見出し画像

自分を破壊した日

忘れたくないことを
忘れてしまいそうで
わたしの代わりに覚えていてくれませんか。


その日まで自分がかわいかった。
その日まで自分が一番だった。

その日から、自分は別の自分を演じることにした。
かわいい自分、一番の自分にさよならして。

「自分は嫌われている」

赤のマッキー(太)で紙に書いて、CDプレーヤーの横に貼る。

自分が嫌われていると考えれば
自分から話しかけることも
怒られて落ち込むことも
思い通りにならなくて悩むこともない。

なんて孤独で、それでいて自由で、空っぽな毎日だろう。
でもそれがわたしの納得できる価値観だった。

「いじめられてる」んじゃない。
「学校で浮いてる」んじゃない。
「自分から嫌われる役になっている」んだ。


ある人は「静かになった」と言い、
ある人は「優しくなった」と言い、
ある人は「丸くなった」と言う。
まるでわたしがそのように変化することを望んでいたかのように。

自分の性格が破壊された跡は、なぜか美しく感じられた。
さよならも案外素敵かもしれない。


自分を破壊したら世界が変わった、ありふれた始業式の日のはなし。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?