私の足は、死にそうな人がいても動かなかった
旅行先へ向かう車の中、私は助手席に座ってガイドブックを眺めていた。ふと運転している人の「えっ」という声とともに車が止まったので顔を上げると、道路の真ん中に、黒い部品のようなものが落ちていた。視線を右にずらすと、対向車線は少し渋滞しかけていて、渋滞の原因を作っていた先頭の車はちょうど私たちの真横に停まっていた。その車からおじさんが出てきて後ろ側に回り込んでいたのを寝起きの頭でボーっと眺めていたんだけれど、しばらくして、事故が起きたんだと理解することができた。原付バイクが横転して