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ななちゃんブローチ【買い物編】

地域活動支援センターという施設があることを、自分が障害を持つまで私は知りませんでした。
障害を持っていらっしゃる方々が、日中通える憩いの場所でもあったり、イベントへの参加や人との交流を促してくれたり、時に、就労の相談にものってくれる場所なのだそうでございます。

私には知的障害の妹がいるのですが、一時期、私と一緒に地域活動支援センターに通っておりました。
人見知りが激しく、お友達がなかなか作れない妹にも、通っているうちに何かがきっかけでお友達が出来ればいいなと思っていたのですが、様子を見ているとだんだん、妹はお友達を欲しいとは特に思っていないようにも見えてきました。

人との交流を避けている様子ではなく、他の人と一緒にイベントに取り組むのは嫌ではなさそうなのですが、どうやら自分の趣味や、好きなこと、楽しいことに関しては、一人で楽しみたいと思っている人間なのかもしれません。
妹はコレクター気質なところがありまして、掘り出し物やプレミアがついているような希少価値のあるものを、よく欲しがり、購入しては自分の部屋にたくさん飾っております。

必ずしも希少価値のあるものばかりではなく、そもそも買い物をするのがとても好きな子なのですが、妹が買うものは、一見がらくたのようなものに見えて、のちに価値が出て高く売れたりすることがとても多く、物の価値が分かる子なのかもしれません。
ずいぶん前に購入して、飾り切れなくなったものを、母がみかねて売りに出すのですが、買った値段より高く売れることもよくあるそうなのです。

もちろん、ただのゴミになってしまうものもあったりして、紙一重だったりするのですが、物の価値は、私たちには分からなくとも、分かる人には分かるものだったりするのでしょうか。

最近買った奇妙な鉛筆削りがありまして、それを地域活動支援センターに持っていって、他の人に見せる機会があり、妹的には自信満々の品なのだそうなのですが、みなさんはキョトンとした顔をしていて、「なにこれ?」みたいな反応でございました。
妹は、みんなの反応に少しがっかりしていたようで、その鉛筆削りは密かにどこかにしまわれてしまったようです。

見たことのない少々レトロな感じの鉛筆削りだったのですが、珍しいものを手に入れた妹はいつも目を輝かせていて、そんな姿を見るのが私は好きなので、妹の買い物を応援したいのですが、本当は妹もみんなと価値を認め合って、嬉しい気持ちを分かちあえれば一番良いのだろうと思います。
自分の好きなものが人に理解されない悲しみは、どう乗り越えていけば良いのか、私にも未だ分からないことでございます。

妹が子供の頃は、お小遣いのやりくりが出来ず、母に借金をして買い物をしていた時期もございました。
買い物したい欲求を制御できないのならば、このまま依存症になってしまうのではと、家族は心配しておりましたが、大人になった今では、ちゃんと欲しいものを買うためにお小遣いを貯金して、お小遣いが足りないときは、その分しっかり働いて母にお金をもらったりしております。

買って遊んでばかりではなく、家族のご飯を作ってくれたり、家事をしっかりこなしてお駄賃をもらうすべを、いつからか身につけていたようでございます。
教えた覚えはないですが、妹なりの処世術なのだろうと思います。

古本屋や古いおもちゃ屋さん巡りが、妹の趣味で、私や母も一緒に行くのですが、商品を見ているときは、誰とも話さず何時間でも一人で品定めをしていて、私と母は付き合いきれないと愚痴を言いつつ、買うものが決まるまでおしゃべりをして過ごしております。
そんな買い物の日々がありながら、隔週で自宅に届く定期購読をしているのですが、それにしか付いていないフィギュアやDVDなど、レアな付録が意外と価値が出たりするものらしく、それが隔週で届くという、じらす感じがまた、たまらないそうなのでございます。

妹を見ていて、品を吟味して見定めている瞬間はすでにたまらない感覚なのだろうと思うのですが、それを手に入れた瞬間はもちろん嬉しいけど、さらに人に見せて自慢をするというところまでが、買い物の楽しいところなのだろうと思います。
普段から必要最低限のもの以外は買い物をしない私には、買い物の楽しみがよくわかっておりませんでしたが、素晴らしいものを手に入れた瞬間の喜びは、大きな達成感と満足感があるものなのかもしれません。

妹はいろんな人にななちゃんと呼ばれておりまして、ななちゃん刺繍シリーズの最初の作品になりました。
日常の妹の姿を描いて、今後も作品にしていきたいと思っております。

また次も見て頂けましたら、幸いでございます。

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