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カントリーベア・シアターはなぜ『カントリー』で『ベア』なのか?

 はじめまして。かも(@nununu_daka)と申します。普段は舞浜からはほど遠い地にいる遠方ワンデー民です。イン頻度はシーズンごとに1回出来たら上出来レベルのペーペーでございます。自分で書いていてつらくなってきました。
 この度お声がけいただき、僭越ながらカンベアについての記事を書かせていただくことになりました。
 付け焼き刃で色々と書きますが、若輩者のたわごとと思って優しい気持ちで読んでいただけると幸いです。

 カントリーベア・シアター…それは誰もが知っている(?)東京ディズニーランドで開園当初から存在している歴史あるアトラクションです。個性豊かなクマたち(プラスα)のショーはいつ何度みても私達を楽しませてくれますよね。
 物心がついた頃から当たり前にあるアトラクションのためか、当たり前に感じていたところもありますが

 ・そもそもなぜクマなのか?
 ・クマの顔になぜ毛が無いのか?
 ・クマがなぜカントリーミュージックを演奏しているのか?

 皆さんは疑問に感じたことはありませんか。私はあります。なぜならクマが、まるでヒトのようにギターやバイオリンを使って演奏してカントリーミュージックを歌っているんですよ。待合にはそれぞれの肖像画や写真が飾ってある上に、それぞれの楽屋もあるんです。手厚い。やたら手厚い。
 以前、東京ディズニーランドにはミッキーマウス・レビューというミッキーマウスとその仲間たち(のオーディオアニマトロニクス)が楽器を演奏して歌うというアトラクションがありましたが、それと似ているようで全くコンセプトが違う、クマのキャラクターだけで運営している『カントリーベア・シアター』というアトラクションが存在しています。これって不思議ではありませんか。
 いやいやディズニーなんだから〜という理由で片付けてしまえば簡単ですが、今回当たり前にあるこのカントリーベア・シアターがなぜ『カントリー』で『ベア』であるのか、上記の3点について自分なりに考察してみました。

①そもそもなぜクマなのか?

 このことを考えるにあたって、ミッキーマウスがなぜネズミなのか?を考えることから始めなければならない気もしますが、そんなことしてる余裕はないので省略しましょう。
 クマをキャラクターとして確立させている理由として、アメリカ人とクマの関係性が大きく関わっているのではないかと思われます。
 カントリーベア・シアターが生まれたアメリカにはハイイログマ(通称グリズリー)という大型のヒグマの仲間が生息しています。ハイイログマはネイティブ・アメリカンの話に出てきたり、狩猟の対象になったりとアメリカ人にとって古くから身近な存在であったと思われます。
 クマと人間のエピソードについては、第26代アメリカ合衆国大統領セオドア・ルーズベルトの話が有名です。1902年の秋、ルーズベルト大統領は趣味であるクマ狩りに出かけましたが、獲物をしとめることができませんでした。そこで同行していたハンターがアメリカグマを追いつめて最後の1発を大統領に頼みましたが、ルーズベルトは瀕死のクマを撃つことを拒否し、逃したのでした。このことが同行していた新聞記者によって記事にされ、ワシントン・ポスト紙に挿絵入りで掲載されたそうです。
 このルーズベルトの逸話に触発されて、クマのぬいぐるみを製造したことが『テディベア』の由来となっています。アメリカを中心に欧米各地でクマはぬいぐるみとして子どもから大人まで愛される存在となり、今では全世界で『クマ=可愛らしい愛玩動物』として認知されていると言えるでしょう。
 以上の歴史的背景から、アメリカ人にとってクマは身近で馴染みがあり愛される存在という認知があるため、『どの世代でも楽しめる』ディズニーのコンセプトにマッチし、アトラクションとしてクマが起用されたのではないかと考えられます。(TDSにもテディ・ルーズヴェルト・ラウンジがあるくらいですしディズニー公式としてルーズベルト大統領推しを感じますね。)


②クマの顔になぜ毛が無いのか?

 この点については、上記で話したルーズベルト大統領の逸話が新聞に掲載された時の挿絵を見ていただきたいです。(上記挿絵:Wikipedia『ハイイログマ』項より引用)
 これ、顔に毛がありません。今のカントリーベア・シアターのクマ(特にオスカー)にかなり近いと思いませんか?(クマよりミッキーマウスに近い気はしますが)
 1902年に掲載されたイラストなので1901年生まれのウォルト・ディズニーはリアルタイムでこの記事は見ていないにしろ、有名なエピソードであることからこの挿絵を何度も見たことがあると考えられます。つまりウォルトがミッキーマウスを生み出す20年以上前に既にカントリーベア・シアターのクマのイメージ的なものが彼の頭の片隅に存在していた可能性があります。
 また、ミッキーマウスやその仲間たちは動物を擬人化したキャラクターで、顔に毛が無いことが特徴的です。(例:ミッキーマウス、ミニーマウス、グーフィーなど。ドナルドダックは例外?)ミッキーマウスのペットであるプルートは顔に毛がある『犬』として、同じく犬をモチーフとしているグーフィーと明らかに区別して描かれています。
 上記の新聞記事の挿絵のイメージとディズニー特有の擬人化技術によってヒトのように自由に動き回れるキャラクターを生み出すアイデアが融合したとすれば、カントリーベア・シアターのクマたちが出来上がることは必然と言えるでしょう。
 (追記:12/2 イマジニアのマーク・デイビスとアル・バーティーノがカントリーベア・シアターのキャラクターデザインを手掛けたことを知りました。ビッグ・アルのモデルがアル・バーティーノとのことなので、クマ→ヒトではなくヒト→クマへ逆擬人化(?)していたなら人間的な見た目や動きになるのは当然といえば当然ですね。)

③クマがなぜカントリーミュージックを演奏しているのか?

 ②クマの顔になぜ毛が無いのか?で触れた通り、二足歩行になり自由に動き回れるようになったキャラクターに一体何をさせるのか?四足動物のクマが二足歩行になったということは、手が自由に使えるようになったということですね。人間も進化の過程で二足歩行を獲得し手が使えるようになり、道具を使い発展をしてきました。
 道具…そう、楽器、つきましては音楽ですね。ディズニーと音楽は切っても切れない関係があることは皆さんご存知の通りだと思います。ディズニーは、アメリカ人にとって馴染みのあるクマが生き生きと動き、さらにどの世代にも愛されるためにはどのような音楽を与えたらいいか考えたのではないでしょうか。
 1920年代、多感な若きウォルト・ディズニーが過ごした時代は『狂騒の20年代』とも呼ばれアメリカ合衆国の経済、社会、芸術および文化が大きく発展した時代でした。著しく発展するアメリカを支えた労働者階級の人々を中心に様々な伝統的音楽をブレンドして生み出されたのが、カントリーミュージックと言われています。当時の人々は辛い日常を明るく生き抜いていくために、仲間と一緒にカントリーミュージックを歌ってきたことと思います。古き良きアメリカを彷彿とさせるカントリーミュージックはアメリカの精神そのものを表すものと言えるでしょう。

 以上よりアメリカ人が愛する『クマ』がアメリカ人の心の拠り所である『カントリーミュージック』を演奏することが、ウォルトやアメリカ人にとってどれほどの意味があるかは、日本人である私にもこの記事を読んでいる皆さんにも想像に難くないことと感じます。通常バージョンにおいて司会のヘンリーが冒頭で「我がアメリカ音楽の輝ける遺産!」「そうは言ってもそんなに難しいもんじゃありませんよ」と話しますが、このセリフにディズニーが考える自国の文化に対する誇りや思いを込めている気もします。


 色々と書きましたがカントリーベア・シアターに登場するクマは命が吹き込まれたように、実に生き生きと表情豊かです。これはディズニーが持つ技術力やシアターを運営しているキャスト、足を運ぶゲストのおかげだと思います。そしてカントリーベア・シアターが『カントリー』で『ベア』であることが、このアトラクションの存在意義や愛される理由そのものなのでしょう。


 最後に企画をしていただいたユーキャン様、参加されている皆様、最後まで読んでいただいた皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました!

最後に:カンベアはええよ!やっとかめ!

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