見出し画像

プロサッカー選手の心構え

新年あけましておめでとうございます!
水戸ホーリーホックで取締役GMをしている
西村  卓朗です。
(かなりの長文なのでお時間がある時に
 興味がある方だけ読んでもらえたらと)

「何のためにサッカーをするのか?」

水戸ホーリーホックで選手をする限り、
投げかけられ続ける「問い」である。
学生までは
「好きだから」
「良いプレーをしたときの優越感」
「勝利をした瞬間の達成感」
などそのようなレベルでも良いと思う。
「家族への恩返し」
「恩師の方々への感謝」
というのもその類いである。
(近親者の人に対しての想いを持つというこは自然であり、前提であると考える)
プロサッカー選手になるということはサッカーが「仕事」になるということ。
「仕事」になるということは、
そこにはクラブから報酬が支払われる代わりに
選手は「対価」となる何かを提供できなければならない。
そのひとつが、
勝ち点であり、
勝利に繋がる効果的なプレーであり、
負けてもなお、
諦めずに闘い続ける姿勢なのだろう。
先ほどの話に戻して、
プロサッカー選手になるという、
サッカーを仕事にした時点で、
やはりその目的を明確にすべきである。
自分もプロサッカー選手をしていたときには、その目標を
「高いレベルでのプレーを身につけること」
として、そうすれば、クラブの「目的」
(勝利を含めた、スタジアムでの感動や、一体感の醸成、またファン、サポーター、スポンサーの方々に喜んでもらうこと)
に近づくと考えた。
しかしながら、ここでひとつ想定外の事が起きる。

なかなか「試合に出れない問題」である。

自分も現役時代はoff the pitchの様々な事に
関しては、試合に出れるようになって、
知名度が上がり、影響力の輪が大きくなってから行うことが効果的と考えていた。
しかしながら、
この知名度、影響力という
指標は非常に曖昧で、
何試合出たら・・・、
質の高いプレーが何試合か続けられたら・・・、
J1にいったら・・・、
代表に入ったら・・・、
今なら、その時の自分に強く言いたい。
「おい、それはいったい、いつになるんだ」と。
そもそも代表に入るなんて、
かなりの低い確率だぞと。
事実自分は浦和レッズに浪人、大卒と歳をくった状態から加入したにも関わらず、
3年半の在籍期間中、一度も試合に出ることができなかった(大卒って即戦力でしたよね…)

もうひとつ、しばらくサッカーしていると、
出てくる論争で

「利己、利他問題」がある。

ここ水戸ホーリーホックでは、
「何のため?」が日常的に問われる中、
自分のため?(自己実現、欲望、夢) 
人のため?
チームのため?
世の中、社会のため?
その「問い」に頭を捻り続ける事となる。
そこに先ほどの「試合に出れない問題」
も重なり、どうする?いつする?となるわけだ。
そもそも試合に出る事は自分ではコントロールできないため、もし自分の目的が、「子供達の夢」(仮に)になることなど、試合に出ていなくても、できることなら、ケチくさい事言わずにそれも、同時に存分にやってみても良いのではと!?

話を少し戻して先ほどの
「利己利他論争」についてだが
これは自分の現段階における結論だが、
「利他」を推したい。
もし自分がサッカーをやる目的が、世の中、
社会また他者の何かに向かって課題を解決すること、もしくは貢献することならば、
そこに向かっていく「的」が常に外側に
存在し続ける。
利己の場合は、自分が諦めた瞬間に、
そこに向かっていくべき欲望、
自己への意識がなくなった瞬間に、
その「的」自体が消滅する。
「的」が存在し続けることの方が、
そこに向かうエネルギーの持続可能性は
当然高いことになる。
だからこそ、「目的」をしっかり定めるべきで、その第一歩として、
水戸ホーリーホックでは先の「問い」
を投げかけ続けるのである。
さらに「利他」に意識を向けるためには、
「繋がり」を意識させることから始めることが効果的と考える。
なので、「プロサッカー選手」という希少性の高い場所に辿り着けたことを労い、尊ぶとともに、一方では「選手」は「部分」であるということも同時に教え込む。
「繋がり」を感じられなければ、
なかなか「利他」を意識しづらい。
サッカー選手という存在は
己が求めて渇望したこの産業を成り立たせるための「部分」なんだという感覚にいつどうやって気付いてもらうのか?
そのためには、「各部分」の繋がりを理解、
また「実感」させること。
この「実感」してもらうことが意外に難しい。
そこに選手の意識を向けさせないといけないし、その「意味」は近くの人が根気強く伝え続けないといけない。
「部分」と「部分」の「繋がり」を感じられて、はじめて「全体」をイメージできる。
クラブという「全体」をイメージさせるにも、
監督、コーチから始まり、
メディカル、フィジカル、主務、副務の範囲は比較的近いので、繋がりを物理的にも感じやすい。またアカデミーも選手からはイメージはしやすいだろう。
そこから強化、広報、ホームタウン、運営、
グッズ、マーケ、営業、経理、総務、経営、
パートナー企業、行政関係者、市民など、
だんだん遠くにも意識が向いて、「繋がり」
を理解し、実感できている選手がいるとすれば、それはかなりの上級者ということになるだろう!
小さなクラブでは、ファン、サポーターの方々は選手にとって比較的近いところに位置し、
「繋がり」を感じやすい存在です。

競技者の皆さんに、「繋がり」の重要性を説くにあたり、
あえて逆の状況を想定してみてもらいたい。
完全無欠のサッカーの競技性にだけ特化した
世界が仮にあったとして、
最初のうちは好きなサッカーを、好きな場所で、好きなだけ打ち込める、世界があったとする。(実際には幼少期のサッカーがそんな感じだろう)
しかしながら、だんだんレベルを上げる事を
追求していくと、そこに同等レベルに高いレベルの選手達が複数名必要となり、それを司る優秀な指導者も必要になり、
当然、ピッチや、用具にもこだわりたくなってくる。
ユニフォームもお揃いのかっこよく、質の高いものにしたくなり、対戦相手のレベルも上げたいと思うようになる。
集まってきた仲間の中には、注目をされたい、多くのお客さんの前で、自分の技を披露したいと思う者も当然のように出てきて、周りにだんだん様々な背景の登場人物が増えてくる。
大きなスタジアムは最初の内はサッカーに理解がある数名しか集まらないので、そうでないその街に住む人たちが楽しく、
自然に集まる仕掛けを考えていくことが必要となる。
つまり競技性を追求していく側面から考えても、結局、今のJリーグの姿にだんだん近づいていくのだ。
そもそも、サッカーにおける競技力を高めることを追求するにあたり、定期的にその技を磨く機会が重要で、そのためには安定的に生活の
心配をせずにその競技に打ち込む事が大切で、
一定の収入が必要となる。
その観点からしても現在のクラブの収益構造に近づいていく。
結局、競技性を追求するためにも、
この輪を大きく、大きくしていくことが重要ということになる。
【※Jリーグクラブの収益構造】
1位広告料収入
2位チケット収入
3位Jリーグの分配金(放映権収入)
4位グッズ収入、
5位アカデミー収入

今回このような note を書くに至ったのは
彼の記事がきっかけである。
森勇人の記事だけでなく、他の選手の記事も是非時間がある時に読んでもらえたらと!

今回の森勇人の記事は色々な立場のサッカー選手、プロサッカー選手を目指すこれからの学生、他の競技者、アスリートに対しても示唆に富む内容になっているのではないだろうか!?
このような仕組みを想定して設計した、
こちら側の人間にも色々な気付きがあったのと、この仕組みをさらに強化していこうという新たなモチベーションをかき立ててくれた。

良いモノは良い!!!
強く推奨できるこの機会には
存分にそれをしておこうと思う!
彼の記事の中にあるように競技者として、
避けて通ることができない「結果」への向き合い方と、その時の行動について、試合に出れるようになってから、「結果」が出てから、
色々やるべきではないか?というその葛藤や不安をきっぱり払拭しておきたい。
(もちろん選手としての質を高める努力をし続けていることが大前提)

以前の note でも書いたことだが、

一歩を踏み出した者にしか、体感し得ない、
気付きが必ずある。
批判も、挫折も、失望も、
賞賛も、歓喜も、感謝も、
一歩を踏み出し、そこで感じ、体験したものすべてが、その挑戦をした者にしか味わえない。
人生(サッカー人生も、引退後の人生も)とは大抵は、すぐには思った通りにならないもの。
そこで体感する、
悔しい思い、
不甲斐ない気持ち、
虚しさ。
その様々な思いを噛み締め、その状況になったからこそ出てくる感情、思考と真正面からじっくり向き合い、新たな気付きを見つけていく。
うまくいっていないときこそ、
何のためにやっているのかを思い返し、
自分の在り方を確かめる。
その姿勢こそが、貴く、価値がある。
そのような経験をしている人を
「信頼のできる人」という。

時間がある時に是非他の選手の記事も読んでもらいたい。
自分の名前をあげてくれる選手には忖度だったとしても、感謝している。
彼等が語る、「距離感」「繋がり」「支えてくれる人」という言葉を実感を持って語れる選手をどのような「仕組み」と「人」を要して量産していくか?
強いチームを作っていくことは言うまでもないが、それが自分が日々、考えていることである。

今季は多くの選手が残留し、
また新たな選手が水戸ホーリーホックに加わってくれた。
2023シーズンも
彼らと共に「何のため」を一緒に考え、
作り上げていきたいと思う。

皆さんは「何のため」に、
サッカーをする
サッカーを見る
サッカーを支える
のでしょうか?

今年も1年宜しくお願い致します!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?