丁合1

名刺ゲームの製作ノウハウ ver.2

はじめに

ボードゲームがブームになっている現在、ゲームマーケットなどで自分の作ったボードゲームを頒布したいと考える人も多いと思います。

しかし実際は印刷などをどうすればわからない、や、費用がどのくらいかかるかわからない、ということが原因で諦めているケースは多いと思います。

ここでは制作工程で必要なものやお金、具体的なノウハウなどをまとめます。面白いゲームを作るためのノウハウはありませんのでご注意ください(笑)

前提条件

初めて製作に挑戦する方を対象とし、参加のハードルを下げるためにイニシャルコストを抑え、頒布価格も安価にするのを前提とします。

具体的な数値としては予算5万円、頒布価格1000円、制作数100部を考えます。イベント参加費用なども考慮し、価格と制作数から考えると製造原価は400円以下に収める必要がありそうです。

そのため、30~40枚くらいのカードゲームという制限があります。コマやボードをつけたい場合はここにプラスした予算がかかると考えればよいでしょう。

ここでは人件費は0と考えます。なので自分たちでできそうなことは過度な負担にならないものであれば自分たちでやってコストを下げることを試みます。

製造費については、
・カード
・箱
・マニュアル
の3つに分かれます。それぞれについて説明します。

カードの制作

カードは枚数と1枚あたりの印刷費用を乗算したものがそのままコストになります。そのためできるだけ枚数を減らし、1枚あたりの印刷費用も下げたいところです。ただ、枚数を減らすのは作るゲームの内容を制限してしまいます。なのでまずは極力印刷費用を安くする方法を考えます。

カードの印刷で一番安価なのはネット印刷の名刺印刷を利用することです。名刺印刷はさまざまなサービスがありますので、どこが良いのか迷ってしまいます。自分が今まで利用したのは
・ラクスル
・アドプリント
・ライオン名刺
です。

ラクスルはWebでの入稿システムがとてもよくできており、入稿しながらの確認ができるので確実性が高いです。ただ一枚ずつしか入稿できないので入稿の時間がとてもかかります。また大きな問題点としてカードの角を丸くしようとするととても高くなります。100枚印刷した場合、1枚あたり5円で作れるのですが、角丸オプションをつけると12円くらいに上がってしまいます。印刷はオンデマンド印刷なのでそこそこの品質です。
ラクスルは自社印刷所を持たず、受注した案件を提携している印刷所に流す、というビジネスモデルです。そのため印刷所による印刷差分があることに注意が必要です(色味の違い、紙質の違い)。カード裏面にちょっとでも差があるとゲーム性に影響が出る場合は、利用に注意が必要だと思います。

アドプリントはPP加工がデフォルトでついていて、印刷はオフセット印刷なので非常にクオリティの高い印刷物になります。ただオフセット印刷を安価で行うために他の原稿と一緒に面付されて印刷するために、他の原稿で使われている色に印刷結果が左右される可能性があります。また、PP加工と紙質の組み合わせなのか非常に滑りが悪いです。名刺として使う分には問題ないのかもしれないですが、カードゲームとしては致命的です(シャッフルできない)価格はラクスルと同等で枚数を多く頼んだときのディスカウントの比率が高いです。それとたまたまかもしれないですが、納品された枚数が不足していたり、逆に過剰に入っていたりすることがあります(連絡すればすぐに対応してもらえます)

ライオン名刺は印刷費は1枚11円と高めですが、角丸オプションにしても14.3円とあまり価格が上がらないのが良いです。
ライオン名刺の特徴として「異種面付」というものがあります。通常は1枚の版下には1枚分の名刺のデータが入るのですが、異種面付は20枚分を1枚の版下に入れることができます。これにより、普通は100枚が最低の発注数なのを20x5(結果として100枚)という発注ができます。これにより、より小ロットの発注が可能になります。

紙について

各印刷所ともに発注時には「紙」や「両面印刷か片面か」か「色数」などを指定します。紙はグレードにより価格帯がいくつかあるのが一般的です。一番安い価格帯のもので十分ゲームは作れます。
紙の質はマットなコート紙が良いと思います。
厚さはなるべく厚いもの、220kgくらいがベストです。
(個人的にはライオン名刺のマシュマロホワイト200kgが好きです)
両面より片面のほうが安いですが、どちらかが真っ白というのは急にしょぼくなるのでこういうところではコストを削減するのはオススメしません。両面カラーを選んでください(デザイン的に白黒であるなら白黒であれば少しだけ安くなります。)

角丸について

角を丸くするかどうかはゲーム性にはほぼ影響がなく、購入前にもあまり気が付きませんがプレイしたときには結構影響します。そして価格に大きく影響します。ゲームによっては角丸にする必要がなく(神経衰弱みたいなゲームなど)ゲーム内容やカード枚数によって考えてみるとよいでしょう。
ちなみに私は角丸はコスト面で見送りました。ある程度頒布数が見込めるようになってからでもいいと思います。
また、「角丸くん」という手動で角を丸くする機械も安価で売っていますがすごく大変なのでやめたほうがいいと思います。

パッケージの制作

パッケージは購入判断に非常に重要な役割を持っていますが、その反面ゲームの面白さにはほとんど影響がないものになっています。リッチな箱にしたいところですが、厚紙でできた化粧箱を印刷して作るとなると大量の部数を作らないとすごい単価になってしまいます。

100部単位で作る場合、市販の名刺サイズの箱を利用するのが良い方法です。名刺サイズの箱にはいくつか種類があります。
・組み立て式のかぶせ箱
・N式箱(段ボール製)
・キャラメル箱
どれも安価です。20~50円程度。材質と一度に買う個数によって変わります。
これにラベルを貼る方法が一番簡単です。

ダウンロード


N式箱については筒形のスリーブに入れるという方法があり、これがなかなか見栄えがして良いです。



iOS の画像 (5)

スリーブは、プリントパックという印刷所の厚紙フライヤー印刷を利用しました。スジ入れを4か所行い、そのスジに沿って折り筒状にします。端に両面テープを貼り、のりしろと合わせます。段ボールのサイズがメーカーによって差異があるかもしれないので先に段ボールを買い、適当な厚紙でサンプルを作りサイズを計ってから版下を作ると失敗がないと思います。両面テープを貼る面のサイズは反対側のサイズより0.5mmくらい小さくしないと折り目から浮いてしまうような感じになるので注意です。
プリントパックの厚紙フライヤーに4つスジを入れるのは見積もりが必要になりますが、簡単な依頼ですぐに見積もりしてもらえます。また金額も厚紙フライヤーにスジを入れるオプション4つ分くらいなのでWebで表示されている金額と大きく差はありません。

マニュアルの制作

マニュアルはいろいろ試しました。最初は家庭のプリンタで印刷したものをA5サイズにし、さらに名刺サイズの箱にはいるように織り込みました。

[写真]

これは結構大変だったので情報量をコンパクトにし3つ折り名刺を利用することにしました。

[写真]

ゲーム内容によっては名刺1~2枚の両面にルールを書くこともできると思います。ただ自分たちが思っている以上に他人にゲームのルールは伝わらないものです。マニュアルはある程度スペースをとってしっかり作ったほうがよいと思います。
今試そうとしていることは、プリントパックの変形サイズのフライヤー印刷に十字折りオプションをつけることです。これならば両面あわせて名刺くらいのサイズ8枚分のスペースの紙面でマニュアルを作ることができます。(3つ折りの場合は6面分。この+2面が大きい)

何部作るか

何部作るかは最初一番悩むところだと思います。名刺印刷を利用する場合、100枚が最低発注数になっているところがほとんどですので、基本的には最低100部作る必要があります。
もしすぐに頒布しきれなくても、気にする必要はありません。次の作品を作ってまたイベントに参加するときに一緒にラインナップとして並べればよいのです。1種類より複数種類あるほうがブース内もにぎやかになります。

丁合、梱包

印刷は印刷所しかできませんが、丁合や梱包は自分たちでもできます。イニシャルコストを抑えるためにここを自分たちでやるのはオススメです。ただし結構大変です(肉体労働)個人的にはこの作業はモノがどんどんできていく最終工程が見れるので好きです。
丁合とは同じカードが束になって届いたものを1つ1つのゲームに仕分けることです。少し広い場所が必要です。人数も一人でやるより多いほうがいいでしょう。

丁合2

箱の組み立て、丁合、そしてマニュアルなども梱包してアイテムが1つになったとき、感動がそこにあります。

経費サンプル

上記の内容をもとに、40枚のカードゲームを100部作ったときの費用を書きます。角丸にはしません。税込みです。
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カード:20889円
マニュアル(三つ折り名刺):4350円
箱(中の段ボール製箱):2709円
箱(外のスリーブ):4825円
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計:32773円

ここにイベントに参加する場合は、出展料や会場への送料などがかかります。余った数が多い場合は会場から自宅への送料もかかります。
角丸にする場合は1万5千円くらいプラスになります。

終わりに

安価に作る場合のノウハウと実際にかかる金額をまとめてみました。参考になりましたでしょうか?
ボードゲーム作成はとても楽しいので、やってみたいという気持ちがあればぜひ一度トライしてみてもらえればと思います。

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