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イベントに出店する

第8章 本屋を本業から切り離す(4)

 必ずしも場所はいらない。あるいはいずれは持ちたいけれど、新たに場所を借りたり、自分の場所を開いたりするのはまだ、気が進まない。そういう人は、イベントに出店することからはじめればいい。

 近所のフリーマーケットなどでもよいが、お勧めなのは「一箱古本市」と呼ばれるイベントだ。商店街の店の軒先や、どこかの広場に集まり、一人あたり一箱分の古本を販売する。日本全国に広がっていて、ほぼ毎週末、どこかで開催されている。その中のひとつに出店申込をするところからはじめよう。そのときには自ずと、自分の店の屋号を決めることになる。もちろん後で変えてもよいが、ひとりでも多くの人に名前を知ってもらう機会になるので、できるだけひとつの名前で続けたほうがよい。あまりいろんな名前で活動すると、なかなか人に覚えてもらえなくなる。

 いよいよ出店というとき、それが初めての接客経験となる人もいるだろう。客が目の前を通り過ぎ、立ち止まる。声をかけて、あるいはかけられて、話をする。買うか買わないか悩んでいる人に、本について説明する。興味を持ってくれて、買ってもらえた。このときの、特に最初の喜びは大きい。店をはじめるということは、話しかけられる側の人になることだと先に書いた。それには向き不向き、あるいは慣れもある。本を売る、買うという一連のコミュニケーションを経験できることは、イベントに出店する大きな魅力だ。もちろんリアル店舗での接客とは違う部分もあるが、むしろ一箱古本市の、その独特の面白さにはまってしまって、参加できるものを探しては、毎週末のように出店しているもいる。

 また、出店する側に慣れてきたら、運営する側を経験してみるのもよい。一箱古本市は単体で行われることも多いが、ブックイベントの一環として、本に関する他の催しと一緒に開催されていることもある。まずは好きなイベントに、ボランティアの運営スタッフなどとして参加させてもらおう。一箱古本市全体、ブックイベント全体が、その日限りのひとつの「本屋」だ。その運営の一端に携わることには、たくさんの楽しみと学びがある。いずれはその経験をもとに、自分主催のイベントを企画してもよい。

 あるいは、本屋や図書館などでのイベントに携わるという形もある。それぞれの方針によるが、イベントの手伝いを募集していたり、企画の持込を歓迎していたりするところもあるだろう。また、子どもたちへの絵本の読み聞かせボランティアなども、各地で募集している。たいていは講習会があるので、興味があれば初めてでも挑戦してみよう。本の面白さを誰かに伝える活動に携わりはじめたとき、すでにあなたの「本屋」ははじまっている。

※『これからの本屋読本』P290-292より転載


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