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名刺ゲームの制作ノウハウ ver.3 (1)

はじめに

名刺ゲーム制作も2018年からはじめて丸3年が経過しました。いろいろなやり方を試してみましたが、やっと落ち着きました。今は5つのカードゲームのラインナップがありますが、すべてパッケージやカード、マニュアルなどの作り方や印刷などを統一しています。

同人ゲームで経験をたくさんお持ちの人にtwitterでパッケージのノウハウを教えてもらったこともありました。私も教えていただいたノウハウに自分なりのノウハウを積み重ねていきましたが、これをまたこれから作ろうとする方々に伝えられたらいいなと思います。

ただ、これはできるだけイニシャルコスト抑えかつ小ロットで作るというノウハウですので、ボードゲーム用の印刷所に依頼できる予算があればそのほうが良いものができます。はじめてカードゲーム作るけど、売れるかわからないので少ない部数でコストを抑えて作りたい、という方は参考にしてみてください。

なお、できるだけ具体的にするために利用している印刷所を具体的に紹介しますが、何かもらってるとかそういうことはありません!

構成

揚げピーナッツのカードゲームは箱とマニュアルとカードで構成されていますので、
・カード(枚数は工程的に20の倍数が好ましい)
・箱(筒上のスリーブをダンボールでできた箱で包む形式)
・マニュアル(4つ折り、または8つ折りして90x60ミリになるサイズ)
の3種類についてノウハウを書きます。

カード

カードの印刷は揚げピーナッツではライオン名刺を利用しています。https://www.lion-meishi.com/
以前はラクスルを利用していましたが、いろいろあって印刷所を変えることになりました。
ライオン名刺を利用している理由は「異種面付印刷」です。

通常、名刺印刷は1枚の版下を作って100枚単位で印刷してもらい、それを40枚のカードゲームであれば40枚分の版下を作り、100セット作るのであれば版下ごとに100枚発注しそれを丁合していきます。異種面付印刷の場合は利用者が20枚分を1つの版下にセットした状態で作り入稿します。この場合100枚分印刷を発注すると20枚のセットが5セット作られます。40枚のゲームならもう20枚分の版下を作り、さらに100枚(5セット分)を発注すれば、最小ロット5セット分で発注することができます。

印刷は大量に作れば作るほど割引がありますが、異種面付の場合はそれが1枚ずつの版下に比べて20倍の効果があります。ライオン名刺の場合3400枚が一番割引率が高く、それ以降は変わらないのでウチでは1枚の異種面付版下で3400枚分を発注することが多いです。

その場合、3400枚÷20種類で170セット作ることができます。参考価格としてこの記事を書いているときは26180円です。40枚のカードのゲームなら52360円で170セット作れるのでカード部分の原価は308円になります。50セットで作ったときもありましたが、この時は22000円だったので原価440円でした。だいぶ違いますね。

ただし、もっと安いラクスルでは100枚500円(一枚あたり5円)くらいで作れますので価格だけでいうと異種面付印刷は一番良い選択肢ではありません。

異種面付印刷は後述の丁合作業のときにメリットを発揮します。

また入稿作業も少ない版下数でできるのがメリットです。ただし版下作成の難易度は通常の版下より高くはなります。(詳しくはライオン印刷のwebサイトをご覧ください)

異種面付印刷にした場合のもう一つのデメリットは、枚数が20の倍数になることです。ある程度工夫で乗り切れる部分はあります。例えば50枚で作りたい場合は1つ目の版下に20枚、2つ目の版下に20枚、3つ目の版下は10枚ずつ同じカードの版下にすればよいです。41枚で作りたい!という場合は異種面付で40枚、あと1枚は単独で印刷すればよいでしょう。

角丸

もしカードの角を丸くしたい場合、名刺印刷を利用する最大の壁になります。なぜか名刺印刷で角を丸くしようとするとどの印刷所でも値段がすごい上がります。そして大量印刷の割引も効かないことが多いです。

ライオン名刺だと角丸にすると1枚あたり3円かかります。なので40枚のカードゲームであれば120円が加算されます。これは枚数によっての割引はありません。

ゲームの内容を考えて「角丸は本当に必要か」を考えてみてください。手札として持つことが多い場合は、角丸のほうがプレイ感は相当よくなります。神経衰弱やかるた系のように場に並べる系は角があっても問題ないでしょう。デザイン的に角があるほうが映える場合もあるかもしれません。

丁合

印刷所で丁合まですべてやって納品してもらえるのが一番ですが、同人ゲームでなるべくコストを抑えようとしている場合、丁合も自分たちでやるケースは多いと思います。

多くの場合、丁合するときは100セット作るのであれば、カードの束を手にもち1枚ずつ並べていき100枚ならべて、次のカードをまたその上に1枚ずつ重ねていって、というのを40枚のカードゲームであれば40回繰り返すみたいなことをやると思います。これは結構大変な作業だし、場所も取ります。

異種面付印刷の場合、ちょっと説明が難しいのですが版下に面付されている20枚が
A1,A2,A3,A4
B1,B2,B3,B4
C1,C2,C3,C4
D1,D2,D3,D4
E1,E2,E3,E4
と並んでいる場合、納品されるとき100枚が1つの箱に入っているのですが、
A1,A2,A3,A4,A1,A2,A3,A4,A1,A2,A3,A4,A1,A2,A3,A4,A1,A2,A3,A4,B1,B2,B3,B4,B1,B2,B3,B4,B1,B2,B3,B4,B1,B2,B3,B4,B1,B2,B3,B4,(中略),E1,E2,E3,E4と並んでいるので、4枚ずつ5山にわけていくだけで5セット分に仕分けられます。(たまに印刷所のきまぐれで数枚並びが違うことがあるので注意は必要)

5セットずつで作業ができるので小さなスペースでできますし、4枚ずつわけていくので1枚ずつやるより単純に4倍速いです。丁合の手間というのは長くやっていると結構負担になって、どのようにそれを軽減させるかが課題でした。(この3年で3000セット分の丁合しましたが、この方式にしてからは相当楽になりました。)

なので、初めて作るときなるべくイニシャルコストを下げたい場合はカードはラクスルに頼むのが一番安いと思いますが、丁合作業などの工数などトータル的に考えた場合はライオン名刺の異種面付印刷を利用するのはおすすめです。

紙質など

何か所かで名刺印刷を利用してサンプルを作りましたが、それぞれ特色があります。カードの厚みは0.27が一番しっかりした感じで、0.26だと柔らかく感じ、それ以上だと今度は厚すぎると感じるかもしれません。

表面にマット加工などがされている場合、カードゲームとしての手触りに影響します。加工が強すぎるとうまくシャッフルできなくなることがあります。この加工は1枚だけで見るととても高級感があり、いいな!となるのですが、束になるとお互いが束縛しあうようになり滑りが悪くゲーム体験を損なうので注意が必要です。このあたりは印刷所からサンプルを取り寄せて確認しようとしてもサンプルは紙ごとに1枚しかついてこないので確認が難しいです。一番よいのは100枚分名刺を頼むことです(サークル名刺とかを作成すれば無駄にならない)

ラクスルのマットコートは一番滑りがちょうどよいと思いました。ライオン名刺も滑りはよいですが、紙のコシがもう少しあったらなと思うときもあります。ただ、ラクスルで利用していた紙は0.27mm、ライオン名刺で利用していた紙は0.26mmですが0.01mmの違いも100枚くらいになると1mm変わるので箱がぎりぎりの場合は注意が必要です。

どの印刷所でも紙の種類が追加コストのかからない標準用紙でも何種類からか選択できると思いますが、マットコート紙が一番カードゲームにはむいていると思います。光沢紙は絶対選ばないほうがいいでしょう。

最後に

カードはプレイする部分でかつ値段に一番影響があるところなので、よく調べ、実物を確認し、試すことが重要です。

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