ルイス・コール『アルバム 2』公開ライナーノーツ① 文:国分純平

フライング・ロータス主宰のレーベルBrainfeederよりリリースの新作『Time』(2018年)を引き下げ、ソロ名義では初の来日ツアーがまもなく予定されているルイス・コール。
LAジャズ周辺シーンを拠点とするドラマー/マルチ奏者としてまずは頭角を現しつつ、同時にダークな、あるいはユニークなポップセンス溢れるホームセッション系動画をYouTubeに次々リリースすることで、その先駆的アーティストとして世界中に熱狂的なファンを生み続けています。

NRTより2013年に発売した『アルバム 2』は、ハイブリッドな音楽的趣向と高度な演奏スキルをベースに、ソングライターとしての個性が凝縮された、ルイス・コールの原点ともいえるアルバムです。
ソロ名義作として世界で初めてCDリリースされた本作に収録のライナーノーツを、本稿で公開します。(文章は2013年リリース当時のまま掲載)

※ルイス・コール『アルバム 2』公開ライナーノーツ① 文:国分純平
ルイス・コール『アルバム 2』公開ライナーノーツ② 文:高橋健太郎 



ブライアン・ウィルソンは目を細め、サンダーキャットは体のどこかがムズムズするだろう
――ライナーノーツ① by 国分純平
 
 ブライアン・ウィルソンは目を細め、サンダーキャットは体のどこかがムズムズするだろう。もし、彼らがこのLA出身の26歳、ルイス・コールによるセカンド・アルバム『Album 2』を聞いたら、の話だ。少なくとも、ふたりのファンである僕は、すっかり魅了されてしまった。これは、ブライアンのポップスを手がかりに過去を見渡す試みであり、サンダーキャットのソロ・アルバムの”ドラマー版”のような作品である。
 と、大袈裟な前フリをしてみたが、ルイス・コール自身はあまり広く名前を知られた人ではない。オフィシャル・サイトはないし、メディアへの露出も少ない。父親がジャズ・ミュージシャンのスティーヴ・コールであること。その父親から音楽について多くを学んだこと。南カリフォルニア大学でジャズを専攻したこと。ドラムがとてもうまいこと。インターネットに転がっている情報は断片的で、どれも若いミュージシャンにはありがちな話ばかりだ。
 ”ミュージシャンズ・ミュージシャン”といった表現が近いのかもしれない。彼は卓越したテクニックを持つドラマーであり、客演やセッションでさまざまな音楽家と共演している。本作収録「Like a Match」の作者であるジャック・コンテによるポップ・デュオ、パンプルムースを始め、サイケ・ロック・バンドのスペースエイジ、ブラス・バンドのレイヴンズ・デイ・パレードなど、ジャンルを問わず、彼のドラムを必要とするミュージシャンは多い。オースティン・ペラルタもそのひとりだ。ペラルタは、15歳でデビュー、20歳でフライング・ロータスのブレインフィーダーと契約した若き天才ピアニストである。惜しくも昨年急逝してしまったが、ペラルタとコールはLAのライヴハウスでセッションを行っていたという。そして、そこでベースを弾いていたのが、やはりロータス周辺で活躍するサンダーキャットだった。
 サンダーキャットも、超絶技巧の持ち主で、セッションに引く手あまたな”ミュージシャンズ・ミュージシャン”である。ただ、彼が2011年にリリースしたソロ・デビュー作『The Golden Age Of Apocalypse』は、優れたプレイが聞けるベース奏者のアルバムではあったが、技巧の披露よりも作曲性や耳当たりの心地好さを優先させており、それは先鋭的なビートをラウンジ・ミュージック的な柔らかい音響で包みこんだフライング・ロータスの2012年作『Until The Quiet Comes』にも当てはまる。彼らが試みたのは、フュージ
ョンやスピリチュアル・ジャズといったメロディアスで優雅な音楽を参照し、LAが育んできたブラック・ミュージックの豊饒さを示すこと。そう言えそうだが、本作のポイントもまさにそこにある。「You Will See」を始めとしたタイトなドラムはもちろん聴きどころのひとつではあるが、重点は明らかにシックなムード作りに置かれている。ただし、彼らが参照したものに加え、ブライアン・ウィルソンやバーバンク・サウンドなど、LAのもうひとつのエレガントな音楽を持ち出し、すり合わせているのが、コールのおもしろいところだ。「Grains of Sand」や「Your Moon」の美しいオーケストレーションを聞いて、ロータス周辺で活動するビルド・アン・アークやミゲル・アトウッド・ファーガソンといった、ソフト・ロックとも親和性の高い現代のスピリチュアル・ジャズ・マンたちを思い浮かべるのは容易だろう。


 また、本作をさらにユニークなものにしているのが、エレガントな鳴りに反するようなローファイな音質処理だ。トレードマークのドラムはひび割れ、美しいファルセットはラジオやレコード・プレーヤーから流れてくるような色褪せた響きを纏っている。ヴィンテージな質感にこだわる昨今の西海岸ローファイ・ポップの面々を意識しているのかもしれない。ブライアン~ビーチ・ボーイズからの影響が明らかなメロディと併せて考えれば、おそらくそうだろう。しかし、コールの場合、ビーチ・ボーイズにとどまらず、ブライアン本人が愛した40~50年代のポップスやオールド・ジャズ、いやもっと辿ってクラシックにまで行きついてしまうようである。そう感じるのは、シックにあつらえたムードのせいだ。ノスタルジーとはかすんでいるが、甘い記憶のことである。コールはそのあたりのバランスをよくわかっている。
 そう書いたところで、コールによく似たロマンチストの名前が浮かんできた。ハイ・ラマズのショーン・オヘイガンだ。エレクトロニクスやオーケストレーションを用いて、ひたすら夢うつつな世界を描くブライアン・ウィルソン・チルドレンのひとり。彼が本作を聞いたら、きっとコールと話をしたくなるに違いない。(国分純平/キープ・クール・フール)


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ルイス・コール『アルバム 2』詳細:
http://www.nrt.jp/louis_cole/release_information.html

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