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一杯500円のコーヒーに込める働く主婦マインド

喫茶店文化の息づく東海地方出身の私は、モーニングもピーナツさえもついていないコーヒーが、一杯500円だとしたら「あんた何様なの!?」と脊髄反射してしまいます。

もちろん、銀座の一等地にあるカフェだったら、有名ホテルのラウンジだったら、高い地価や一流のサーヴィスやなんやらで、500円どころか2,000円近くでも驚きません。(行くかどうかは別にして。笑)

じゃあ、地方のそれほどメジャーではない観光地(いわゆる田舎と言われる場所)で、競合店はなく、「はぁ、歩き疲れちゃった。あ、ちょっと外観の素敵なカフェがあるからあそこに寄ろうよ!」で入ったお店のコーヒーが500円だったらどうでしょう?

脊髄反射的には「ぎゃっ!高!!」であり、ちょっと冷静?になって「観光地価格か〜」と自分を妥協させます。まぁ、人が少ないから単価が上がってしまうというのもあるかもしれません。(そもそも売り上げが上がらない)

そんな観光地のカフェで専業主婦からパート勤務をはじめた友人がいます。お洒落な古民家改装カフェは都会にはないゆったりとした空間。広い店内、居心地の良いソファ、窓に広がる緑に癒される。(全て想像ですが。汗)

でも、そうした環境があったとしても、田舎で”一杯500円のコーヒー”は高い。

そう感じた友人。だからせめて、ごくごく丁寧にコーヒーを焙煎していれて、いつもとびきりの笑顔でサーヴィスを心がけているそうなんです。

彼女は幼い子どもがいるから、シフトにガンガン入れるわけではないし、結構な繁忙期にも、帰省のためにお休みをいただかなくてはなりません。それに、他のスタッフよりも年齢は高め。だから「もし他にいい人がいたら、クビにしてもらって構いません。」といつも伝えているし、長めのお休みをいただく時には、必ず菓子折りを持っていくのだそう。

それでもクビにしないで、むしろ彼女を重宝しているオーナーの気持ち、なんだかわかるなぁ。だって、その店が提供する商品(=一杯500円)の付加価値を、誰に教わらなくても十分に理解していて、それを体現するサービスを自然に提供できているのですから。

表面の冗談っぽい言葉とは裏腹に、内実はとても謙虚で、オーナーのシフト組みや経営の大変さも理解し、その気持ちに寄り添おうとしている、彼女。

長らく経理系の仕事に従事し、仕事がデキる系の友人でした。そんな彼女がもし「接客業なんて本当は嫌なんだけど、時間的にこの仕事しか合わないから仕方なくやっているんだよね。」的なマインドで働いていたら、周りとの軋轢を産んでいたでしょうね。でも「こんなに制約のある私を雇ってくれてありがとうございます。せめて恩返しをば〜」という心持ちだから、重宝されたんじゃないでしょうか。

実は彼女、ハローワークのキャリアカウンセラーから「あなた、時間的に無理をしても、いま事務の仕事に復帰しなきゃ、これ以上年齢が上がると絶対に戻れないわよ。」「年齢が上がってもずっとカフェだと、子どもが大きくなったら思ったようには稼げないわよ」と、ごくまっとうに?脅されたそう。(いや、社労士の私も同じこと言います、というか言っちゃいました。)

それでもあえて、彼女なら大丈夫だって思います。確かにキャリアの断絶、キャリアブランクってしんどいです。それは自分自身で実証済み。けれど、「働く」において、重要な位置を占めるのは”マインド”であり、”姿勢”なのではないかとも思えるのです。また、少子高齢化時代における地方というのは、本当に人手不足が深刻化していて、裏を返せば”チャンス”でもあります。

つまり、経営者のことを考え、謙虚な姿勢で、しっかりと仕事に向き合うことができれば、仕事によっては、地方においてプラス5年のブランクはそんなに変わらない。また、接客業という仕事がむしろキャリアもなる。

「人間性を磨く」ことができているから、彼女だったらAI化にも対抗できるんじゃないかなぁと、密かに思っています。


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