天気の子をあの頃見なくてよかった

天気の子を見てきました。以下ネタバレあります。
改訂履歴:記憶違いしていたみたいで、陽菜が歌っているのは「恋」の方でしたので修正

<体裁を整えた感想>

大筋はまとまっており、少年の成長を描いた物語だったと思います。
新海監督のこだわりと言える背景の緻密さも発揮できており、大都会東京の一面を大きく出せていると思います。
最後の展開には賛否両論ありますが、監督が述べているように見た人を考えさせる展開だったと思います。

<体裁を整えた感想 終わり>


お断り:以下男子中高生という単語が飛び交いますが性差別を意味するものではございません。ここでの意味合いは「そこまで世界は好きじゃないけど世界に依存しないと生きていけないのに、俺ってば能力あるんだけどなーみたいに鬱屈とした感情を持つ時期の子」という意味です。


いやもーー最高!!!!!!
ここまで“男子中高生と、かつて男子中高生だった人”を気持ちよくさせるためだけにあるみたいな映画最高!


高校生が!
一人家出して!
大都会で縁あってライターの仕事とか雑用とかしながら!
露出高い年上のお姉さんの原付に2ケツして!
可愛い女の子と知り合って!
その女の子の家に遊びに行って!
なんか始めたビジネスが軌道に乗っちゃって!
家族(弟)公認の中になって!
逃避行が始まって!
ラブホに泊まって!
指輪あげちゃって!
その後彼女を助けるために奮闘して!
世界よりもお前が大事だと告白!
世界よりもお前が大事だと告白!
世界よりもお前が大事だと告白!(大事なので3回言った)
その結果世界がどえらい事になったけど特に迫害も受けず!
まぁ見えないところで死者も被害者もいっぱい出ているけど罪悪感持ちながらも俺はこの彼女(年下だけど尻に敷かれてる)を守っていこうと思うよ、で幕引き。

最高

これが最高でなくてなんだってくらい最高

一部10代の男の子が抱く、俺ツエーよりも体裁は保った(少し想像力の不足した不完全な状態で)妄想が映像になって襲ってくる。


これは恋愛映画でもエンタメでもない!これは冒険活劇!男の子が知らない土地に行ってなんかうまく立ち回って故郷に錦的にいい塩梅の結果を持ち帰る話なんだよ!

家出して一人東京行ったらライター雑用の仕事貰って、事業始めたら軌道に乗って青春しちゃって、可愛い彼女出来て世界も変えちゃってだけども僕らは元気に生きています?
なにそれ。
遭難して無人島に流れ着いたけど食料がいっぱいあったし、昔の住人の家があったので無人島ライフ楽しんじゃいました。サバイバルの知識はあったし生活には困らなかったよ。ついでに海賊の財宝見つけて帰ったらいい生活できるようになりましたってか?
「5000円って高くない?」って台詞が、この子たちは5000円が大金なんだという事を物語っているんだけど、同時にこの子たちは一人で生きていくにはまだ知識が追い着いていないっていう状況を一言で語っているよね。
映画「火垂るの墓」で清太が親戚家から出て行ったシーン見たときと同じ感情だったよ「やめろー死ぬぞー」
でも、これは冒険活劇だからね、なんかうまいこといってビジネスは成功して、(決して高いと言い切れない)生活費を得られた。税金?知らん!めでたしめでたし!

現代版ハックルベリーフィンの冒険。
良いことあるよという教訓性を取り除いたフォレストガンプ。
都合のいいロビンソークルーソー。
清太がビジネスで成功しちゃった火垂るの墓。
映画見ながらずっとこんな風に思ってた。
でも最高に見てて気持ちがいい。

これ中高の時に見なくてよかった。
これみたら絶対高校中退して東京行く!とか言ってたもん。
当時はハガレンとかヘルシングとかビバップが好きでよかったね!
指パッチンしても炎出ないし(やるにはやった)イギリスも宇宙も遠い。
でも東京は近いんだ。東北の田舎にいても3万あれば行けるんだ。
行った後?なんかうまい具合に仕事が手に入って、上手い具合にWeb知識とかでビジネスして、なんか分からんけど上手い具合にいくんだよ!

そう!東京に来ればすべて手に入る!ビバ東京!コンクリートジャングルには無限の希望が詰まってる!
東京に来れば、「きみぃ」と言ってなんだかんだ面倒見てくれる10代彼女と東京でビジネス成功!
東京でなら、ちょっと勉強したら受注まで受け付けてくれるWebシステム作れる!
東京に来たら「世界を変えても君が欲しい」とかそんな感じのシチュエーションがあるかもしれない!
東京来れば、胸元開けてソファで寝ているお姉さんをガン見する体験もできる!

まぁそんな訳ないんだけどね。
ツテが無ければだれも助けてくれないし。
新宿はもっと生ゴミみたいなにおいしているし。
バニラ求人はうるさいだけ。
作ったサービスが1日目に客が入ることもない。
CSSのレイアウト崩れで1週間以上悩む帆高の姿しか思い浮かばない…
ウルセー!映画の中くらい現実を忘れさせろー!!ここはフィクション!


あと少し話は逸れるけど、ラブホのシーン、あれなに?
和気あいあいとラブホで少年少女一行が飯食っているんだけど。
背徳的すぎない?
純粋な少年少女が、本来の目的と違う使い方をするっていう行為自体が背徳的すぎない?
打ち捨てられた戦車を滑り台代わりにする子供たちを見ているような感情。
見ているこっちが「まじか」って思ってたんだけど
新海さんは天才か?

池袋北西郊外のラブホでガウン姿の可愛い15歳少女に「恋」を歌わせるとか正気の沙汰か⁉

男子中高生の想像力の限界はこの辺だからここまで描きました、みたいな発想すさまじ過ぎるわ!
いやセックスしろとか言っているわけではないんだ、
なんでラブホでガウン姿の可愛い15歳少女に「恋」を歌わせようとしたん?
「足しも引きもしないでください」じゃあないよ。お前のその状態はこの世の中で上から数えた方が早いレベルでパーフェクトだなシチュエーションだよ。

この映画はかつて10代に手に入ったかもしれないもの(ぶっちゃけ手に入るもの一つもないんだけど)をオールスターで並べて殴らせるボスブッチだった。
それ以上でもそれ以下でもない。
世界よりも、愛する彼女を天秤にかけて取ったっていう、無敵の男の子の夢を描いただけの作品だ。格好つけの究極の、映画を見た少年が自分に酔える作品だ。全肯定の麻薬だ。
マジ最高。
新海さんの作品には縁なくて今まで触れられなかったんだけど、ファンの人が嬉しそうに「気持ち悪い」というのがこの傍若無人っぷりを指しているのだとしたら、たしかに「気持ち悪い」んだと思う、自分でも思う。
だから最高だ。
世の中を丸め込み、これを世に出した監督は尊敬に値する。

この作品を男子中高生に見せてはいけない。
東京に、自分の可能性に酔ってしまう。
碌な事にならない。
これは全てがファンタジー。
マクドナルドやらバニラ求人やら、世の中のすべてが協力して出来たものが、超リアルに描かれたファンタジー世界だったなんて誰が想像したろうか。


もしもこの感想を読んでいる男子中高生がいるならば伝えたい。
この作品で肯定されているシチュエーションは、青年誌の裏表紙に載っている「美女と札束風呂に入っているシーン」に近い。
夜中に食べたくなるポテチだ。
心に秘めておいた方がいいシチュエーションだ。決してポテチは食べてはいけないのだ。
でも、そのポテチは最高においしいんだ。
だから、まずは声に出さずに心に秘めておこう。
そして、もし、大人になった時、友達が「天気の子」を好きだと言ったなら満を持してこう言うんだ。

「最高だったね!」

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