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Nサロン主催トークセッション 星野佳路(星野リゾート 代表)× 龍崎翔子(ホテルプロデューサー) イベントレポート

4月15日(月)、Nサロン主催によるトークセッションが開催されました。ゲストは、ホテルプロデューサーの龍崎翔子さんと、星野リゾート代表の星野佳路さん。モデレータは、株式会社MATCHA代表の青木優さんが務められました。

・龍崎翔子
1996年生まれ。京都府出身、東京大学在学中。L&G GLOBAL BUSINESS, Inc.代表。小学生の頃よりホテル経営に興味を持ち、大学在学中に北海道の富良野のペンションを購入してホテル経営を始める。現在は北海道以外にも、大阪、京都、湯河原などに計5つのホテルを運営中。

・星野佳路
1960年、長野県軽井沢町生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院にて修士号を取得。米国でのホテル開発や金融機関勤務を経て、1991年に星野温泉旅館 (現在の星野リゾート)4代目社長に就任。所有と運営を一体とする日本の観光産業において、いち早く運営特化戦略をとるビジネスモデルへ転換をはたす。「星のや」「リゾナーレ」「界」「OMO(おも)」の4ブランドを中心に、国内外38箇所の施設を運営中。

・青木優
1989年生まれ。東京都出身。明治大学国際日本学部卒。大学在学中に1年間休学をし、世界一周の旅に出る。2012年ドーハ国際ブックフェアーの運営に従事。大学卒業後、デジタルエージェンシー augment5 Inc.に所属。2013年に株式会社MATCHAを設立し、代表取締役社長に就任。趣味は旅と温泉です。

今回、ホテル業界の第一線で活躍されるお二人には、『伝統産業を、デザインとクリエイティブで再定義する。』をテーマにお話しいただきました。

当日のお話の内容は経営論や組織論、個人的なお考えにいたるまで多岐にわたり、質疑応答の際には質問が相次ぎ、参加者の方々の、お二人のお話に対する熱量の高さもうかがえました。

ここでは、セッションの内容を一部ピックアップして、掲載します。


■ホテル業界のデザイン変遷について

星野「日本のホテル業界の“栄光の時代”は1980年代の前半で、日本のホテルは世界の中でも高い評価を得ていました。しかし、それらの日本のホテルは海外進出に失敗し、それ以来業界は低迷してしまっています。いま日本のホテルは、世界のホテルの成長にどう対抗するのか考えるときだと思っています」

龍崎「私の実感としては、10年くらい前の日本の地方のホテルは、富裕層向けのラグジュアリーホテルと、安価なビジネスホテルやシティホテルに二極化しているような印象でした。それが、おそらく2011年ごろから”おしゃれ”なゲストハウスが流行し、2015年ごろまでに急激に増加していきました。そして最近は、ライフスタイルホテルと呼ばれるホテルが増えてきた、というのがホテル業界の現状だと思います」

■サービスの内容や事業の見通しを説明する”言葉の力”の磨き方

星野「私の表現力が鍛えられているのは、31歳で社長に就任した当時に、今いるスタッフが辞めないように必死になったことと、頻繁に研修をしてスタッフとコミュニケーションをしたためだと思います。さらには、リクルーティングのときにも表現力は必要だった。社長になってから最初の10年間の本当に大変な時期に、いかにコンパクトに、記憶に残る表現をするかということが、あらゆる場面で求められた。それが今につながっているように思いますね」

龍崎「私は、自分のセンスを良いと思っていないんです。それよりは、消費者としての自分を解像度が高くなるまで突き詰める、ということを大事にしています。なんとなく過ごしてしまうのではなく、何をイケてると思うのか、何が欲しいと思うのかという気持ちを言語化してビジュアル化しています。”言葉”については、私が小中学生のときに生徒会長をしていて、壇上で話すときにみんなが飽きない言葉を考えていたのがルーツだと思っています。また、インタビューを受けるとに自分の考えについて深く考えられるので、そういう機会でも表現力を鍛えられてると思います」

■社員のキャリアパスとそのインセンティブ設計について

星野「古い考えかもしれませんが、社員には『総支配人』を目指してほしいと思っているんです。われわれの組織は、現地の総支配人をいろいろな面でサポートするように構成されています。私は、ホテルの総支配人はどんなことでもできるスーパーマン、一国一城の主として全員に目指してほしいと思っている。私は、総支配人としてのスキルが、“どこの国に行っても食えるスキル”だと思っているんです。そういった、たとえ会社を離れた人でも、星野リゾートにいてよかった、と思えるような状態を目指させることが大事なことだと思っています」

龍崎「私たちの会社は、単純な接客業として社員を育てていないんです。私は、ホテル業というのが衣食住や、制度設計や、マーケティングや、多様な職種の人が集ってつくる、ひとつの総合芸術的なビジネスモデルだと思っています。ですから従業員にも、接客と、その人の職能を掛け合わせて働いて欲しいと思っていて、最終的には、接客もできるけれども、自分の職能も極められる、という状態を目指してほしいと思っています」


当日は、セッション内容がその場でグラフィックレコーディングとして可視化され、参加者のみなさんにもとても好評でした。