#nf3Note 2023年度「下柳賞」発表!

○今年もいつもの口上から。

2023年のプロ野球は阪神タイガースの38年ぶりの日本一で幕を閉じました。
アレという旗印? のもと、チーム一丸となって勝ち取った2度目の栄冠。
タイガースファンの皆様おめでとうございます。

さて、シーズンも終わり様々な表彰が行われました。
その中で、最も優れた先発完投型投手に贈られる「沢村栄治賞(沢村賞)」の発表が行われ、山本由伸(オリックス)が3年連続で受賞しました。

その中で、毎年のことですが、選考委員から対象となる「先発完投型」の投手が減っていることが指摘され、中4日などフル稼働で登板を続けたバウアー(DeNA)に対して賞賛する意見が出されました。

>堀内委員長は「目からウロコが落ちるとはこのこと。アメリカのスタイルを持ってきた。(日本で主流の)中6日で100球では勝てるピッチャーも勝てない。いい見本が来たなと、もろ手を挙げて賛成してます」と絶賛した。

https://hochi.news/articles/20231030-OHT1T51172.html?page=1

>山田久志委員も「メジャー方式なら途中交代という試合もあったが、彼は志願して1試合任せてくれって感じだった。DeNAの先発陣にもいい影響を与えたと思う」と、登板間隔だけでなく、延長10回まで投げた8月3日の広島戦(マツダ)など、長いイニングを投げようとする姿勢も評価。「今のシステム(中6日)を覆すチームや指導者に出てきてほしい」と、かつては日本でも普通だった中4、5日でフル回転するエースの出現を願った

https://hochi.news/articles/20231030-OHT1T51172.html?page=1

確かにバウアーの活躍は目覚ましいものがありましたが、ただ中6日のローテーションはピッチャーを甘やかしているわけではなく、投手の故障を少なくし、いつでもベストの状態で登板させるための施策だと思うのですが…。

一方で、今回新任となった工藤公康委員は

「アメリカでは(肘を痛めて)トミー・ジョン手術をする選手が多くなっている」と、故障の増加につながる可能性も指摘した。

https://hochi.news/articles/20231030-OHT1T51172.html?page=1

と、安易な中4日登板について慎重な意見を述べています。

吉井理人監督(ロッテ)や中嶋聡監督(オリックス)のように投手の管理を徹底することで安定した戦いを続けて上位進出をしている現状を鑑みると、今後も沢村賞の基準を複数クリア出来る投手が減っていくことは避けられないでしょう。ただ、かといって沢村賞の基準を変える必要もないとは思います。完投型投手を称える賞というアイデンティティを崩す必要はないでしょう。

そこで考えました。
沢村賞基準をクリアするような「完投型投手」が減っているのであれば、逆に現代野球に求められる
「ローテをきっちり回してくれて、さらに最低限5~6回まで試合を作り、勝ちパターンに繋いでくれる先発投手」
を称える賞を考えてみても良いのではないか…?

ということで、当noteで2020年から勝手に表彰している

「長いイニングは期待出来ないが最低限5~6回まで試合を作ってくれる先発投手」

を表彰する

「下柳賞」

の発表を行いたいと思います。

※なぜ「下柳賞」という名称にしたのかについては2020年の記事を参照

○2023年下柳賞の発表!

では、発表前に改めて選考基準および下柳賞の性格について記載します。

■下柳スタート(SS)について
「先発時5回以上6回以下の投球回で3自責点以内」
の投球を
「下柳スタート(SS)」と呼ぶこととします。

■下柳賞選考基準
 先発18登板以上で下柳スタート率(SS率)の割合が最も高い投手
※SS率(%)=SS/先発登板数

下柳賞の性格
下柳賞には、以下の2つの性格があります。
全盛期を過ぎたベテラン投手が、長いイニングは投げられないが最低限ゲームを作っていることを評価するもの。
育成中のため無理して長いイニングを投げさせてもらえていないが、将来のエース候補として実績を積み上げている途中の若手投手がピックアップできるもの。

ではおまたせしました。
2023年の下柳賞はこちらの投手になりました!

2023年下柳スタート(SS)率TOP10

今年は同率で2人が同時受賞となり、42歳のベテラン和田毅(ソフトバンク)と燕のホープ高橋奎二(ヤクルト)SS率65.0%2023年下柳賞受賞となりました。和田投手さすがのピッチングでした。高橋投手は来年は沢村賞を狙ってくださいね。

和田毅 2023年先発時全投球内容・黄網掛けがSS達成登板

まず今年の和田毅は、定期的な登録抹消で間隔を空けつつも、ほぼ年間を通して先発を全うし、先発20登板中SS13回(QS3回)という安定した投球を披露。先発陣が壊滅的状況であった中で8勝をマークしチームを支えました。
さらにCSでも第3戦で5回無失点の好投を見せるなど、42歳のシーズンとは思えない存在感を残した1年となりました。
小久保ホークスにおいてもチームの重要なピースとして重宝されることでしょう。

高橋奎二 2023年先発時全投球内容・黄網掛けがSS達成登板

一方で侍ジャパンにも選出された高橋奎二は不本意なシーズンだったと言えるでしょう。
和田投手と同様先発20登板中SS13回(QS8回)という内容でしたが、5~6回で100球前後を費やす登板が多く、6回以上投げたくても投げられないような不安定な投球となってしまった印象です。
P/IPが2022年の16.4→2023年17.9、BB/9が3.24→4.16に悪化するなど課題が多く残った1年だったのではないでしょうか。
来年はスワローズの左のエースとしてペナント奪還に繋がるような投球を見せて欲しいものです。

最初に説明した下柳賞の性格から言うと、和田投手が①高橋投手が②の性格に該当すると思います。①はどちらかというと賞賛、②は奮起を促すような感じになるかと思います。キャリアで性格が変わるのもこの賞の興味深いところではあります。

○2023年下柳賞番外編

さて、ここからは番外編となります。
まず、下柳賞のレジェンド? の石川雅規(ヤクルト)の今年の結果を見てみましょう。

石川雅規 2023年先発時全投球内容・黄網掛けがSS達成登板

今季は先発12登板に終わり選考外となりましたが、2試合連続QSを記録するなど先発12登板中SS7回(QS3回) SS率58.3%と高い数字を維持しました。
終盤は打線の援護がなく勝敗が付かない試合が増えてしまいましたが、球界最年長となってもその存在感は健在といったところでしょうか。
来年は18登板まで伸ばせるように頑張って欲しいところです。

そして、最後は前年の下柳賞受賞投手である松葉貴大(中日)を見てみたいと思います。石川投手と同様に先発登板数未達で選外となりましたが、(下柳賞的に)衝撃的な結果を残していました。

松葉貴大 2023年先発時全投球内容・黄網掛けがSS達成登板

今季先発11登板中SS未達成はなんと最後の1登板のみ、先発11登板中10SS(QS1回)でSS率90.9%という驚異的な数値を記録し、ディフェンディングチャンピオンとしての意地(?)を見せてくれていました。
今季も本拠地バンテリンドームでの登板が主となり、5~6回まで試合を作る登板を続けていたのですが、残念ながら打線の援護がなく、勝ち星も伸びることはありませんでした。
来年は34歳のシーズンとなりますが、最低限であるSS達成を続けられるような安定感のある投球を続けて欲しいものです。

ということで2023年下柳賞は和田毅投手と高橋奎二投手が受賞したことをお伝えし、このnoteを終わりにしたいと思います。
来年は和田毅の連覇はあるのか、松葉や大貫らの巻き返しがあるのか、はたまた石川雅規の大復活があるのか?
下柳賞の受賞争いという観点で来年のプロ野球をみてみるのも面白いかも? しれませんね。

では放送席にお返しします。ご清聴ありがとうございました。


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