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理想の家①−快適性

快適な家に住みたいんや!

土地の契約から遡って2年前。

築30年の賃貸アパート。断熱材は0で隙間風はビュービュー。夏は西日によってサウナと化し、冬は氷のように冷たい床。行きたくとも、寒くてつい我慢してしまうトイレ。そんな環境に5年間住んでいた我々は、冒頭の掛け声とともに理想の家とは何かというテーマに取り組んだ。

高断熱・高気密

最初に高断熱・高気密という言葉を知った。そして、ZEHや長期優良住宅という概念を学んだ。パッシブデザインは我々の凍えた心を踊らせた。高断熱・高気密を謳い、パッシブデザインを得意とする工務店やハウスメーカーに通った。Q値に始まりUa値・C値という数値に夢中となり、一番良い工務店・メーカーはどこだ、ということを血眼になって探した。

・・・

とある時、紅葉を見に根来寺に行ったついでに近くの古民家カフェ初花にお邪魔した。昔ながらの土壁内外真壁の建物だったと思う。まだ本格的な寒さが到来する前の季節ではあったが、なんとも心地よい空気感を感じた。これが、土壁の空間の最初の体験であり、高断熱・高気密への違和感を最初に感じた経験であった。

土壁の魅力

その後、構造としての伝統構法に惹かれていく中で、古民家や土壁の家の見学に行く機会が増えた。そういった建物では思わずゴロンと転がりたくなるような心地よさを感じた。空気感が違うというか、匂いが違うというか、言葉で説明出来ないが・・・。もしかしたら、無垢の木・石・土・紙・布などの自然素材が持つ質感かもしれない。とにかく、その頃から温熱環境の構成要素としても土壁に魅力を感じるようになったのである。

工法の違い

(画像は高気密・高断熱・長持ち・ローコストな家の施主ブログwith泉北ホーム様より拝借)

現代の家は上図のように、断熱材の外側に防水シートを貼って、さらにその外側に通気層・外壁という形で作ることが多い。湿気や気密対策も取られており、よく工夫されている。これが高断熱・高気密の仕組みである。

一方、古くからのやり方で土壁を採用する場合は以下のような図となる。(職人がつくる木の家ネット様より)

柱と柱の間に竹小舞(地域によっては木小舞)と呼ばれる下地を通し、何重にも土を塗る。伝統的には、田んぼで取れるような粘土質の土に稲わらや砂等を加えただけのものが用いられる。(仕上げは漆喰を用いることもある)

土壁といえば、日本昔ばなしに出てくるような隙間風だらけの家のイメージがあるが、丁寧な施工をし、サッシも現代的なものを用いれば、決して高気密ではないものの現代の家と同程度の気密性は担保出来るようである。(参考:気密測定/C値 ~ 石場建て伝統構法の新築で? ・・・ 予想どおり!

ただし、断熱性は低いため、床や天井には断熱材を入れるにせよ、その点は検討が必要だ。具体的には、以下の方法が考えられる。

・窓やドアには高性能な木製建具を用いる
・土壁の外側に断熱材を入れる
・壁は無断熱で割り切る

土壁は蓄熱性と調湿性に優れるため、内外真壁の無断熱の家でも心地よい空間になる、という声はちらほら聞かれるため、無断熱という選択肢も残した。

vsではない、あくまで性能上は

こうして書くと、断熱材vs土壁という構図がクローズアップされてしまうように思えるが、外壁は現代工法で、内壁を土壁という施工も可能なはずだ。そもそも快適さのみを追求するなら、蓄熱おばけのコンクリート造の家を外断熱でくるみ、内側に調湿目当てで土壁(版築)空間を作る、という家が一番快適かもしれない。これらは耐久性や哲学その他の要素と絡むと、さながら宗教論争のような熾烈な関係となってくるのである。


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