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新作歌舞伎 刀剣乱舞を観てほしい

オンラインゲーム「刀剣乱舞 ONLINE」。
それが2023年7月、歌舞伎の演目として上演されることとなった。
刀剣乱舞について詳しいことは検索していただきたいが、

・登場するのは日本史上実在した、或いは実在したとされる刀剣の
 付喪神である(よくいわれる【刀の擬人化】とは若干違う)
・付喪神は人間の男性の姿をしていて、刀剣男士と呼ばれる
・彼らは審神者(さにわ)の司令により、日本の歴史を変えようと画策する
 謎の軍団・時間遡行軍と戦う
・ゲームをプレイするユーザー=審神者

これだけ押さえれば、彼らをどんなメディアで目にしようと大丈夫だ。

私は2015年以来のゲームユーザー…刀剣乱舞の世界で言うところの審神者であり、年に5、6回歌舞伎を観に行く永遠の歌舞伎初心者である。
古典芸能そのもの、古典作品はもともと好きだが、新作歌舞伎も大好き。
ワンピース歌舞伎、NARUTO歌舞伎、ナウシカ歌舞伎(初演・再演)、FFX歌舞伎などを過去観劇してきた。
そして日本史も好きである。そんな私が、刀剣乱舞が歌舞伎になると聞いて、どんなに嬉しかったことか。
チケットを購入し、観劇の日を心待ちにした。

新作歌舞伎【刀剣乱舞 月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)】

キャスト
三日月宗近… 尾上松也
足利義輝/小狐丸… 尾上右近
松永久直/同田貫正国… 中村鷹之資
義輝妹紅梅姫/髭切… 中村莟玉
膝丸… 上村吉太郎
小烏丸… 河合雪之丞

異界の翁… 澤村國矢
異界の嫗… 市川蔦之助
山口左司馬… 大谷龍生

弾正奥方柵… 中村歌女之丞
善法寺春清… 大谷桂三

松永弾正… 中村梅玉

脚本… 松岡亮、演出…尾上菊之丞、尾上松也

刀剣男士の名前と足利義輝、松永弾正が登場するという発表を目にしただけでも、日本史好きにとっては胸打たれる物語展開が予想された。
そしてこれまで観た新作歌舞伎の完成度から、内容に全く不安は覚えず、むしろ期待しかしていなかったのだ。
そして実際、期待を遥かに上回るものだった。


新しいのは物語だけでなく

物語の内容については、これから観劇する方の為に伏せる。
言えるのは若き歌舞伎俳優達がそれまで磨いてきた技と力を存分に発揮し、
雪之丞丈・歌女之丞丈・梅玉丈が深く確かな演技で、芝居に厚みを持たせてくれているということだ。
そして新しいのは物語だけではない。和楽器とその奏者が、非常に効果的な演出で観客に印象づけられる。特に琵琶の独奏場面を、私は是非多くの人に、生で受け取ってほしいと思う。きっと忘れられない経験になる。

歌舞伎ファンと刀剣乱舞ファン、双方への信頼


新作歌舞伎刀剣乱舞は、大人気ゲームを題材にしつつ古典作品のエッセンスを随所に組み込んである。この演出は恐らく、歌舞伎ファンが見て「なるほど、あれだな」と気づくであろうことを期待するだけでなく、刀剣乱舞のファン…審神者ならば、それまで歌舞伎になじみがなくとも観劇後に自分達で調べて「あれはこういう意味だったのか!」「だからこの演出だったのか!」と辿り着くことを信じている、そんな脚本演出だろう。
いわば歌舞伎ファンと刀剣乱舞ファン、双方への信頼をもとに制作されているのだ。

古典作品への道を

そして、刀剣乱舞ファンがこの作品を観た後に、歌舞伎の他の作品も観てみたいな…と思い、古典作品を観る為に歌舞伎座に足を運んだ時に「これ刀剣乱舞歌舞伎で観たやつだ!」と嬉しくなってしまう作りにもなっている。
「刀剣乱舞歌舞伎を観た人は、もう歌舞伎を敷居高く感じなくても大丈夫ですよ。次は他の作品を観にいらしてくださいね」という誘導。
これはFFX歌舞伎でも感じたことだが、ゲーム原作というキャッチーなものとコラボしながら、古典作品への道筋を綺麗に引いてくれている。

SNSで耳目を集めて

本作には歌舞伎としては珍しく(FFX歌舞伎でも行われたが)カーテンコールがある。その時間は観客が撮影可能だ。演者全員が舞台上と花道を縦横無尽に駆け回り盛り上げる。「SNSでの拡散をお願いします」という札が掲げられ、実際観客はSNSに自分が撮影した、楽しい、お祭り感満載の画像をアップする。このやり方に眉を顰める人はいるかもしれない。
しかしきっと、座長の尾上松也丈はそれも織り込み済みでアレをやっている。
作品に、この座組に自信があるから。
耳目を集めて、とにかく観てもらえさえすれば楽しんでもらえる、楽しませるという自信。千穐楽までに、一人でも多くの観客を新橋演舞場に。

私もそう思う。観てもらえればきっと伝わる。
あの場で新作の誕生を見届けた観客の一人として、千穐楽まで応援したい。

チケットWEB松竹などで確認すると、7月10日現在、まだチケットは購入できる。そして7月27日の昼の部と夜の部(千穐楽)はDMM TVで配信が予定されている。
いかがですか。新たな作品の第一歩を、ご覧になってみませんか。








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