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North Star Metricの作り方(第2回) - 実践編 前編 - プロダクトの仮説・NSMを定義する

こんにちは、NTTレゾナントテクノロジー アジャイルデザイン部の上田です。私たちはプロダクトの施策効果を測るために「North Star Metric(NSM)」という指標を用いて計測を行っています。North Star Metricの作り方と第して、今回のブログは前回の続きで、私たちが実践するNorth Star Metricの具体的な作り方を紹介します。

<参考> Amplitude - North Star Playbook :  https://amplitude.com/north-star


North Star Metric(NSM) の作り方

<第1回:はじめに>
はじめに - North Star Metricとは
<第2回:実践編 前編>←今回はこちら
1. プロダクトの仮説を定義する
2. プロダクトのタイプを特定する
3. NSMを定義する

<第3回:実践編  中編>
4. NSMを構成するKPIを決める
5. KPIに紐づく施策を決める
<第4回:実践編 後編>
6. KPIに紐づく施策を決める
7. NSMを見つけるチェックポイント


1. プロタクトの仮説を作る

North Star Metric(以下NSM)を見つけ施策を実施していく前に、まず私たちはプロダクトを誰に提供し、どのようなことを成し遂げたいのか、プロダクト開発やビジネスを進めるにあたり、チームの行動の基軸となるプロダクトの戦略仮説をつくることが大事です。

NSMに選ばれる指標には、現在のプロダクトの戦略を体現するもの、顧客への提供価値、収益につながるもの3つの特徴があるとされています。したがってまずは「プロダクト戦略・ビジョン」「顧客価値」「収益の先行指標」となる要素を洗い出してみましょう。

1. 顧客のプロダクト利用の価値を測定できる
2. 現在のプロダクトの戦略を表している
3. 上記の評価を表す収益の先行指標である

出典元「Amplitude - Every Product Needs a North Star Metric: Here’s How to Find Yours」
https://amplitude.com/blog/product-north-star-metric


プロダクト戦略や顧客価値といった項目は、リーンキャンバス顧客フォースキャンバスなどの仮説定義の項目にも設定されています。設定はこうした仮説定義・整理用のキャンバスを使い、miroなどを用いてチームで定義し共有しながら、日頃チームで確認していくことをおすすめします。

なかでも顧客フォースキャンバスは、顧客の課題と価値の発見に役立ちます。顧客の状況から課題や成し遂げたいことを見つけ(JobsToBeDone)、ニーズのメカニズムを理解することで、自社が手掛けるべき方針やソリューションを見出しやすくなります。またプロダクトビジョンキャンバスは、プロダクトが目指すビジョンや方針を、顧客課題や顧客体験を踏まえて検討することができます。miroにもテンプレートがありますのでぜひご利用ください。

<顧客フォースキャンバス>

出典元「LEANSTACK - Customer Forces Canvas」
 https://leanstack.com/customer-forces-canvas 

<プロダクトビジョンキャンバス>

出典元「UX Collective - Canvas your way to product vision by  Merissa Silk」https://uxdesign.cc/canvas-your-way-to-product-vision-79e3250ea278


2.プロダクトのタイプを特定する

次に、自社のプロダクトが顧客エンゲージメントを高めるため、どの市場で勝負するか(エンゲージメントゲーム)を特定します。Amplitude社によれば、自社の顧客調査により、デジタルプロダクトのエンゲージメントゲームを アテンション(注目)トランザクション(取引)プロダクティビティ(生産性) の3つに分類により定義できるので、今回はこれに基づき定義します。

出典元「Amplitude - Product Analytics Playbook : The Three Games of Engagement」https://amplitude.com/user-engagement/three-games-of-engagement

アテンション(注目) 
多くの時間をプロダクトに費やすことを最大化するサービス(メディア、SNS、ゲーム)

トランザクション(取引)
商品購入等の取引数を最大化するサービス(EC、請求・問合せサービス(不動産、求人、旅行等)

プロダクティビティ(生産性)
タスクを効率的に処理することを最大化するサービス(SaaSアプリケーション、BtoBサービス)

3. NSMを定義する

その1 で定義した 「プロダクト戦略・ビジョン」「顧客価値」「プロダクト戦略」「収益の先行指標」を表すNSMを1つ設定します。チームが追いかけやすい、わかりやすい指標を作成します。立てたら、定量的に計測できるか、顧客と自社の視点に偏りがないかなど、指標を俯瞰してチェックしてみましょう。

アテンション (注目)
Facebook :フィードに積極的に費やした時間
Netflix:月間視聴時間がX時間以上の定期有料利用者数

トランザクション(取引)
Amazon: プライム会員一人あたりの購入金額
Walmart:訪問/セッションユーザーあたりの購入金額

プロダクティビティ(生産性)
Adobe : エンゲージメントが高いクラウド版の定期有料利用者数
Salesforce : 顧客アカウントあたりの平均レコード作成数

出典元「Amplitude  - Product Analytics Playbook : The Three Games of Engagement」https://amplitude.com/user-engagement/three-games-of-engagement


なお、同じプロダクトのグループにいても、プロダクトごとに異なるNSMとなっています。FacebookとNetflixは同じ ”アテンション(注目)”に分類されますが、Facebookは広告収益が主であるため、インフィード広告の表示回数の最大化、すなわちホームのフィードに費やす時間を定義しています。一方Netflixはサブスクリプションモデルとして、有料購読者をキーにした月間視聴時間という定義になります。NSMは同じである必要はなく、プロダクトの現在取る戦略やマネタイズ方法により、プロダクトに応じて様々な違いを持って独自に定義します。


以上 NSMの作り方の 実践編 前編として、プロダクトの仮説やプロダクトのタイプ、そしてNSMの定義法について紹介しました。次回は実践編 中編として、NSMを構成するKPIと、KPIに紐づく施策の作り方についてお伝えします。

<参考文献>

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