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劇場版「サザエさん」シリーズについて

とりあえず、noteというもので記事が書けるという話で、昨年Amazonプライムの配信で見れるようになった、江利チエミ主演の東宝、宝塚映画製作のサザエさんシリーズについての記事を書くことにした。

これら文章は、過去に書いた同人誌の記述を元に大幅に加筆している。

そう、昭和の時期、江利チエミがサザエさんの代名詞だったことがあったそうだ。
江利チエミ…といわれても私の世代で既にピンと来ないだが、それは1982年にわずか45歳でこの世を去ったから、というのもあるだろう。
彼女はジャズの名手で知られる人気歌手で、美空ひばり、雪村いづみと並ぶ3人娘の一人だということに気づけば、その凄さは理解できるだろう。
彼女は1956年から1961年の東宝、宝塚映画の映画シリーズと1965年から1967年のTBSのテレビドラマ版でフグ田サザエ役を演じている。
その後、江利は舞台でもサザエさんを演じているので、本当に息が長い。
ちなみに、私のリアルタイムの記憶でおそらく江利チエミのサザエさんを見たのは、件の舞台のテレビCMのモノクロ写真だと思う。生身のサザエさんの写真が出ていて、実写サザエさんが存在することを知った。今にして思えばそれは予告というよりは告知だったと思う。
江利チエミという当時の人気歌手にサザエさんを演じさせる発想は、少しあとの映画「モスラ」でザ・ピーナッツに小美人(妖精)を演じさせる発想に繋がるというか、歌謡映画的な側面はある。

そう、このシリーズはダーク・ダックスが近所の御用聞き役で出てきて、下手をするとサザエさんに便利に使われてしまうとかいう、ずいぶんととちくるったミュージカルであるが、高島忠夫とのダンスとか歌唱パートも見所である。
また、このシリーズでは7作目までサザエが結婚しない。
ずっと磯野サザエのままなのだ。マスオとの恋愛を繰り返し、タラちゃん登場はなんと8作目である。
その思いきった展開に面食らったが、作者の長谷川によると、サザエの結婚は早すぎたのではないか、とファンから言われていたそうで、その点を鑑みれば、これはもうひとつのあり得たサザエさんの世界であるともいえ、この恋愛路線は支持されたのだ、でなければ10作も制作されなかっただろう。
そういった点からすれば、後のドラマ「おくさまは18才」や「のだめカンタービレ」等に先駆けた漫画原作の女性ドラマの先駆けに位置付けることもできる、ような気がする。
もっとも、アチャコや由利徹、柳家金語楼といったキャストを見る限り、喜劇映画としての色彩も強い。
また、人物設定をかなりいじっており、ノリスケがサザエより先に結婚したり、細かいところを見るときりがない。原作と同名のキャラが違う設定で出たり(タイ子がマスオの妹に…ただこの辺はキャラ変更というより名前が別キャラに割り当てられた感も)。

反面、キャラクターの造形というか印象は後のアニメ版よりも原作寄りであるが、恋愛映画だからマスオとノリスケはイケメンであり、そこはご愛敬。ただ、マスオ役は東宝特撮映画「モスラ」や「マタンゴ」の小泉博氏であり、彼の優しい雰囲気はでている。
特に1作目の1956年の「サザエさん」はかなり初期原作の世界観を再現しており、アニメ版が後期原作を下敷きにしているのと対象的である。
もっとも、先ほども書いたとおりサザエとマスオの恋愛がメインなので、見ていると山場が別の異性が登場してヤキモキというのが4作品で連続するとなんとも。
あと見せ場としては、東宝作品なので特撮映画の常連がやたらと出る。
平田昭彦と志村喬という「ゴジラ」の芹沢と山根というねらったような(偶然だと思うが)キャスティングもある。もっとも先述のダーク・ダックスや、大村崑、藤田まこと、「がんばれ!!ロボコン」で知られる由利徹といった東宝特撮とはあまり縁のない常連キャストもいる。
また、7作目「サザエさんの結婚」、8作目「サザエさんの赤ちゃん誕生」まで来て、よく知るサザエさんになるかと思えば、9作目「サザエさんとエプロンおばさん」で別の長谷川町子作品「エプロンおばさん」とのコラボが始まるのである。いや2作目の「続サザエさん」のイササカさん登場は原作でもあったコラボだ…といわれてもアニメ版でレギュラーだから最早他の作品からのキャラだとは知る人のほうが珍しいか。
更に、エプロンおばさんを継続登場させた10作目「福の神サザエさん一家」でシリーズは幕を閉じる。若い娘だったサザエが、仲人を務めるまでに成長したといえるのかも知れないが、その成長はファンが望んだものだったのかは疑問であいる。
ただ、これら作品はソフト化されておらず、上映会や2016ー17年のCSでの放送という機会でようやく視聴できたもので、なかなか見れるものではなかったが、Amazonプライムの配信でようやくみれるようになった。

さて、映画が見れたなら、TBS製作の1965年版ドラマも気になるところ、これについては私自身が生まれていないので未見である。
こちらのドラマ版では江利チエミのサザエと清川虹子の舟はそのまま続投し、映画シリーズにも別の役で出演していた森川信が波平役と、大方映画シリーズに近いものであったことは想像できるのだが、マスオがドラマ版では役所の役人だったり、磯野家の所在が三軒茶屋であったりするらしい。
更にいえば、根本的に「映像が現存しない」らしく、それが昭和46年、つまり放送終了から僅か4年しか経過してない1971年の「中国新聞」で言及されているのだから絶望的である。
ちなみに件の記事は、5月8日の「ビデオ・テープの行方」という記事で再利用価値の下がった古いモノクロ作品はもう見れない、という話のなかで触れられているのだ。
まあ、サザエさんの場合再放送の放映権の高さやソフト化自体を行っていない点を鑑みれば、確かに一番再利用価値が低く、保存自体が無駄と判断されるのかもしれない。
とにかく、見れないものをとやかく言っても仕方がないが、こちらも映画版のように、サザエの恋愛、結婚を順に描いた作品らしく、1969年のアニメ版もこのドラマ版を一部参考にしたといわれている。
とりあえず、配信で見れるようになった映画版の紹介をnote記事にしていきたい。

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