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スーパーマーケットにある、子どもはどうぞ台

スーパーマーケットの青果売り場の一角に、それはある。それというのは、私が「子どもはどうぞ」と呼んでいる、スーパーマーケットが子どもに無料で提供しているおやつのことだ。「どうぞ」や「子どもは取って下さい」等が書かれた張り紙やポスターと一緒に、バナナや林檎が台の上に置かれている。
子どもにとっては、親に付き添って行くスーパーでの買い物は退屈かもしれないし、買い物が長引くと、お腹が空くかもしれない。なので、この「子どもはどうぞ」台はとても有難いし、素晴らしいサービスだと思う。私はいつもこの台を有り難く利用させてもらっている。
買い物に行く時はできるだけこの台が設置されているスーパーマーケットに行きたいと思うし、初めて行くスーパーマーケットにこの台が設置されていたら、嬉しい。

この子どもはどうぞ台に置かれているおやつだが、私がこれまでに出会った台を大まかに統計すると、全体の内の約85%がバナナ、次に約10%が林檎(洋梨も含める)、最後の約5%がその他(フルーツバー)である。台に用意されているその殆どは、バナナだといってよい。事実、バナナだけを置いている台も、少なからずある。この内訳の約5%のフルーツバーだが、今のところそれが置いてあるのは、一軒のスーパーマーケットのみだ。しかし見かけないとはいえ、この広いスウェーデン国内、どこか他にもフルーツバーを置いているスーパーマーケットはあるだろうと予想する。

私がよく好んで行くスーパーマーケット、ルンドのCOOP Storaなんて、売り場内のフルーツはどれでも一個取ってもいいですよという太っ腹具合だ。

その台に置いてある果物らは特に傷んでいる訳ではなく、じきに悪くなりそうだから無料で配布しようというような意図は感じられない。子どもに食べ物をあげるのは当たり前の行為で、なので置いているという風にみえる。バナナはどのスーパーも数多く仕入れているので、黒くなっているものも多いが、それは当然だ。
そのバナナだって、オーガニックのものがぽんとその台に置かれている。悪くなりかけて安売りされるのではなく、ただ、子どものおやつとして出されているバナナ。もしこれが日本だったら、たとえ本当に悪くなる一歩手前であったとしても、いい値段をつけて売るんだろうなって、つい考えてしまう。

やっぱりここは子どもに優しい国だと、スーパーマーケットに行く度に思います。
スーパーマーケットには、子どもはどうぞ台の他にも子どもが自分で押せる子ども用のカートが置いてあったり、大きなスーパーでは、店内の通路の途中にタッチパネルで遊べるゲームが置いてあったりします(これは子どもが離れたがらなかったりするので、少し厄介ではあります)。
子どもにとって、食べる、遊ぶ、大人と同じように振る舞うという当然であるべき行為、それがスーパーマーケットという公共の場で寛容されているのがみて取れること、普通にすごいことだなと思う。子どもにとって当たり前であるべきことでも、それはまだどこでも受け入れられている訳ではなくて、何の疑問もなく子どもに与えられる世界ではまだないから。

個人の心の中では子どもにとって大切なことがどういうことか分かっていても、世界で、普通の社会の中で、その大切さは大人の都合で無視されがちだ。
だから、こんな風に社会の端っこの部分で子どもの為に用意されているこれらを見ると、いつもながらにすごいし、有難いことだと思える。その光景を見慣れてしまった現在、でも気持ちはいつも新鮮にある。

今まで何回も行ったことのあるフランスやスイス等のスーパーマーケットで、この子どもはどうぞ台を見たことがない。どこかにあるとは思うけれど、見たことがないということは、あまり一般的ではないのだなと思う。デンマークのコペンハーゲンでは一度出会ったけど、それだけだ。
私の家から歩いて数分の場所にある小さなスーパーにも、この子どもはどうぞ台がある。バナナが置いてあるし、ちょっとスーパーに散歩に出ようかという気が起こされるというものである。

そんな訳で、この「子どもはどうぞ台」は、もっともっと世界中で普及して欲しいと願っています。
この台を設置したら、きっとお店の売り上げも上がると思う。というか、絶対に上がると思います。


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