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日商簿記1級「"途中まで"学習法」

日商簿記1級の試験が近づくと、過去問題や模擬試験といった本試験形式の問題を解く機会が増えると思います。
ですが、日商簿記1級の試験問題は非常にボリュームがあり、商業簿記・会計学、工業簿記・原価計算ともにそれぞれ90分の制限時間で解くことを想定しているため、素直に解けば、解答だけでそれぞれ90分、それに加えて、答え合わせや解説の確認、復習などを加えると、1回の試験問題を解くだけでもかなりの時間を要します。

もちろん、合格のためには本試験と同じ時間や環境を前提に、きちんと得点できるよう練習することも大切ですが、以下のような弊害もあります。

  • 90分の解答時間に加え、答え合わせや解説の確認などの時間も考えると、実施できるタイミング・回数に限界がある。(気力、体力的にも大変)

  • 本試験レベルの問題を解答するには、基礎的な知識に加えて、思考力や読解力、正確な計算など複合的な能力が求められるため、間違えたときの原因究明が難しい。

このような弊害があるせいか、試験前になかなか本試験レベルの問題を解く経験を積むことができない上、どうしても正解・不正解に気を取られてしまうためか、「得点できない原因」の究明ができないままになってしまう受験生が数多くいらっしゃいます。


また、「そもそも問題文や資料の読み取りが苦手」というご相談も頻繁にいただきます。
テキスト準拠の問題と異なり、過去問題や模擬試験などの本試験レベルの問題は文章や資料が複雑で、読み取りが確かに難しいため、苦手を克服するには多数の問題を解いて慣れていく必要があります。
ただ、やはり時間的な制約でたくさんの過去問題や模擬試験を解くのは困難ですし、いざ普通に解くと、いろんなことが気になってしまい、「そもそも問題文や資料の読み取りが苦手」という課題が曖昧になったまま復習してしまうということもしばしば見受けられます。

そこで、こうした悩みをお考えの受講生などにお勧めしているのは、過去問題や模擬試験などを最後まで解かない「"途中まで"学習法」です。
(学習法の名前は私が勝手につけました)


具体的な「"途中まで"学習法」は、以下のとおりです。

  1. 過去問題や模擬試験などの本試験レベルの問題を用意

  2. 問題文や資料、設問を読んで、何をすべきかを把握

  3. 本試験でその問題を解くつもりで、
    どういう計算や会計処理が必要なのか
    ・資料や問題文のどこが判断基準になるのか
    資料中のどの数字を使うのか/使わないのか
    ・どういう下書き(ボックス図など)を書くのか
    などを考える。
    ※実際に書かずに頭の中で考えるだけでもOK

  4. ここまで出来たら解説を見て、自分の考えが合っているのか、間違っている場所はなぜ間違えたのかを確認する。


「これだけで大丈夫?」と思うかもしれません。
もちろん、これだけで大丈夫ではないので、冒頭にも書いた通り、きちんと時間を計って問題を解くことも必要です。

ただ、こうした勉強法も実践することで、「そもそも問題文や資料の読み取りが苦手」という課題に対しては、普通に解くよりも効果があると考えています。

前述のとおり、普通に本試験レベルの問題を解くにはまとまった時間が必要なため、どうしてもたくさん解いて経験を積むということが困難です。
加えて、いざ実際に計算して解答を求めようとすると、電卓の操作ミスがないかといった、別のことに気が散ってしまい、見直すときに「問題文や資料の読み取りがちゃんとできたか」という点がおろそかになりがちです。

一方、「"途中まで"学習法」は実際の試験よりも短い時間で多くの問題に触れられるほか、電卓や筆記用具を使わないため、場所も選ばないですから、勉強時間や勉強場所が限られている社会人でも、実践可能です。
また、細かい数値に気を取られない分、問題の本質に意識を集中させやすくなるはずです。


問題文の読み取りや、その時々で「何をすべきか」や「どの資料を使うのか」といった面で苦手意識を感じていらっしゃる方は、今までどおり、本番同様に問題を解く練習のほか、「"途中まで"学習法」も取り入れてみてはいかがでしょうか。

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