#nf3Note ぼくとやきゅうとらいおんず -エピローグ-
こう結んだのが2019年11月4日のことだった。
娘は当時幼稚園の年中さん。5歳である。
来年は年長さんになる。いきなりフルで見るのは難しいからまずはデーゲームを途中まで観させて慣れさせて行こう。その結果、野球に興味を持ってくれたらなにより。
もちろん、最初に連れて行く1軍の本拠地球場は、私が野球と出会った
「西武ライオンズ球場」
メットライフドームにする。そう計画していたのだった。
しかし、その夢は強制的に封印されてしまった。
COVID-19。
スタジアムから歓声が消えることを余儀なくされた。
全プロ野球ファンにとって辛く悲しい時間。
娘をどうやってスタジアムデビューさせようか。
そんなことを考えることすら許されない時間が流れていった。
まさか、2年もそんな状況が続くなんて。
娘は、イベントが悉くつぶされるつまらない年長さん時代を終え、
去年の春に小学1年生になった。
コロナ禍などどこ吹く風で毎日楽しそうな小学校生活を送ってくれているようで、父親としては胸をなでおろしている。
2022年3月21日。春分の日。
妻は休日もパートに出ることがある。この日もパートに出るということで私と娘とで過ごすことになった。
さて何をしようか。
ふと、オープン戦の試合予定を眺めてみた。
西武vsヤクルト。ベルーナドーム13:00開始。
ここで、封印していた夢の扉が開いた。
「娘を、西武ライオンズ球場で観戦デビューさせる。」
3月21日はオープン戦の最終日である。
オープン戦であれば収容人数は少ないので、リスクは多少低くなる。
コロナ禍は、正月明け~2月に掛けてのオミクロン株大暴れの時期に比べれば多少落ち着いている。
もちろんまだ予断を許さない状況であることに変わりはないが。
それに、コロナ禍の状況での球場観戦の様子を観ておきたいという思いもある。
「娘ちゃん、これからライオンさんのお家行くか?」
「うん、行く!」
詳しくは書かないが、ベルーナドームまではドアtoドア(電車)で約3時間かかる。そんな長旅を娘にさせたことがなかったのだが、Switchを最近買ったのでそれを持っていけば凌げるかな…。
本当は車で行きたいがガソリン代高い…。
そんなわけで、電車での大移動。
詳細は割愛するが、最終的に多摩湖駅からレオライナーに乗る形となった。
「娘ちゃん、普通の電車と違うでしょ?」
「うん、面白いね~」
ゴムタイヤで走る電車に娘も興味津々であった。
「ここは昔アイドル共和国っていうのがあってな、ジャニーズのタレントがショーをやってたりしたんだよ」
「へー、パパはこの辺のこと詳しいんだね~」
「そら昔腐るほど来てるからな」
「クサイほどきてる?」
「腐るほど、ね」
長旅を終え、ようやく西武球場前駅に到着した。
改札からの風景は昔とは様変わりし、色々な建物が出来ていた。
まだチケットを買っていなかったので、まずはチケットを買う。
(会員証みたいなの作らないと買えないことを知らなかった)
そして何より大きな変化は、ゲートが中央に統一されたことだった。
昔は1塁側、3塁側それぞれにゲートがあり、双方を行き来することが出来なかったのだ。
検温、荷物チェック等々を終え、ようやくスタンドへ。
ブロックの番号を勘違いしてて迷ったがなんとか到着した。
試合はすでに始まっていた。
2回だったか。
西武応援団が旗を振る応援を始めた。(チャンテの名前忘れた)
「ほら、ああやって旗振って応援するんだよ」
「えーいいなー欲しい」
見たものは何でも欲しがるお年頃である。
まあ初観戦記念ってことで買っておこうか。
たまたま900円の旗が500円で売っていたのでとりあえずこれで。
3回。その時は来た。
源田壮亮の3ラン。
年間1~2本しかホームランを打たない男の、しかも3ランを観るという幸運(通算12本中3ランは1本だけ)。
満を持して旗を振る娘。
そして4回も外崎の犠牲フライで1点追加。
さらに旗を振る娘。
オープン戦なので進行が早く、14時30分くらいで5回が終了していた。
さすがにこれ以上いると夕飯に間に合わなくなるし翌日娘は学校である。
今日はあくまで球場の雰囲気を味わってもらうのが目的であるため、この辺りで退却することとした。
「えー、もう少し居たかったなー」
旗振りがよっぽど楽しかったのか。はたまた野球自体に興味を持ちつつあるのか。
まだわからないが、後ろ髪を引かれる思いを持ってくれたようだ。
帰りにグッズショップに寄ってみた。いろいろ眺めていたが、せっかくなので娘の1軍本拠地初観戦の試合で野球の華であるホームランを見せてくれた源田壮亮のグッズを買おう。ということで源田の下敷きを買った。
小学1年生で源田の下敷きを使ってたら、野球好きの男子から見たらずいぶん通な子だな、と思われそうだけど。
ともあれ、これで今日のベルーナドーム行脚はおしまい。
帰り道。
「娘ちゃん、面白かった?」
「うん、また来たいね~」
「そうか、今度はツバちゃんのお家(神宮)にも行こうな」
「うん、そうだね」
今回のベルド行脚は、私の野球のルーツと娘の野球のルーツを紬ぎたいという完全なる親のエゴからの行動でしかなかった。
でも、最後に娘が「また来たい」と言ってくれた。
何か報われた気がして、うれしく思った。
コロナ禍が落ち着いたらたくさん球場に足を運ぼうと思う。娘と一緒に。
ようやく彼女を歴史の1ページ目に立たせることが叶った。
これから家族みんなで野球の歴史をたくさん刻んで行きたい。
そう願っている。
もっともっと、野球を好きになってくれたらパパはうれしいです。
野球はいいぞ、娘よ。
おしまい。
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