#nf3Note #すごい選手がいるんです セイバーの楽しさを教えてくれた男・魔将ガイエル

球春あけましておめでとうございます。
まだまだ油断してはいけませんが、とりあえずここまで来れたことに対して関係者の皆様に本当に感謝したいですね。

さてそんな開幕の日に、私にセイバーメトリクスの魅力に気付かせてくれたある選手について、改めてまとめてみたいと思います。
今年の nf3 ( http://nf3.sakura.ne.jp/index.html ) のスローガンは

「Hooked on. ~データで、ハマれ。~」

です。1人でも多くの方にデータに「ハマって」頂き、またデータによって仮説が「ハマった」喜びも感じて頂けるように頑張っていきたいと思います。

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2007年のある日、仕事量が減り暇を持て余してた僕と燕党の後輩2人は、休憩所である事象に遭遇し、騒然とした。

「は?! 1番ガイエル??」
「ターフルとうとう狂ったか?!」
「打率1割台で1番ってどういうことだよ!」

2007年4月26日、古田敦也監督率いる東京ヤクルトは驚愕のオーダーを発表した。それまで打率.180 1本塁打 4打点と助っ人としてはまるで結果を残していない(ように見えた)アーロン・ガイエル1番に起用したのだ。

2007/4/26のスワローズオーダー
(右)ガイエル
(遊)宮本
(中)青木
(左)ラミレス
(一)畠山
(三)度会
(二)城石
(捕)福川
(投)グライシンガー

今から13年前のことである。NPBにおいてセイバーメトリクスの考えはまだ浸透していない頃であり、「打率1割台の1番とかナンセンスにもほどがある」という見方が大半だっただろう。
※「野球の見方が180度変わるセイバーメトリクス」が2008年3月発行なので、セイバー前夜とも言える状況だったと思う。たぶん。maybe。
https://www.amazon.co.jp/%E9%87%8E%E7%90%83%E3%81%AE%E8%A6%8B%E6%96%B9%E3%81%8C180%E5%BA%A6%E5%A4%89%E3%82%8F%E3%82%8B%E3%82%BB%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%82%B9-%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%A0/dp/4796662685

しかし、今となってはある程度説明が付く。
実はガイエルは、この時点(07/4/25)では打率.180であるが、成績を詳細に見ると…

画像1

なんと出塁率が.390もあるのだ。
安打数が11に対して四死球が21。IsoD(出塁率-打率)が0.210
もちろん打席数が少ない故の話ではあるのだが、IsoDは0.100以上であれば選球眼が良いと(ざっくり)判断されるものであるから、0.210なんて数字は異次元と言える。
ただ、長打がたった2本であるが故、長打率が.246と低空飛行のため、結果としてOPSで見ると.636とあまり高くない数値に落ち着いてしまっている。

当時の古田監督がどこまでセイバーの考えを知っていたかはわからないが、少なくとも「出塁率が高いから一度1番にしてみよう」と考えたことは間違いないと思う。でなければガイエルを1番にしようなんて考えないと思う。

さて、この後ガイエルは9試合連続で燕の1番打者を務めることになるが、この起用が功を奏した? のか、1試合2本塁打を記録するなど

35打数11安打 3本塁打 5打点 7四死球
打率.314 出塁率.429 OPS1.029

と見事に復調。
さらに5月の月間成績は打率.294 8本塁打 OPS1.017まで跳ね上がり、その実力を如何なく発揮することとなった。

その後も、好不調の波はあったものの、途中からラミレスに代わり4番を務めるなど、最下位に沈んだスワローズの主軸として活躍した。
最終的に2007年は打率.245リーグ32位ながら出塁率.381でリーグ4位。23死球は歴代3位(当時は2位)、IsoD0.136リーグ2位(1位はタイロン・ウッズ)と、データ好きの心をくすぐる成績を残してくれた。
また、古田監督の引退試合での魔空間ランニングホームランなど、愛くるしいキャラクターと合わせスワローズファンの記憶に残る助っ人となった。

2020年プロ野球がいよいよ開幕する。今回紹介したガイエルをはじめ、四球数が安打数を上回った2014年のアンドリュー・ジョーンズや、得点圏打率が低いが出塁率が妙に高いので1番に起用された2017年のT-岡田など、今年もデータ好きのハートをズキュンと射抜いてくれる選手が登場することだろう。
野球がある毎日が戻る喜びを噛みしめながら、そのような選手の登場を心待ちにしたいと思う。

今回はここまで。

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