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V.W.Pデビューアルバム「運命」


1:OP(Instrumental)
2:魔女
3:共鳴
4:電脳
5:祭壇
6:秘密
7:言霊
8:玩具
9:宣戦
10:定命
11:変身
12:輪廻
​​​​​​​13:再会
14:魔女(真)
15:ED(Instrumental)

神椿スタジオに所属する5人のバーチャルシンガー(花譜, 理芽, 春猿火, ヰ世界情緒, 幸祜)によって結成されたV.W.P (Virtual Witch Phenomenon)の待望のデビューアルバムがようやくリリースされた。

5人は異なる声質と音楽性を持ってそれぞれ活動をしてきた。2018年にデビューした花譜は可愛らしい高音で絶大な人気を集めてきた。その1年後に姉的な存在としてデビューした理芽も個性的でクセになる歌声で魅了した。そしてラップシンガーとして春猿火、ダークシンガーとしてヰ世界情緒、ロックシンガーとして幸祜が続いてデビューし、それぞれが確固たる基盤を築いてきた。

この5人が初めて揃ったのは2021年3月の花譜「不可解弍Q2」でのことだった。バーチャル空間で魔法陣を組んで5人が向かい合い歌い合う姿は鮮烈だった。それぞれが1人ずつでも強力な歌声の持ち主なのに、それらが1つに重なり合った時のハーモニーは、何者にも負けないような圧倒的な無敵感に満ち溢れていた。

以降、花譜の「不可解弍Q3」やイベントへの出演、アニメの主題歌などの活動を経て、2022年4月には遂に1stワンマンライブ「現象」を開催する。ここでV.W.Pの全貌が明らかになった。豪華な演奏陣をバックに歌う5人は、それぞれの個性を活かしながらも、見事なチームワークを見せつけた。

ここで告知されてから1年半、長く待たされたこのデビューアルバムは、こうしたこれまでのV.W.Pの活動の1つの集大成となっている。彼女らの楽曲は5人揃って歌われる魔女の「系譜曲」と、2人ずつデュオで歌う「派生曲」の2パターンがあるが、ここに収録されているのは全てカンザキイオリが手掛けた「系譜曲」となる。同じカンザキイオリの作品でも、花譜のアルバムはあくまでもポップスの範疇だったが、このV.W.Pのアルバムは激しくロックだ。どの曲も非常に強力なのだが、その中でも特に印象的なものを取り上げる。

まず私が初めて聴いたのは「不可解弍Q2」での"言霊"だった。当時コロナで全世界は絶望感に満ちていた中で聴いた、この真っ直ぐに愛を歌う歌詞は心に刺さった。そしてお情を観たのもこの時初めてだったが、綺麗な声から一転した力強い「叫びたくないか」の鼓舞に耳を奪われたことを今でも鮮明に覚えている。

"電脳"と"輪廻"は私にとっては、まごうことなき神曲だ。どちらもぐいぐいと来るアップテンポなロックナンバーで、極上のメロディと焦燥感の強い歌詞が聴く者の心を鷲掴み、甲乙付け難い。

幸がセンターの"秘密"はロックというよりもメタルなナンバー。鋭いギターリフや疾走するドラムが嬉しくなるくらいに完全にメタルで、カンザキイオリはこんな曲も書けるのかと脅かされた。

春姉がセンターの"定命"は、全方位にブチ切れた楽曲だ。怒りに満ちた歌詞は、きっと当時勃発したウクライナ侵略の影響が現れているのではないかと思われる。春姉の絶唱が印象的だ。

そして最後に発表された"再会"は感動的なバラード。ラスサビでのお情が情感を込めて歌う天に舞い上がるようなハイトーンに何も感じない人はいないだろう。

他にもアンセム"魔女"やキュート&コミカルな"共鳴"、ホーンやリズムがスカっぽい"玩具"など、驚くほど楽曲の幅が広い。バーチャルからリアルの世界を変えてやるという歌詞も独特の世界観を構築しており、文学作家でもあるカンザキイオリの選ぶささくれ立った単語も、この音楽を単なるBGMにすることを許さない。

最後に、またしても各楽曲の演奏者のクレジットが明記されていないことが残念なのだが、「現象」に出演していたメンバーだろうか。ライブとはまた少し違ったアレンジも交えながら、素晴らしい演奏を聴かせてくれているということを忘れてはいけない。

今回収録されなかった「派生曲」も傑作揃いなので、どうかそちらも改めて2ndアルバムとしてリリースしてくれることを願っている。そして今後の彼女らの活躍に期待したい。


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