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起業家インタビューvol.4 - SALASUSU代表 青木健太

N's baseは、カンボジアの社会課題をビジネスで解決しようと取り組まれている4人の社会起業家の方々の商品を販売しています。本企画ではそれぞれの社会起業家の想いに迫る、インタビュー記事をお届けしていきます。

第四弾はアクセサリーブランドSALASUSUの代表、 青木さんにお話を伺いました。青木健太さんは日本人でありながら、カンボジアの方々と協働してハンドメイド商品を販売しています。自ら創業に携わった団体から独立してでも成し遂げたい目標とは何だったのでしょうか。より良い世界を作るために活動されている青木さんに注目です。ぜひご覧ください!

青木 健太 - SALASUSU 代表
2002年、大学在学中に2人の仲間と「かものはしプロジェクト」を創業し、子供の人身売買撲滅に取り組む。2008年にカンボジアへ渡り、最貧困層の女性を雇用してハンディクラフト雑貨を生産・販売する事業を統括。かものはしプロジェクトがカンボジアからの撤退を決定した際、自身はカンボジアに残り2018年にSALASUSUを設立。

ものづくりを通した人づくり

ー15年間活動したかものはしプロジェクトを離れること迷いはなかったのですか?

初めは迷うことなくただカンボジアに残りたい、という気持ちから独立を決めました。しかし一緒に働いてきた仲間からの言葉が考え直すきっかけになりました。

​「頑張ればもっと成功するはず、撤退するのはカンボジア人に申し訳ない、というネガティブなエネルギーだけでは成功しないからやめるべき。その思いはいずれ恨みに変わるだけだ。ただ、それでもカンボジアに残りたいと思うなら、自分の中につながる別の理由があるのでは」

それから、自分自身や家族、仲間との対話を1年ほどかけて行いました。過去の経験を振り返りながら自分は何者か、何を恐れているのか、など様々なことと向き合いました。すると自分の人生を自分で決めることの大切さを実感してほしいという思いが明確になりました。そして僕はライフスキル教育の提供という形でこれに貢献しようと決心しました。

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ーなぜライフスキル教育に注目されたのですか?

カンボジアの経済成長率は10年連続7%で、海外企業の進出などを通して雇用は拡大しています。しかし農村部の女性は都市部での生活に順応するのが非常に大変です。

工房で働いていたEap(イアップ)もその1人でした。彼女はかものはしプロジェクトで運営していた工場を卒業し、都会の工場に就職しました。給料は農村の平均月収の4倍にもなる仕事だったため、安定した生活になるだろうと僕たちも喜んでいました。しかし彼女はたった4日で工場を辞めてしまいました。 

​「住む家が見つけられない」「一緒に働く人と仲良くできない」「頑張れなかった」という彼女に、僕は納得ができませんでした。彼女がそう考える理由を探るため、そもそも自分はなぜ頑張れているのかを考えました。おそらくそれは、家族や先生が「頑張るとよいことがある」と背中や言葉で教えてくれてきたからです。つまり「頑張れる」は環境が与えてくれた「技術」であり、自分の意思や責任だけではないことに気づいたのです。

そして彼女はきっと、頑張ることの重要性を教わる機会が少なかったのだと気づきました。しかもカンボジアは人材育成の基盤が脆弱で、国がこれらを教える余裕がありません。そこで僕がライフスキル教育という形で提供していこうと考えました。

これは、布の縫い方や英語の習得といったわかりやすいスキルではありません。問題から逃げないための方法、早起きして会社にいく、人とよい関係を築く方法など社会に出て行く際に欠かせないスキルです。SALASUSUの工房ではものづくりを通してこのような力を身につけられるような取り組みをしています。そして関わったすべての人の人生の旅を応援することが私たちSALASUSUのミッションです。

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ーものづくり以外に工房でどのようなことを行っていますか?

アクティブラーニングというトレーニングを取り入れています。ライフスキルは理解や暗記するのが難しいというより、実践したり習慣化することが難しいものが多いです。そのためまずはやってみよう、ということで実践的で楽しいトレーニングを皆で行っています。

特に人気なのは「友達の良いところ探し」と「アンガーマネジメント」です。

「友達の良いところ探し」ではビンゴをやりながら友達の良いところを探し、ビンゴになった人は前に出て発表します。友達の良いところを発表するのは少し恥ずかしいですよね。じかし実際に話してみるとお互い嬉しい気持ちになる上、発表することが自信につながります。ライフスキル習得には、この経験が非常に大切です。

もう1つの「アンガーマネジメント」は、劇をしながら怒りの感情とコントロールする方法を学ぶワークです。これは品質管理部門の人が従業員にFBをする際や、家族を説得する際にも活用できるという声が多いです。

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ーどれも楽しそうなワークばかりですね。

ライフスキルを身につけるために工房に来る人はいません。たいていの女性は固定収入の給料が目当てです。そんな彼女たちに学んでもらうには、トレーニングを楽しいと思ってもらうことが大切です。ワークの様子を覗いてみると、非常に楽しい雰囲気でうるさいくらいです(笑)

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​ショッピングに新たな楽しみを


ー他のブランド比べたSALASUSUの特徴を教えてください。

作り手を感じられる点です。 SALASUSUでは、商品のラベルに作り手の名前が記されたスタンプを押しています。これは「ものの裏にひとがいる」ことをお客様に感じてもらうためです。この取り組みの一環として、お買い上げくださったお客様には工場訪問のフリーパスチケットも配布しています。これを持参すれば、作り手と実際に会うことができます。最近はオンラインでコミュニケーションをとることもできるようにしました。作り手と買い手が交流することで、作り手は気持ちを込めて作ろう、買い手は大事に使おうと思えます。SALASUSUでの買い物を通して、見た目や価格だけでなく、作り手を感じるという新たな楽しみを見つけていただければ嬉しいです。

ースタンプを押すことで、作る人と買う人両方の幸せにつながりますね。青木さんがSALASUSUで活動されていて嬉しかったことはありますか。

最近の出来事でいうと、先ほど紹介したEap(イアップ)がライフスキルトレーナーになりたいと言ってくれたことです。数年前は都市での仕事に馴染めなかった彼女が大きく成長した証です。これはグレートリーダーやソーシャルチェンジメーカーになる、という大きな変化ではないですが、彼女が持つ自己像や社会への思いが確実に変わったことを実感できました。

他にも、工房で習ったいろいろなことを家族や村の人にも伝えたい、と話してくれる人がいました。このように彼女たちの、自分が何者でどういう風に生きていきたいか、という感覚を変えることができたのは嬉しいですね。

続いてSALASUSUのマネージャーとして、青木さんのそばで働いていらっしゃる橋本さんにもインタビューをさせていただきました!

​誰にでもフラットに接してくれる


ー橋本さんから見た青木さんはどのような方ですか。

尊敬できるところがたくさんあります。まずは物事を論理的に考える力に秀でています。経営者としてこれからどこに進んでいくべきかを鋭く分析しています。

彼は裕福な家庭に育ち、様々な能力にも長けています。ただそれを驕ることなく、誰とでも同じ目線で接することができます。それは私だけでなく、カンボジアで商品を作ってくれている女性たちに対しても同じです。相手のことを真剣に考えて話をしてくれます。それを見て私は、人の人生を応援することが本当に好きなんだな、とよく感じています。

ー鋭さと優しさを両方持っていらっしゃる方なのですね。ではリーダーとしての青木さんはどのような方ですか。

これに関しては最近少し変わった気がします。

少し前までは、かものはしプロジェクトを独立した責任からか、代表としての強さを重視していたように思えます。しかし先日、強さや率いる力だけがリーダーシップではなく、誰かの背中を押すこともリーダーシップの1つと気づいた、と言っていました。その言葉通り、自分だけでなく仲間を巻き込んで一緒に学べる環境を作ろうとしている様子を感じる機会が増えました。元から怖い人ではないですが、以前と比べて温かみを感じることが多くなりましたね。

​進歩をそばで見守れる喜び


ーありがとうございます。では次に橋本さん自身がSALASUSUで働いていて感じるやりがいを教えてください。


たくさんありますが、カンボジアで働く女性の成長を感じるときは嬉しいですね。成長のスピードは人それぞれですが、みんな少しずつ進歩しています。それはものづくりの技術だけでなく、積極性や気持ちの持ちように関しても当てはまります。

現在はコロナの影響で仕事が減ってしまった女性が多いです。そんな中でも不満を言わず、新しいことや自分にできることには挑戦したいという姿勢を持ってくれることに感謝と喜びの気持ちでいっぱいです。自分の喜びや嬉しさを純粋に表現してくれるので、こちらもハッピーな気持ちになりますね。

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ー今コロナのお話が出てきましたが、コロナの影響で変わったことはありますか。

オンラインを重要視するようになりました。これまでやっていた現地での工房見学などができない分、オンラインでものづくりの様子を伝えるための工夫を考えています。

それに加えて、最近はSALASUSUのフィロソフィーを改めて考えようと話し合っています。みんなの認識をすり合わせて、共通の哲学を作るための取り組みです。その中で出てきたものの1つに「Love Learning」がありました。学ぶことを愛し、楽しんで学ぼうという考え方です。これらの哲学を大切にしながら、それぞれがそれぞれの分野でリーダーシップを発揮していきたいと思っています。なので、コロナによる自粛期間があったおかげで、SALASUSUの意義を改めて考え直すことができました。

ーさらに進化したSALASUSUで今後の活動を楽しみにしています。お話ありがとうございました。

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N's baseではインタビューで熱い想いを語ってくれた青木さんが代表を務める、SALASUSUの商品も多く取り扱っております。ぜひオンラインショップも覗いてみてくださいね。

N's base noteではこれからも社会起業家の方々の生の声をお届けいたします。次回もお楽しみに!

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