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虎に翼 第3話

昨日のラストから、ぽこぽこと小さな泡のように湧き上がり弾ける「はて?」のBGMが楽しい。
第2話でトラコ(伊藤沙莉)に「はぁ!?」と大声を上げさせた無能力者と、その責任能力についての解説。
「妻が財産の利用、負債、訴訟行為、贈与、相続、身体に羈絆(きはん)を受くべき契約(雇用契約を結んで働くこと)」
戦前、これらを妻が行う場合は、夫の許可が必要であった。

ああ……戦後、商いをして一家を支えていた祖母が不動産売買をするとき、ご主人の許可はあるのかと訊ねられたと憤慨していたのは、この名残でもあるのか。いや、名残ではないのかもしれぬ。つい最近まで「ご主人は?」と訊ねられるのは当たり前にあった。いや、今でも根強くあるのか。「家族として話し合いはしたか」という意味ではなく「夫の許可は取ったか」という確認。結婚した途端、責任能力が妻側にないとする感覚。

桂場(松山ケンイチ)「なにが可笑しい。彼女はわからないことを質問しているだけだ」。
穂高(小林薫)「こんなスッキリしない顔をしたままでは、体に悪い」

このふたり、全く違うタイプではあるが、ものごとの筋を通す人物のようで好感が持てる。そして、桂場と穂高を相手にスッキリはしないけれどハッキリはしたと笑顔で語るトラコの清々しさよ。

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明律大学女子部法科への進学、
「お母さんを説得する!お母さんは説得される!」キャッキャする父娘を、絶対無理だろという顔で見つめる優三(仲野太賀)に大笑いした。

あまり学をつけすぎてもお嫁の貰い手がなくなる。学校の先生でさえ、この認識であった。もちろんそれは、生徒を思ってのこと。世間一般的に責められることではなかったのだ。
しかし、猪爪父娘が帰ったあと、一人教室で考え込む先生。ほんの短い場面だが、先生自身、どんなに優秀であっても進む道が結婚のみだという「世間の常識」に思いがないわけではないことが伝わる。よい演出であったと思う。

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猪爪父娘が歩く道に、乞食が座って頭を下げている。おおっと!と直言(岡部たかし)が避ける以外、特別にクローズアップはしない。しかし、画面の端々に無言でこうした人々を配置する制作を信頼したい。これらがすべて、第1話の日本国憲法第14条に繋がっていくのだろうから。

花江ちゃん(森田望智)の「どんな道でも、女が好きな道をゆくのは大変なのよ」。朝ドラヒロイン・寅子の進む道は視聴者に応援される。しかし当時の女の子にとっての当たり前の幸せを追求する子にだってその権利はあるし、それも尊重されて然るべきだという……。フェアだ。

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15分間が密で、一回ごとの満足度が高い。いいよー、虎に翼!

(つづく)


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