見出し画像

North Star Metric の作り方(第3回) - 実践編 中編 - KPIと施策を決める

こんにちは、NTTレゾナントテクノロジー アジャイルデザイン部の上田です。私たちはプロダクトの施策効果を測るために「North Star Metric(NSM)」という指標を用いて計測を行っています。今回は前回の続きで、North Star Metricの具体的な作り方として、NSMのインプット指標となるKPIと、KPIに紐づく施策の決め方を紹介します。

<参考> Amplitude - North Star Playbook :  https://amplitude.com/north-star


North Star Metric(NSM) の作り方

<第1回:はじめに>
はじめに - North Star Metricとは
<第2回:実践編 前編>
1. プロダクトの仮説を定義する
2. プロダクトのタイプを特定する
3. NSMを定義する
<第3回:実践編  中編>←今回はこちら
4. NSMを構成するKPIを決める
5. KPIに紐づく施策を決める

<第4回:実践編 後編>
6. KPIに紐づく施策を決める
7. NSMを見つけるポイント


4.NSMを構成するKPIを決める

前回は、North Star Metric(以下NSM)の定義までを紹介しました。続けて定義したNSMに影響を与えるインプット指標のKPIを決めていきます。KPIを探すにあたっては、顧客の定着観点で洗い出しやすい、4つのディメンション「幅・広がり」「深さ」「頻度」「効率」から考えます。

このディメンションは、顧客分析手法である Pirate Metrics / 海賊指標(3A3R Funnel, AARRR-RAARR Framework)にも考え方が近しいですので、あわせて指標の洗い出しに使うのも有効です。

出典元「Red Badger - Running a remote North Star」
https://blog.red-badger.com/running-a-remote-north-star 

Breadth = 幅・広がり
どれだけ多くのユーザーがアクティブに利用しているか?
Depth = 深さ
ユーザーが訪問時に体験する関与の深さは?
Frequency = 頻度
ユーザーがどれぐらい頻繁にきているか? 
Efficiency = 効率
タスク完了までの速度は? ユーザーが価値にすぐ到達できるか?


5.KPIに紐づく施策を決める

NSMとKPIを決めたら、4つのディメンション「幅・広がり」「深さ」「頻度」「効率」毎に、KPIの改善が見込める施策アイデアを出していきます。今回はデジタル音楽ストリーミングサービス「Spotify」をAmplitudeのワークショップの事例を参考に、NSMフレームワークを使った施策のアイデアをだしていきましょう。

<事例参考: Amplitude - Getting Started: Running a North Star Workshop >



Spotifyとは

Spotifyは、世界中のクリエイターによる数千万もの音楽・ビデオが楽しめるデジタル音楽配信サービスです。自分の好みに合ったおすすめ機能が特徴的です。再生など基本機能は無料ですが、プレミアムユーザーとしてSpotify Premiumにアップグレードすることで、広告非表示やプレイリストの無制限再生等で、より手間なく、音楽を楽しめるようになります。


プロダクトの仮説 (顧客価値/戦略・ビジョン/収益指標)

優れたNSMを表す「プロダクト戦略・ビジョン」「顧客価値」「収益の先行指標」には、それぞれ「数千万の音楽から、好きな音楽に簡単に出会えること」「(自動再生の)プレイリストを数多く視聴してもらうこと」「プレミアムユーザー数」と設定します。

KGI 

Spotifyはサブスクリプションモデルであるため、KGIには定額利用者からの収益 =「プレミアムユーザーの月額課金収益」を設定します。

プロダクトのタイプ

Spotifyは音楽ストリーミングサービス = メディアであるため、プロダクトのタイプ=エンゲージメントゲームは 「アテンション(注目)」 に設定します。

NSM

KGI(プレミアムユーザーの月額課金収益)も考慮し、NSMの3つの特徴をよく表した単一の指標として「月間楽曲視聴時間」と設定します。

KPI

  • 幅・広がり  -  定額利用ユーザーを増やすことが大事であるため「プレミアムユーザー数」とリードの「プレミアムのトライアルユーザー(3ヶ月無料)」を設定します。

  • 深さ -  1回の訪問で離脱なく、聞き続ける時間深度を測るため「セッションあたり平均滞在時間」を設定します。

  • 頻度 -  ユーザーの期間中の来訪頻度を測るため、利用想定を日次ではなく週単位の利用とし「週セッション数」を設定します。

  • 効率 -  ユーザーの価値到達を測るのに、起動時にプレイリストを選び再生するまでの速さが大事と考え、「起動から再生までの時間」を設定します。


施策のアイデア

  • 幅・広がり  -  「プレミアムユーザー数」を増やす施策は、無料ユーザーへの「有料機能のアップセル(再生制限や広告表示の解除)」、「プレミアムのトライアルユーザー」を増やす施策は「有料版の無料体験」、その他「友達招待機能」があげられます。

  • 深さ -「セッションあたり平均滞在時間」を増やす施策は、訪問時に再生の流れを止めない体験が大事として「オートプレイ機能」や「プレイリストのフォロー」の強化があげられます。

  • 頻度 -   「週セッション数」を高め起動を促すために、フォロー中のプレイリストのアップデートや、フォローアーティストの新譜リリース紹介といった「更新通知」があげられます。

  • 効率 -  「起動から再生までの時間」を最短にして価値到達を早めるためには、検索せずともおすすめが毎日提案される「プレイリストのレコメンド機能」の強化があげられます。


以上、Spotifyをケースに、施策アイデアの例をあげてみました。指標や施策は、完璧にしようとすると時間がかかりますので、一度指標を仮決めし、施策を出して検証し、精度をあげながら進めてていきましょう。

今回は、NSMの作り方の 実践編 中編として、KPIの出し方とKPIに紐づく施策の考え方について紹介しました。次回は実践編 後編として、施策アイデアの出し方、NSMを見つけるポイントについてお伝えします。


<参考文献>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?