断片小説 火星(後編)

なぜだろう…今、火星から15日間宇宙船に乗って日本に着き、日本を出て海外のすごいところで背広を着ている。
もうすぐスピーチの時間だ。
わざわざ108円ショップで日常会話の本を買って覚えた英語だが、通訳者もいるというので日本語で話すつもりだ。

壇上に上がる時にマリアンがウインクした。

「五年前に今から十五年前にタイムスリップしたとき、十年前の自分に会いに行き、12月のあの日をビデオに撮って来ました。ご覧ください」
15分後、会場はざわめき、やがてシーンとした。

「これが、十五年前の15分の出来事で、10年間悩んだ悩みだと思うと、馬鹿みたいだと思える。あの15分を再確認出来て良かった。以上です。」

何も知らなかった文子は拍手をするマリアンを見つめて、うつむくとなんとも言えない悲しげな表情をした。

火星に行き、タイムスリップまでした太郎は今では火星調査員である。

太郎は15年前はあんなことにならなかったら…とよく思ったが、今では満ち足りた顔付きに変わっていた。


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