見出し画像

タリン動物園 エストニア/タリン/2019.06

ヘルシンキからタリン行きのフェリーで、エストニア入りをした。市内を車で走ると、北欧ではない中央ヨーロッパの街並みが、ひどく懐かしい。そう、もうここは北欧ではないのだ。とはいえ、バルト三国の地。私が思っていたよりも、数段に寒い。
暑くない、寒い、と愚痴をこぼしながら、フェリーを下船したその足で、街外れにあるタリン動物園に来た。
車とグーグルマップ、両方のナビゲーションシステムを稼働させていたのにも関わらず、大きな道から小さな道へと迷いに迷い、開園を少し過ぎて、園に到着した。平日の朝、それも開園直後とあって、エントランスに人はほぼいなかった。(エントランスはもう一つある。しかしそこへの行き方はわからない)もしかして、みんな道に迷っているのではないかしら、とおもってみる。

他の多くのヨーロッパの国と同じく、園内は緑が多く、ちょっとした自然公園の様になっている。こういう場所に行くといつも、途中で子どもは疲れて動かなくなることが困る。けれども、この動物園は、子供が乗って移動できる手引き荷車を置いている。施錠のコイン口にユーロ硬貨を入れて、列から荷車を一つ引き取る。そして返却時には、硬貨は手元に戻ってくる。スーパーマーケットのカートと同じだ。荷車もカートも、どちらも大きな荷を運んでくれることは、大変に有難い。ごろごろと荷車を引きながら、子どもが荷車の中でゆっくりしながら、園内を歩き出した。

自然公園さながら、動物の大きな囲いや檻の中は、雑草が豊かにぼうぼうと生えている。これでは展示物が動物なのか雑草なのか、一体何をしに歩いているのか分からなくなる瞬間があるけれど、それは動物にはいい事だろう。一切の気配が感じられないユキヒョウの、私たち以外に誰もいない静かな檻の前で、ただぼーっと雑草を見つめていた。しかし、ユキヒョウは見えなかったけれど、檻の前にチベットを紹介する写真や文がたくさんあって、それがとてもよかった。動物を通して、世界の在り様を知れる事。それこそが、動物園の役目なのだとおもうから。

いつもの週末の散歩に出かけたみたいに、ゆっくりと園内を歩いて巡る。子どもが入った、荷車を押しながら。高台の象カフェでコーヒーとチーズパンの朝食を頂きながら、象の遊ぶ姿を眺める。ピグミーカバと、口の大きさを比べをする。サイの赤ちゃんが、おっぱいを飲む姿を見守る。パイソン蛇と、睨み合う。荷車に乗った子ども達と、すれ違う。餌遣り係の女性に群がる、たくさんの鳥を観察する。木陰の道を、歩く………。なんだか、すごく楽しそうだ。
子どもは大好きな梟をたくさん見たし、ラクダを探して、ラクダの瘤を数えれた。「ラクダだー、フタコブラクダだ」

子ども広場で、山羊にブラッシングをした。山羊がブラッシングをこんなに気持ちよさそうに受けるなんて、これまでにもちろん考えてみたことはなくて、人生はまだまだ知らない事がいっぱいあるのだと、気づかされる。子どもたちも皆、やさしく山羊にブラッシングしてあげていて、たまらなくかわいかった。タリンで山羊にブラッシング、いい思い出ができたとおもう。


サポートをする。