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子どもへの冷却ジェルシート使用について

冷却ジェルシートは主に発熱時に額などによって貼って使用する商品で, いろいろな商品名で販売されています.

この商品については効果や安全性の観点から色々な意見があります.
今はインフルエンザは流行している時期ですので, 発熱がみられる時期と言えます. そういった時期には冷却ジェルシートがよく使用される時期だと思われますので, 今回は冷却ジェルシートについて簡単に考えてみようと思います.

背景

発熱時に体の一部を冷やすという行為は昔から行われていました.
水枕・氷枕や氷嚢といったものが昔から使用されているもので, 今も使用されていると思います.
1990年代になって冷却ジェルシートが発売されるようになりましたが, これは従来のものと比べて使うのに特別な準備がいらないため, 手軽に利用されているのではないかと思います.

解熱効果は期待できない

さて, 昔から行われている体の一部を冷やすという行為ですが, これは体温を下げる効果はあるのでしょうか.
結論から言えば「体温を下げる効果は期待できません」.

確かにシートを触ってみると冷たく感じますし, 貼った体の場所がやや冷たくなるかもしれません. ただ, 体温を下げる効果を示すものは特にありませんので, 熱を下げる効果は期待できないと言えるでしょう.

人によってこのような経験をされた方がいるかもしれません.
「夜に発熱していたので冷却シートを貼って寝ていたら, 朝になると熱が下がっていた」
このエピソードは一見すると, 冷却シートが体温を下げてくれたように思えるかもしれません. ただ実際にはそうとも言えません.
別での紹介している話なのですが, 体温には以下のような特徴があります.
・体温は一日の中でも変動する(発熱時でも)
・夜に比べると朝の方が体温は低い(発熱時でも)
従って, 何もしなくても「朝になると熱が下がった」というエピソードは経験しやすいと言えます.
もちろん発熱が改善することはいいことなのは確かですが, それは自然にそうなったと考える方が無難だと思われます.

解熱の目的

冷却シートでは解熱効果は期待できないのですが, その一方で解熱効果が確認されているものがあります. それはご存知の通り, 解熱薬です.

この解熱薬はただ体温を下げるために使用するのではなく, 発熱による体のつらさ(活発さがない, 水分摂取量が減っているなどで判断される)などを軽減するために使用します.
従って, 体温を下げることで, 結果的に体のつらさなどを軽減させようとしています.

そういった観点から考えると, 解熱効果が期待できない冷却シートでは, 体温を下げることでの体のつらさの軽減も当然期待できないと言えます.

つらさなどは解熱してなくても軽減されるかもしれない

ただ効果を考える上ではもう少し考えてもよいかもしれません. それは「体温を下げないと体のつらさなどは軽減されないか」ということです.
体温を下げなくても体のつらさなどは軽減されることはあるかもしれません.

そして, 冷却シートに関してはひんやりしていて, それが気持ちいいと感じることもあるでしょう. この冷たさ, そしてそれによって引き起こされる気持ちの良さが精神的な負担の軽減に繋がって, 一時的にも体のつらさなどを軽減につながるかもしれません.

ただし, これは感覚的なものですので, 効果といっても個人の感想レベルに止まります. 従って, こういった効果があったとしても ,それは明確に冷却シートに効果が期待できる, とは言い難いというのが私の考えです.

安全性の問題

次に安全性の問題です.
一見するとただ冷たいものを貼っているだけなので, 大きな問題は起こらなそうです. ただ, シートが鼻と口を覆って窒息してしまったという事故が発生したことを平成16年に国民生活センターが発表して注意喚起を行なっています(http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20040729.pdf)

こういった事故が発生するリスクがあることから, 海外での製品には「大人が持続的に直接監督して使用すべき」と記載されているものもあります. 
つまり目を離さない(に近い)環境下で使用する, というのが望ましいです.

そうはいっても, ずっと目を離さないというのは実際には難しいです.
したがって, 使用するにせよ見ていられる短時間に留めるなどとするのが無難かと思われます.
特に夜間の寝ている間で貼っておくという方法は, 特に小さいお子さんに対してはやめておいたほうがよさそうです.

まとめ

以上をまとめると, 冷却ジェルシートは
・熱を下げる(解熱)効果は確認されておらず, 期待できない
・気持ち良さが体のつらさを軽減させる可能性はなくはない
・重大な事故が発生するリスクがあるため, 少なくとも見ていられる環境下でのみ使用することが望ましい(特に小さいお子さんに対しては)
というのが私の今回の考えのまとめです.

このまとめから指針を出すとすれば
・発熱しているお子さんに使用するには効果が乏しく必要度が低い. 安全性の管理の観点からも基本的には使用はあまりおすすめしない
・もし使用する場合には, 見ていられる期間のみに限定する
というところではないでしょうか.
(年齢が上がってくると, 安全性におけるリスクは極めて小さくなっていくと推測されます. よって, 成人などでは使用しても別に構わないと私個人は考えています.)

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