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薄紙を重ねるように

96才で天国からのお招きに応じられ、
突如そちらの世界に旅立たれた方がいらっしゃいました。

某保育園の理事長をされていました。
にこにこあおむし人形劇団をとても好きでいてくださり、
私たちのような名も無い存在の人達が、
元気に明るく活動している社会がとてもいいのだと、
この活動に太鼓判を押してくださいました。
お年がお年なので、毎回私たちのことを忘れてしまいます。
まずは自己紹介から始まり、公演が終わってから1時間ほど
理事長と雑談をするのですが、
私たちが落ち着きがないので、
いつコーヒーを倒すかといつも心配されていました。

その理事長がいつもおっしゃっていたのは。

「こども時代の楽しいことはね、薄紙を1枚1枚重ねて、積み上げていくようなもの。あまり記憶には残らない。たった一度の悲しいことやつらいことで、それは一気に壊れてしまう。その衝撃の方が記憶に残る。けれどそれでもまた1枚目から積み上げていく。それが大人の仕事なんだよ。こども時代にこの1枚1枚を積み重ねていたかどうか。それがあるかないかで、思春期の様々な壁の乗り越え方が変わってくるんだ」

この言葉が骨に染みついています。
あちこちで伝えています。

名も無いような人達があちこちで薄紙を積み重ねている。
その活動は目にはあまり入ってこない。
キャッチされない。
でも、確かに存在していて、誰かを助けているのです。

お金にはならない、無償の愛情の積み重ねで
それは誰か顔の知らない人だったり、
すぐ隣の人だったりするのだけれど、
実は、そういうものでこの世は成り立っている。

制度とか法律とかもそりゃあるけれど、
そこに到達し、それを使いこなし
その上の自分の生活を射止めるまでには
たくさんの無償の愛に囲まれないと到達しない。

一人が助けられる人数には限りがあり、
助けられない人の数は、無数。
助けられた人数よりも
助けられなかった人数やその顔が浮かびます。
「なぜ助けてくれなかったのか」と
彼らは一生問いかけてくるのです。

そして、助けてほしい方も、
絶対に助けてくれる人に出会えるかどうか。

ちょっと話がずれました。

とにかく。
続けるしかないよね。

目的など、ないよ。
到達点もない。
こどもたちが目的なくただひたすら楽しいことを積み重ねているように、わたしも積み重ねるだけ。

「きちんと積み重ねていくこと」をしていれば、
自分の内側を鍛えられる。
楽しいことが積み重なっていけば
優しい内側を育てることができる。

悲しいこと、つらいことはその都度起きるかもしれないけれど
言葉に刃を持たせたり、
威嚇したりしなくても
きちんと自分を保って乗り越えることができる。

そして
「助けて」という言葉に
たくさんの人が冷静に自分事として受け止めて
動いてくれることに気が付くのです。

薄紙を重ねていく。
淡々と。ひたすらに。
そうやって生きていく。

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