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「着付師か美容師、資格を取るならどっちがいいか」のぶっちゃけ話

 「着付教室あがりはヌルい」。私は美容師からこう揶揄されることがあります。また駆け出しの頃、先輩美容師に「プロ意識が足りない」と言われたこともあります。
 私が今までの就職活動で面接した美容師は「着付師? 美容師じゃないんだ。ふーん」ってあしらう人が多く、要するに”あなた本当にプロになるつもりなの?”って感じなのです。
 美容師と一緒に仕事をしているときは、”どっちが上とか下とか考えるな”と自分に言い聞かせるのですが、彼女等が無意識のうちに発する言動の端々に”下にみられてる”と卑屈になることはよくあり、自己嫌悪に陥ることはしばしばです。

 着付師の資格には、国家検定である「着付け技能士」と民間の着付教室等が出す「着付師」(送り仮名・名称は流派により様々ですが、ここではこの表記とします)があります。
 美容業界では一般的に、着付け技能士の資格は美容師のためのプラスアルファのものと認識しているようで、その根拠として検定事務局である「全日本着付け技能センター」は美容会館にあります。
 この検定は美容師の資格はなくても受検できますが、学科試験の受検資格は美容師が最もハードルが低く、着付教室等で習ってきた人は実務経験(=給料を貰ったことがある)年数で判断します。
(受検資格はこちらをご覧ください。)

 対して民間の着付師免状や認定証の類は、定められたカリキュラムを受講し、試験に受かれば取得できますが、その効力は同じ教室内か系列の呉服店等でないと認めてもらえない場合がほとんどです。

 他装を習う場所には、美容専門学校と着付教室の2つの系統があります。
 前者は端から着付を職業とするための訓練の場。後者は着付を趣味・教養として楽しむ場。冒頭に挙げたような言葉を発する美容師達は恐らくそんな見方をしているのでしょう。
 もし、これから着付師を目指す方がどこで学ぶか迷っていたら、私がおすすめするのは、美容専門学校へ入りまずは美容師免許から取得、追って着付け技能士を取得することです。若い方なら尚更です。着付の授業は相対的に少なくても、トータルで美容を学んだ方が仕事の場は広がります。
 そうじゃない方は…
 着付教室に通ううちにプロを目指すことになると、そこで着付師免状取得後、その教室の講師か、系列店や提携先の需要に応えて派遣される出張着付師になるのが一般的だと思います。これなら美容はできずともよく、安定的に仕事を回してもらえるでしょう。
 しかし貰える謝礼以上に経費がかかります。例えば、講師に相応しい着物代、技術維持および向上のための講習受講料、上級免状取得を望むなら受検料など、挙げたらきりがありません。
 プロといっても、これで生計を立てられるほど稼げるのは、ごく一部の人達だけではないでしょうか。

 ちなみに私は「儲けの出ないプロって何なん?」と疑問に思い、着付教室を卒業目前で飛び出しました。
 「じゃあ今から専門学校行けば?」と言われる向きもあるでしょう。それも一時考えました。しかし私がそれをやったら、子供の教育費と老後の資金がありません!

 撮影や冠婚葬祭の現場ではヘア・メイクあってこその和装ですから、着付け技能士・着付師の資格だけでは重用されず、美容師免許がなければ薄給なのが現実です。
 私は着付け技能士の資格しかないので美容はできませんが、美容師にも着付が不得手もしくはできないという人は男女の別なくいます。
 そういうときこそ私の出番。足りないスキルを補い合うことにやりがいを持って働いています。

自作の髪飾りと羽織紐。材料はほぼ100均ショップで入手。

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