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『1億3000万人のためのeスポーツ入門』より序文を公開。

6月3日の刊行から、もうじき2か月ほど立ちます。おかげさまで、eスポーツシーンを理解するためのコンパクトなガイドとして、eスポーツコミュニティから熱烈に歓迎され、高評価をいただいています。
他方、この間もeスポーツシーンはめまぐるしく変化し、成長し、ニュースをにぎわしています。シーンの変化がダイナミックすぎて、ゲームにもとより縁遠い人には、入り口を見つけることすら難しいというのも実感しています。
本書は、「eスポーツってなに?」と思いながら、これまで触れる機会がなかった方にも、シーンのダイナミズム、魅力をぜひシェアしたく、刊行しました。ニュースがあふれる今、eスポーツを知る深めるきっかけになればと思い、序文を公開します。入り口はこちらです。お役立てください!

【こんな方にオススメ】
「最近メディアでよく見るeスポーツについて知りたい」
「子どもがeスポーツプレイヤーになりたいと言って、困っている」
「eスポーツ部を生徒が作りたがっているが、よくわからない」
「ゲームをスポーツと呼ぶことに違和感を感じる」
「eスポーツ事業に乗り出せと上司に命令され、困っている」
「本を読むのは好きだが、ゲームはやらない」


はじめに 但木一真


 "eスポーツ"という言葉がメディアを躍っている。テレビや新聞、雑誌でも特集が組まれ、この言葉を見かける機会は激増した。記事に登場する文章は、「大企業がeスポーツの大会とスポンサー契約を交わした」、「2020年の東京オリンピックに合わせてeスポーツの大会が開催されることが決定した」、「eスポーツの市場規模が急激な成長を見せている」といったものだ。
 誰もが言葉に夢中になっている。AI(人工知能)、ブロックチェーン、Io T(モノのインターネット)といった言葉と同様に、eスポーツが"新しさ"、"成長"、"革新性"といった可能性を想像させるからだ。言葉に惹かれた企業は投資や事業参入を狙い、行政や政治はeスポーツとの接点を模索し始めた。
 本書を手に取っているあなたも、この言葉に惹かれて夢中になっている1人に違いない。eスポーツという言葉を知ったあなたは、さらに深く理解したいと思うだろう。書店で本を探し、ウェブで情報を収集し始める。職場の同僚に話を聞いてみる。そこであなたは途方に暮れるのではないだろうか。eスポーツに関する書籍は数えるほどしかなく、ウェブには断片的な情報しか存在しないからである。
 まずはスタート地点を確認しよう。eスポーツという言葉の定義からだ。
PCゲーム、家庭用ゲーム、モバイルゲームといったゲームを用いて競技を行うことをeスポーツという。世界中のビデオゲームファンがこの競技に熱狂している。
 eスポーツの世界は、この言葉を知った人が最初にイメージするスケールを遥かに超えて複雑であり、広大だ。例えば、多くの人がeスポーツの競技タイトルとして思い浮かべるであろう『ストリートファイター』は何百と存在する競技タイトルの一つに過ぎない。日本には野球・サッカーのようなeスポーツのプロリーグが既に存在している。そして、世界には賞金総額が20億円を超える大会もある。
 eスポーツはウェブを中心に栄えてきた。eスポーツの大会コンテンツはユーチューブやツイッチ(Twitch)といったウェブ動画配信サービスを通じて発信され、ウェブのメディアがこぞってコンテンツを取り上げてきた。発信する側もそれを観る側もウェブで活動し、そのなかで業界が成長してきた。
eスポーツの渦中にいる人たちは、ウェブに溢れかえる情報を取捨選択し、それらをつなぎ合わせることで実態を理解していく。深く長い時間ウェブに潜り、獲物を狙うサメのように情報をかき集めている。情報が取れる〝狩場〞はどこかといった前提知識も重要だ。
 言葉を知り、深く理解しようとしたあなたは、ウェブに潜った時に息切れしてしまったのである。ウェブという情報の海は中に入ろうとする者を手荒くもてなす。目的地へと導く道標も存在しない。
 そんなあなたが息切れしないよう、本書では前提知識として知っておいてほしいことを4部構成でまとめている。本書の内容を頭の片隅に置いておけば、ウェブで見つかる断片的な情報をつなぎあわせ、eスポーツを深く理解することができるだろう。

本書には様々なバックグラウンドをもった執筆者が寄稿している。ゲームコンサルタント、ウェブメディア運営者、プロゲーマー、チームのオーナー、TVプロデューサー、弁護士。彼らがeスポーツの世界の水先案内人である。 執筆者たちはまったく異なる才能を有している。共通しているのは、彼ら全員が現在進行形で進化を続ける業界をけん引するリーダーであることだ。
 まず第1部では、eスポーツの基礎的な情報、見取り図を示す。
 第1章では、私(但木一真)がeスポーツシーン、ビジネスを理解するための基礎となる知識を提示する。本書の下敷きとなる部分であり、ざっくりと全体像をつかんでもらえればと思う。第2章では、ウェブメディア「Happy esports」を運営し、業界を広く深く知る、謎部えむが、eスポーツの過去・現在・未来を繙く。彼が描いた地図を辿っていけばあなたが必要な知識が間違いなく手に入るだろう。
 第2部では、eスポーツの最前線からの声を聞く。
 第3章では、ぷよぷよ世界チャンピオンのlive(りべ)がプロゲーマーの実態を描く。嫌というほど的確な描写にはたじろぐかもしれないが、ゲーマーという難しくも魅力的な人たちを知るにはliveの声に耳を傾けてほしい。
第4章では、日本有数のチームであるRUSH GAMING(ラッシュ・ゲーミング)のオーナー西谷麗が、その経営手腕を余すことなく披露する。彼女が持つ卓越した論理と圧倒的熱量から学べることはeスポーツに留まるものではない。
 第3部では、eスポーツビジネスの道を舗装する裏方に焦点をあてる。
 第5章では、eスポーツTV番組『eGG』のプロデューサーである佐々木まりなが、テレビとeスポーツの新しい関係を描く。TVメディアの限界と潜在力の両面を理解している彼女が解いてみせるテレビとeスポーツの方程式は、驚くほど可能性に満ちている。
 第6章では、弁護士の高木智宏松本祐輝が、日本のeスポーツの健全なる発展に不可欠な法律知識をつまびらかにする。少しでもeスポーツに関わろうという人は、たえず彼らの知識を参照し、真っ当なビジネスを築いてほしい。
 第4部では、日本最大級のオンラインコミュニティ「Esportsの会」を運営する私を含めた4人が、座談会というかたちで、eスポーツビジネスの未来を占う。
 また、各部のあいだには、謎部えむによるコラムを用意した。かゆいところに手が届く、貴重な情報をコンパクトにまとめたので、参照してほしい。

 eスポーツはさまざまな人たちの仕事によって猛スピードで変化を遂げている。この本を執筆している今も、新しいニュースがメディアを躍り、業界の地図が塗り替わっている。eスポーツは誰も予測できなかった規模とスピードで社会全体を巻き込み、大きなムーブメントを形成しつつある。誰もが気づかないうちに革命”が始まり、気づいたころには景色が様変わりしていることだろう。
 あなたがこの変化の始まりにいち早く気づき、複雑で広大なeスポーツの世界を知るためのきっかけを本書でつかんでもらえれば幸いである。

【目次内容】
Part 1 eスポーツの基礎知識
第1章 なぜ今eスポーツなのか? 但木一真
第2章 eスポーツ今昔物語――2018年までのシーンをふりかえる 謎部えむ
Part 2 eスポーツシーンの最前線
第3章 eスポーツプレイヤーとは誰か? live(りべ)
第4章 eスポーツチームを運営するということ 西谷麗
Part 3 eスポーツシーンの裏方
第5章 テレビとeスポーツ 佐々木まりな
第6章 法がeスポーツを加速する 高木智宏・松本祐輝
Pare 4 eスポーツのこれから
座談会 eスポーツをブームで終わらせないために
Esportsの会運営者(但木一真×松本祐輝×小澤脩人×荒木稜介)


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