのような分け方はしていません。社会連帯経済の担い手は形態によらず、それぞれの事業体が社会的な課題にしっかりアプローチしていくということを理念として掲げているかによります。また社会連帯経済部門は民主的な組織によって運用されるものだという理念があるのですが、それらを理念として掲げている組織であれば、社会的連帯経済を担う主体として評価するという考え方です。

中小企業も見方を変えれば社会的連帯経済部門の一つ

歴史的に見れば、市場経済から離れたところで社会連帯経済企業が登場してきたところもあります。担い手の中軸は市場経済から離れたところにあるのですが、その地域の中で社会連帯経済として機能している企業としては、いわゆる一般的な社会的企業だけではなくて、地域の中小企業にもあてはまることだと言えますし、これからそれを担っていける存在になるとも言えます。

コミュニティで役割を果たす企業を増やしていくことが大切

特にフランスの特性かもしれませんが、大企業においても、生命保険会社は元々昔の共済組合から始まっていたそうです。今はそれが大きな組織になっていますが、実は生命保険会社も社会連帯経済を担う主体と言えます。

このように大企業でも、それぞれの市やコミュニティの中で一定の役割をきちんと果たすようなことをやっていれば、社会的連帯経済を担う主体の一つだと言えるわけです。だから、市場経済部門と社会的連帯経済部門というふうに明確に分けられるわけではないんです。

社会課題を福祉部局だけではなく経済部局も担当し、社会的困難に対して経済施策化する新しい経済構築が大事だと言われていますが、行政の福祉化はその手法の一つだと言えるでしょう。

今後もnoteやFacebookを通じて、「行政の福祉化」を「大阪の福祉化」につなげるためにさまざまな情報をお届けしていきます。フォローやいいねのほど、よろしくお願いします!



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