八木勇征、小川桜花『黄昏色の人』感想

最初は「フランス映画!?フランス映画か!?もしかしてフランス映画風なのでは!?」と身構えてた、フランス映画苦手マンだったのですが(フランス映画というクソでか主語)別にそんなことなくシンプルな作りでした。
「作為的な孤独は永遠には続かないし、虚無はずっと付き纏うからどうしようね」って話なのかなと思った。自分でも何言ってんのか分かんないけど、とりあえず書いていくぜ。思い切りネタバレしてます!
※女性役の名前がなかったので、中の人の名前で書いてます。

あらすじはめんどいから、各自CLの公式を見てくださいすいません。



いや、八木さん鍵ふつーに使って部屋開けてる時点で「あなた絶対内見じゃなくて日常的に無断使用してるやろ」と思ったものの、そんな彼の日常に飛び込んできたマジレス刺客こと小川桜花。
彼女も日常的に入り浸っていた点では彼と同じ存在に見えるけど、二人の間には埋められない溝がある。

八木さんは、忙しない騒がしい現実から逃避するように、過去の思い出に縋るように部屋を使っていた。
対して桜花ちゃんは一貫して、「とにかく一人にしてくれや」と最早悟りの域、洞窟に篭る坊さんのごとく静寂である。

さらに対比していく。
逃避しているはずなのに、結局は人との繋がりを求めている八木さん。だから酒を勧めたた。だから「会ったこととかあるかもしれませんね」と話した。だから桜花ちゃんが寝てる時、そっと近くに寄った。だから菓子を置いていった。まるで一期一会を重んじたいかのように。彼女との出会いに意味を見出したいかのように。

あえて孤独を選び、虚無に身を置くことで自身の存在を見つめていた桜花ちゃん。
この子はもう二度とこの部屋には来ないだろう。他人が入ってきた時点で、彼女にとってこの部屋はもう無価値なのだ。だから未練もなく、あっさりと部屋を出ている。酒も菓子も受け取らない。だって彼女が求めているのは、そんな人との縁なんかじゃない。
ただ一応お互い成人した身なので、ある程度のコミュニケーションはとってるだけ。

別に前住んでたからここに来ているとかじゃないんだよな多分桜花ちゃんは。偶々前に住んでて、合鍵を作れた空き部屋だったから、己の方針「自分がここにいることを誰も知らない」を真っ当にするに都合が良かったから使ってただけだ。感情的というか合理的に近い。
だからきっと、別にこの部屋があかんかったらさっさと別の居場所を探すだろうし、居場所作り自体あっさり諦めるかもしれないね。そんな「ハイハイ次」ってドライな感じを徹頭徹尾した演技、私は気に入りました。

それと、監視カメラあるなら未来で再現される云々のやつ。
これは桜花ちゃんの「諦念」なのかなと思った。こうやって作為的に一人になっても、結局カメラを介して他人の目線があるなら、それはもう「一人」「誰も知らない」なんてどうせ言えねえだろっていう。
最後の直前の「もし挨拶してたなら、それも再現されますよ」も、彼女にとっては「どうせ未来でそうなるんだろうよ」という一種の皮肉なんだろうけど、八木さんは絶対前向きに捉えて「また会えますよ」的な意味に捉えてそう。てか皮肉であってほしい、そんな優しい意味合いとかいらない(それはお前の好み)

タイトルの「黄昏色の人」、これは紛れもなく桜花ちゃんのことだろう。
「黄昏色の人」に出会って自分を吐露した八木さんは、なんとなく勝手に吹っ切れた気持ちになってそう妄想だけど。ドライな桜花ちゃんに対して、ウェットな演技が得意な八木さんが映えてましたね。

感情が乱れておどおど話す八木さんと、ただ淡々訥々と話す桜花ちゃんの対比がシンプルで良かったです。てか終盤、お菓子受け取ってたら「悟りの境地にいる桜花ちゃんはそんな柔な真似しねえ〜〜〜!!!!」って解釈違い起こしてキレてたかも。しっかり作り込んでくれてありがとう。
あと八木勇征のファンとして何より、序盤から彼の顔面力に頼らず必要な演技と情景のみ映してくれたのも嬉しかった。
八木さん、この調子で次はホラー映画に出ような!!!待ってるぜ!!!!

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