ヘルパンギーナ Q&A

ヘルパンギーナはどのような病気ですか?

ヘルパンギーナは突然の高熱特徴的なのどの所見がみられる感染症で, 主に夏に小児を中心に流行します.
発熱などのかぜ症状がみられ夏に流行する疾患はまとめて夏かぜと呼ばれますが, ヘルパンギーナは夏かぜの代表例のうちの1つです.


ヘルパンギーナはなにが原因で起こりますか?

ヘルパンギーナはエンテロウイルスと呼ばれるウイルスの種類によって引き起こされます. エンテロウイルスには多くの種類がありますが, そのうち一部が特に原因となってヘルパンギーナを発症します.
具体的にはコクサッキーウイルスA2, A4, A6, A10, あるいはエンテロウイルス71などが挙げられます.
その時によって流行するウイルスのタイプは異なることが知られています.
流行しているウイルスなどの情報に関しては国立感染症研究所の病原微生物検出情報が参考になります(*1).

*1  国立感染症研究所 病原微生物検出情報


いつごろ流行しますか?

ヘルパンギーナは1年中みられる可能性がありますが, 主にに流行する傾向があります.
ただし, 時に地域的にそれ以外の時期で流行することはあります.


何歳くらいの子どもにみられやすいですか?

ヘルパンギーナは主に5-7歳未満の小児でみられやすいとされています.
時に成人でもみられることはあるため, 注意が必要です.


先日遊んだ子供が, 遊んだあとすぐに熱を出してヘルパンギーナと診断されました. うつったとしたらどれくらいで発症しますか.

潜伏期間は通常3-5日程度とされています(*9)ので, そのくらいの時期には特に注意が必要かもしれません.
もちろん, 多少前後する場合はあります.

*9  Red Book 2015: Report of the Committee on Infectious Diseases


どのような症状が特徴的ですか

症状としては突然の発熱咽頭痛, 不機嫌が多くの場合にみられます. また時々嘔吐を伴うことがあります.

発熱
発熱は高熱となる傾向があり, 40℃を超えることもあります.
また発熱は通常2日程度続きますが, より長くなる場合もあります(*2).

咽頭痛 (のどの痛み)
咽頭痛はのどにできた発疹や水疱・潰瘍といった病変により生じます.
咽頭痛は熱が下がった後も続くことが多く, 通常5-6日続きます(*3).

*2  Herpangina. Clinical Studies of a Specific Infectious Disease. N Engl J Med 1951; 245(8): 275-280.
*3  Clinical and Laboratory Differentiation between Herpangina and Infectious (Herpetic) Gingivostomatitis. Pediatrics 1954; 14: 122-129.


どのような合併症が知られていますか?

発熱に伴い熱性けいれんがみられることがあります.
特に2018年度で流行していたとみられるコクサッキーウイルスA2によるヘルパンギーナでは他のウイルスと比べて熱性けいれんをおこしやすい可能性が示唆されています(*4).

またエンテロウイルス71 (EV71)と呼ばれるウイルスでは中枢神経系の合併症を引き起こしやすいことが知られています. またEV71が原因として多かった時期を対象とした日本での研究では, 5歳以上と比べて5歳未満の小児で中枢神経系の合併症のリスクが上昇していたことが報告されています(*6).

*4  Comparison of clinical features between coxsackievirus A2 and enterovirus 71 during the enterovirus outbreak in Taiwan, 2008; a children’s hospital experience. J Microbiol Immunol Infect 2010; 43(2): 99-104.
*6  Nationwide Survey of Pediatric Inpatients With Hand, Foot, and Mouth Disease, Herpangina, and Associated Complications During an Epidemic Period in Japan: Estimated Number of Hospitalized Patients and Factors Associated With Severe Cases. J Epidemiol. 2018 Nov 10.


どのように診断されますか?

ヘルパンギーナは突然の発熱や咽頭痛, 食欲低下などの症状と, 特徴的な咽頭所見(水疱・潰瘍など)から診断されます.
ヘルパンギーナにはインフルエンザやRSウイルスなどで用いられるような検査キットはありません.


どの様な病気と区別が必要となりますか?

鑑別診断としてはあまり多くありませんがアフタ性口内炎や溶連菌感染症, 手足口病, ヘルペス性歯肉口内炎, 伝染性単核球症が挙げられます.


どのような治療が行われますか?

ヘルパンギーナに対する特別な治療はありません.
喉が痛いなどで食事・水分がとれなくなることがあり, 症状が強いと脱水となってしまうことがあります. そのため水分摂取に注意しつつ, 水分摂取が不十分で脱水となってしまった場合などで必要に応じて点滴が行われることはあります.


予防方法はありますか?

ヘルパンギーナではインフルエンザなどと違ってワクチンはありません.
ヘルパンギーナの予防としては一般的な感染予防方法である手洗いなどが効果があり(*7), 推奨されています.
またヘルパンギーナはエンベロープを持たないタイプのウイルスによってひきこされるためアルコール消毒による予防効果は期待できないことには注意が必要でしょう.

またかかりやすくなる要因として,
・周囲に子供がいる(保育所/幼稚園にいく, 近所の子供と遊ぶ, 家族内で子供が多いなど)
・何らかの理由で外来受診する
・混み合っている場所にいく
といったことも指摘されています.(*7, *8)
どれも必要であるために行なっていることも多いと思いますので, 避けるというよりは, そのいった場合に特に注意する, というのがよいではないでしょうか.

*7  Risk factors for hand, foot, and mouth disease and herpangina and the preventive effect of hand-washing. Pediatrics 2011; 127(4): e898-904.
*8  Risk factors of enterovirus 71 infection and associated hand, foot, and mouth disease/herpangina in children during an epidemic in Taiwan. Pediatrics 2002; 109(6): e88.


いつになったら保育園や幼稚園などに行ってもよいですか?

ヘルパンギーナではインフルエンザやおたふくかぜなどのような明確な出席停止の基準は定められていません.

ヘルパンギーナの登園のめやすに関しては厚生労働省が発表している保育所における感染症対策ガイドライン 2018年改訂版 (PDFファイル)に記載されている内容が参考になります.
そこでは「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」とされています.

ヘルパンギーナでは回復後も飛沫や鼻汁からは1~2週間, 便からは数週~数か月間ウイルスが排出され, この期間中は感染させる可能性があります.
その期間を出席停止にすることは現実的ではなく, またヘルパンギーナにかかった児が登園を控えることは感染防止の方法としては有効性は低いため上記のような目安が設定されています.
従って, 登園が許可された場合でも人にうつす可能性あるといった意識をもって対応することが大事になります.

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