花譜との思い出#0

私が初めて花譜を観測したのはニコニコ超会議のVtuberFesだ。ヒメヒナなど多くの有名Vtuberが参加しており、それぞれ人気のカバー曲を引っさげてライブを盛り上げていた。

そんな中でデビューして僅か半年の花譜が登場する。彼女が最初に披露したのはオリジナル曲の「魔女」だ、ステージに登場しオリジナル曲を歌うと言った彼女に私は心底驚き不安になった。

他の出演者たちは場を盛り上げるために人気曲やアップテンポのカバー曲を歌っており、人気のオリジナル曲を持つミライアカリでさえ1曲目はカバー曲から始めていた。

そんな中で1曲目からオリジナル曲。

直前にステージに出ていた名取さなは3Dモデルの初お披露目も兼ねており大変な盛り上がりだった。

正直当時の花譜の知名度は直前に会場を湧かせていた名取さなや他のVtuberと比べたら雲泥の差だ。

そんな彼女が1曲目からオリジナル……どう足掻いても会場の落差は避けられない。負けイベントだ。千本桜でも歌わないかぎり盛り下がりは必須。新人Vtuberにとって過酷な状況である。



そう思っていた。

だが、そんなことは杞憂であった。

儚げな声で「魔女」を歌う彼女を前に、盛り上がることを良しとしていた会場の空気は一気に変わった。

全員が静かに彼女の歌声に魅入っていた。

衝撃だった…。カンザキイオリさんの作るメロディと花譜の儚げで無垢な声が合わさり神秘的だとさえ思える歌が静かに流れていた。

彼女は純粋に歌の力で会場を花譜の世界に持っていったのだ。

そして次の曲に移る際も多くは語らず「次は自分の本当の最初の曲」とだけ。自分の紹介やトークなどせず歌のみの勝負。バーチャルユーチューバーとバーチャルシンガーの違いを明確に持ちブレない芯を感じた。


そして2曲目の「雛鳥」を歌い終える頃には彼女に魅せられていたのだった。

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