京王線にはいくつかダイヤのボトルネックとされている点があるが、その一つが調布駅だった。京王線と多摩線という2大幹線が分岐する駅でありながら、昔ながらの平面交差が残る構造は、きっと歴戦のスジ屋さんの頭痛の種だったであろう。この調布駅を含む区間の地下化が2012年夏に実施された。地下化直前の様子と、地下化当日の様子を振り返ろうと思う。

これが地上時代の調布駅である。2面4線の駅の先で、京王線と多摩線が分岐していた。下りホームから撮ったこれらの写真はある程度普通の光景に見える。京王線はまっすぐ進み、多摩線は左に曲がっていく。同時発車もできて、本線支障もない構造。休みなく行き来する列車が見ていて飽きない駅だった。

一方で上り列車の入線は結構激しい。京王線の列車が1番線に入りながら、多摩線の列車が下り本線を支障しながら2番線に入ってくる。この間、下り八王子方面は当然出発することはできず、実際のダイヤでは、八王子行きの発車を待つ多摩線の新宿方面行きの姿が見られた。同時入線を上りホーム先端から見ると、圧巻の一言だった。

そして迎えた地下化当日。真夏の日差しのもと様子を覗きに言った。国領、布田の地上駅はすでに立ち入り禁止となっていて、この夜に線路の切り替えが無事終わったことを知らせていた。廃線になったわけではないが、昨日まで多くの人が乗り降りしていた場所に人がいない風景。役目を終えた駅の姿は、夏の終わりという季節感にどこかマッチしていた。

地下に入る勾配の部分では、工事こそ終わっているもののまだ作業は続いている様子だった。作業員が大勢いる中、真新しい地下トンネルから出てきた準特急列車。開通初日感があっていいね。

要衝・調布駅にいつも響いていた踏切の音は、もう聞こえることはない。封鎖されておりながら、レールはまだ錆びることなく光っているところに、昨夜まで京王線を支えた証を強く感じさせる。分岐駅としての役割は、この足元に完成した
躯体に譲り渡された。

地下化された調布駅。2層構造になっており、上りと下りがそれぞれ京王線と多摩線と分岐する構造になったことで、平面交差は解消された。非常にシンプルな構造になったと言っていいだろう。地下に埋めた京成青砥駅みたいなものだ。真新しいホームに、これまで同様ひっきりなしに列車が滑り込んでくる風景は、調布駅らしさが感じられた。