#nf3Note 沢村賞から派生させた「下柳賞」を選考してみる遊び

大晦日に出す話題でもないんですが今年中に供養したいもので。

今年もオフシーズンに入り、さまざまな表彰が行われました。
その中で「今シーズン最も優れた『先発完投型』の本格派投手に贈られる」沢村賞の発表が行われ、大野雄大(中日)が選出されました。
5連続完投勝利を含む10完投、防御率1.82、勝率.647と沢村賞選考基準7つのうち3つを満たし初の受賞となりました。
先発で3項目を満たしたのは大野雄大のみであり、この受賞は妥当と言っていいでしょう。

ちなみに今年は143試合から120試合に試合が減少したのですが、基準に変更はなく、堀内恒夫選考委員長は「数字的には例年より低いのは間違いない。普通の選考基準なら該当者はいません」と明言しています。

ちなみに昨年2019年は19年ぶりに「該当者なし」となったことにより、
沢村賞のあり方について議論が巻き起こりました。
本来のQSとは異なる「先発で7回以上3自責点以下」という「沢村賞式QS(日本版QS)」も参考にするとしていますが、昨年の記者会見上で堀内氏は以下のように発言しています。

「野球のシステムが変わってきて、非常に完投しにくくなっている。ですからクオリティー・スタート(QS)という項目を参考に入れている。でもこれを(選考基準に)入れるほどレベルを下げていって、完投なしでもいいとなると、沢村さんの名前に傷をつけてしまうような気がする」

現代野球では投手の完全分業制がほぼ確立されており、どのチームも7~9回を1回ずつ任せる勝ちパターンの継投が確立されているのが主流です。
ですので、現代の先発に求められていることは

「最低限5~6回まで試合を作る」

であるように思います。
ですので、沢村賞で求められるような項目を満たせるような先発投手が減少傾向にあるのは致し方ないように思います。

さて、そこでふと考えました。

先発完投型投手を表彰する「沢村賞」があり、その選考対象が減少傾向にあるのだとしたら、上記で述べた現代野球に求められる「最低限5~6回まで試合を作ってくれる先発投手」に贈る賞というものも考えてみても良い時期なのではないでしょうか?

というこじつけから

「長いイニングは期待出来ないが最低限5~6回まで試合を作ってくれる先発投手に贈る賞」

を考えてみたいと思います。

さて。
この条件を満たす投手で、すでに引退している選手と言ってすぐ思い浮かぶ投手がいるのではないでしょうか?

・完投はあまり期待しない
・6回くらいまで確実にイニングイートしてくれる
・しかも最多勝まで取っちゃった

そう、あのルパン…もとい、あの投手です。

「下柳剛」

1991年に当時のダイエーに入団。
「アイアンホーク」と呼ばれるタフネスぶりで中継ぎとして60試合近くを投げ、1996年に移籍した日本ハムでも左のリリーフとして活躍。
2000年から先発に転向した後、2003年に阪神に入団。10勝を挙げリーグ優勝に貢献します。
そして彼の最大のハイライトと言えるのが2005年のピッチングです。

24試合に先発登板しましたが、7回以上投げたのはわずか2試合。大半が5~6回までの投球でしたが、概ね3失点以下でまとめる老獪なピッチング。
さらに、リーグトップの得点力を誇る打線と「JFK」という強力なリリーフ陣に支えられたことで確実に勝ち星を重ね、結果として史上二人目となる
「規定投球回数未達での最多勝(15勝3敗)」を獲得することになります。

JFKの存在が大きく、「6回まで大崩れしなければ勝てる」というタイガース独特の事情による起用法という側面もあったと思いますが、先ほど述べた「最低限5~6回まで試合を作ってくれる先発投手」像にこれほどぴったりと当てはまるOB投手は他にいないのではないかと思います。

ということで、私の独断と偏見にて、

長いイニングは期待出来ないが最低限5~6回まで試合を作ってくれる先発投手に贈る賞」

「下柳賞」

と命名することとします。異論は受け付けません。←

ではここで「下柳賞」の選考基準を整理します。

・先発で18試合以上登板していること
→エース級だと概ね年間24~25試合登板しているので、その7割程度の18試合以上先発登板を基準とします。
ただ、今年2020年に関しては120試合(例年の約8割)となっているため、18試合の約8割で「15試合以上」とさせて頂きます。
・先発で「5回以上6回以下の投球回で3自責点以内」の登板数の割合が最も多い投手を「下柳賞」に選出する
→QS(クオリティ・スタート)の基準(先発6回以上で3自責点以内)を参考としましたが、6回以上も含めてしまうと「下柳賞」ではなく「沢村賞」を狙える投手も含まれてしまうので「5回以上6回以下」という制限を設けました。この「5回以上6回以下の投球回で3自責点以内」の投球を便宜上
「下柳スタート(SS)」と呼ぶこととします。

まとめると

「先発18試合以上登板(今年は15試合)で下柳スタート(SS)率が最も高い投手を下柳賞に選出する」

ということになります。

さて、無駄に前置きが長くなりましたが、いよいよ2020年の下柳賞を発表したいと思います!

誰だと思いますか?(多分想像通りだと思います)

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ということで2020年の下柳賞は19年目のベテラン石川雅規(ヤクルト)が受賞しました。おめでとうございます。
今季は先発15試合で2勝8敗と不本意なシーズンとなりましたが、15登板中10試合でSSを記録。打線の援護の巡り合わせが悪く勝ち星に恵まれませんでしたが、軒並み先発陣が崩壊したヤクルト投手陣の中でベテランとして奮闘していたことが浮き彫りとなる下柳賞受賞と言えるのではないでしょうか。

2位は濵口(DeNA)、3位は岩下(ロッテ)となりました。
濵口は突然崩れることも多いので6回前後・100球前後での交代が多かったこと、岩下も過去に右肘の手術をしてるので概ね100球で交代していたことが要因であるように思えます。

ということで今回は下柳賞について考察して遊んでみました。
TOP10のメンバーを見ると「エースとは呼び辛いがローテを1年回してくれた中堅~ベテラン投手」と「本当は長いイニングを期待したいが投げ切れてない・大事を取っている若手投手」に分かれる感じがします。
「下柳賞」としては前者を讃えたいのですが、この賞にどこまでの価値があるかは、今後の選出状況を見て行かなくてはいけないのかなというところではあります。
来年以降も思い出したら選考をしてみたいと思います。

では最後に、2005年以降の歴代の「下柳賞」受賞者を見てみましょう。

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2005年下柳剛の下柳スタート率は79.2%(24登板19SS)とぶっちぎりの数字でした。さらに2007年にも再度受賞しており、その際も70%を超えるSS率を達成しています。さすが本家…。
注目すべき点はいろいろあると思いますが、私が注目したいのは2008年のウッド(横浜)です。

この年のウッドは26試合で3勝12敗 防御率4.69という散々たる成績で1年で退団することになります。しかし94敗を喫したベイスターズの中で26試合の先発は最多であり、下柳スタート(SS)のレンジで判断すると26試合中16試合でSSを達成しており、それなりに試合は作ってくれていたようです。
このような隠れた? 貢献を確認出来るのもこの下柳賞の面白いところかもしれませんね。

では今年はこれまで。
皆様良いお年をお迎えください。

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