”いい会社”って何だろう? ― #いい会社帳 はじめます。

”いい会社”ってなんだろう。

この問いにはたぶん、100社100通りの答えがあるのだと思う。たとえば、

会社として雇用を生み出し、利益をしっかりと出し、経済を循環させること。

これはいい会社だろうか?

会社とは

この考察を深める前に、まず、そもそも会社とは何なのかを調べてみたい。

会社法により設立された,営利を目的とする社団法人。資本の結合,労力の補充,危険の分散をはかることを目的として発達した制度。会社法は株式会社のほか,合名会社,合資会社,合同会社の 4種類を認めており,後者の 3種を持分会社と総称する。(略)会社は社団すなわち共同目的を有する複数人の結合である(略)。また,会社はすべて法人格を有し権利義務の主体となる。さらに営利を目的とするものであり,対外的な営利活動によって得た利益を構成員に分配することを目的とする点で,相互会社や協同組合と異なる。(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)

会社とは、営利を目的とするものである。

とするならば、「利益を出すこと」は会社の必要条件ということになり、”いい会社”というからには、プラスαの「いい要素」が必要なんじゃないだろうか。

「雇用を生む」ということも、会社の社団性、すなわち「複数人の結合」という性格そのものであるから、”いい”というには不足があるように思う。「経済の循環」も、利益を出そうとする活動の中で必然的に生まれてくるものであるから、「利益を出す」とほぼ同義になる。

では「たくさん」という言葉を前に付けたらどうだろうか。「たくさん利益を出す」「たくさん雇用を生む」「たくさん経済を循環させる」。

考えようによっては、これは「いい会社」と呼べるかもしれない。

誰にとってどう”いい”のか

ただ、まだ何か引っかかるところがある。それはおそらく、「たくさん利益を出したら何がいいの?」という次の質問が生まれてきてしまうからだ。

たとえば、「たくさん利益を出して、それを社員に可能な限りたくさん分配します」だったら、それはたぶん多くの社員にとって嬉しいことで「いいこと」かもしれない。

この例でもわかるように、「いい会社」を考えようとすると、「誰にとってどういいのか?」という命題が常につきまとう。

社員である私にとって「いいこと」が、会社にとって、株主にとって、社会にとって「いいこと」かどうかは直ちにはわからない。

だからそれぞれの視点から「いいこと」とは何かを考えてみなければならない。そうして出てきた「いいこと」の要素を机に並べてみたときに、「それはみんなにとっていいことだね」というものも出てくるかもしれない。

いずれにしても、そうして並べられた「いいこと」の要素が数十とあったとして、その中のよりたくさんの要素を実践している会社が”いい会社”である、と便宜上することはできるのではないか。


”いい会社”認証のB Corp

実は、ご存知の方もいると思うが、”いい会社”を認証する世界標準の仕組みが存在する。それが、認定B Corp(B Corporation)だ。

B CorpのBは”Benefit”を指す。Benefitは「便益」などと訳される言葉だが、B Corpとははたしてどのような会社のことをいうのだろう。

(B Corpの文脈で、”いい会社”を短絡的に英語で言ってしまったような"good company"などの表現が出てくるわけではなく、日本語でわかりやすくするために便宜上、B Corpに対応する言葉として”いい会社”という表現を使っている。翻訳って難しい。。)

Certified B Corporationのウェブサイトには以下のような説明がある。(素人の変な和訳で申し訳ないが)

認定B Corpは、利益と目的のバランスをとることを目指して、社会的・環境的なパフォーマンス、透明性、法的な説明責任を高いレベルで満たすビジネスです。B Corpは、ビジネスにおける成功を定義しなおし、よりインクルーシブでサステナブルな経済が作られていくよう、グローバルなカルチャーの変化を促進します。(About B Corps - Certified B Corporation)

また、B Corpの宣言(Declaration of Interdependence)の中には以下のような記述が含まれる。

我々は、ビジネスを、善に向かう推進力として使うようなグローバル経済を描いています。この経済は、新しいタイプの会社(=B Corp)によって成り立ちます。B Corpとは、パーパスドリブンで、株主だけでなく全てのステークホルダーに利するビジネスのことです。(THE B CORP DECLARATION OF INTERDEPENDENCE - Certified B Corporation)

私の解釈になるが、ここから以下のようなことが読み取れると思う。(間違えていたらぜひ指摘してほしい。)

まず、「ビジネスにおける成功を定義しなおす」「〜な経済を描いている」「新しいタイプの会社」とあるように、B Corpは「既存の経済やビジネスのありように捉われずに、新しい経済/ビジネスのあり方を作っていくんだ」という意思表示があるように思う。

新しい経済というのは、インクルーシブでサステナブルな経済であり、それは新しいビジネス(B Corp)によって目指されるものであると。

また、「利益(profit)と目的(purpose)のバランスをとる」「パーパスドリブン(purpose-driven)」とあるようにpurpose(目的)が重要視されていることもB Corpの特徴のようだ。

これはどういうことかといえば、従来ビジネスは利益を出すこと、株主に利することがとくに重視されてきたが、purposeをより重視すべきである、ということであると思う。

このpurposeを単に「目的」と和訳してしまうと、その意味するところは掴みにくいかもしれない。

purposeを英英辞書で調べてみると、

the reason for which something is done or created or for which something exists.
何かがなされたり作られた理由、または何かが存在する理由

とある。

これを会社にとってのpurposeに置き替えると、「会社の存在意義」「何のためにビジネスをするのか」ということになる。

つまりこういうことだ。

Profit(利益)を出すことはわざわざ言わずとも当然会社の役割として内包されている。だから、「我々の存在意義は利益を出すことである」と言ったら、「我々は会社である」と言っているのと同じことであり、それだけでは”いい会社”とは言えない。B Corporationは、利益の前にまずもって「何のために我々の会社は存在するのか」というところからスタートするのである。

認定B Corpになるには

さて、現在B Corpの認証を取得している会社(=認定B Corp)は全世界で3,821ある。そのうち日本では6社。

この認証の特徴は、基本的に事業を開始して1年以上の会社であれば、業種や従業員の数によらず取得することができるということである。(1年未満の場合はPending B Corpsとして登録可能)

認定B CorpになるためにはまずB Impact Assessmentを受ける必要がある。これは、認証の取得意志があるかどうかに関わらず誰でも無料で受けることができるものだ。

B Impact Assessmentは、governance(ガバナンス)、workers(働き手),  community(コミュニティ), environment(環境)、customers(顧客)の観点から会社のパフォーマンスを測定するものである。200点満点で、認定B Corpとなるためには80点以上のスコアが必要となる。

その上でいくつかの条件を満たすことで認証は取得することができるが、ここでは詳細は割愛する。

冒頭の「”いい会社”とは何か」の検討において、”いい”というのは主体によって変わるから、それぞれの観点から”いい”の要素を出す必要があるということを書いたが、B Impact Assessmentは上記5つの視点で評価を行うことでB Corpが大事にする「全てのステークホルダーに利すること」にかなうようになっているのではないかと思う。

また、すべての項目で高得点を取らなければならないということではなく、全体で80点以上だから、どこかが突出して良く他はそこそこ、でもいいのである。これは上で検討した「会社のpurpose」において、何を特に重視するかは会社によって異なるということとも関係するかもしれない。

だからと言って80点を取ることがそう簡単ではないことは、Assessmentの質問を眺めてみればわかるだろう。

(それぞれの項目の中身についてはおいおい紹介していきたい。もちろんB Impact Assessmentのサイトからアセスメントを実際に受けたりサンプル質問を見たりすることができる)

#いい会社帳 とは

#いい会社帳 では、私が認定B Corpになっている会社のことを調べ、日本語でまとめたものを公開していく予定だ。

目的は二つある。

一つは、そうすることで、”いい会社”の条件や輪郭というものを掴み、それを共有したい。私自身も”いい会社”の要素を実践していくべく学んでいきたいし、世の中に”いい会社”が増えたら嬉しいなと思う。

上記での「”いい会社”とは何だろう」という検討はあくまで抽象的なものに留まったが、これから会社の事例を見ていくことで、具体的な中身を理解していきたい。

もう一つは、日常の商品を買う・サービスを利用するというシーンにおいてできるだけ”いい会社”から選びたいと考えている人(私含め)に、ここで紹介する事例を参考にしてもらえたらと思う。

基本的には認定B Corpになっている会社を調べていく予定だが、認証を取っていなくても”いい会社”と呼べる会社もきっとあるだろう。そういう会社や製品を見つけたら、番外編として取り上げるかもしれない。もし皆さんの周りに”いい会社”を見つけたらぜひ教えてほしい。


ちなみに私は今、バリューブックスさん、黒鳥社さんが主催する「新しい会社の学校 B Corpハンドブック翻訳ゼミ」に参加しながらB  Corpのことを絶賛学習中だ。

このゼミに参加してB Corpのことを学んでいるうちに、もっともっとB Corpのことや世界の”いい会社”にまつわるムーブメントを知りたいと思いこの企画をやろうと考えた次第。

B Corpや”いい会社”に関心を持つ人が増え、日本でもこのムーブメントが盛り上がっていけば嬉しいなと思う。

ぜひ一緒に学んでいきましょう!

アナウンス

書いてる人→ @nunochaan

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