ウェディングケーキ、前から見るか後ろから見るか。

先日、結婚式を挙げた。

時たま、参列者の度肝を抜くような奇をてらった演出に遭遇するものの、結婚式とはおおむね様式美に基づいて構成されるイベントだ。

型がしっかりしているからこそ、相応の対価を出せば、誰にでも挙げることができるといえる。人生で自ら主催する唯一のイベントだ、という人も少なくないだろう。

例外なく、我々の式も、様式美に則って、至極無難に行われた。職業柄、多少ペーパー小物の類いにはこだわったものの、文章担当×2、デザイナー×0で構成される夫婦にできることは限られる。
(旦那には言っていないが、個人的なコンセプトは「式が暇なら本を読めばいいじゃない」だった。詳しい装飾などについては割愛)

が、そんな私たちの披露宴でも、親戚間でやたらと褒められた演出があったので、お知らせしておく。
ある日の母との会話である。

母「真実の式、伯母ちゃんたちがすごく楽しかったって言ってたわよ」
私「あ、ホントに?」
母「特にあの、ケーキの」
私「……ケーキの?」
母「新郎にたくさん食べさせるやつ」

……

…………

私「………………ケーキバイト?」

ド定番のヤツだった。

***

両手では利かないほど、友人たちの式に出席してきた三十路である。
どちらかというとシンプルを好む友人たちのあらゆる演出、あらゆるプログラムを見てきたが、その演出はだいたいどこかにあった。

親が駆り出される系演出のラストバイト(母親が最後にケーキを食べさせてから、通常のバイトを行う)や、各々の両親にお手本を見せてもらう三家族バイト、入刀するケーキが米俵だったりマグロだったりする変わり種はあったものの(余談だが後者はあとで参加者にトロが出た)、式場から提案される式次第の中によほどでないかぎり入っている。それくらいベッタベタなコンテンツだ。

我々の場合、「あとでケーキを食べるためのコンテンツ」くらいにしかとらえておらず、式場に伝えた要望は「絶対生ケーキ」の一言だけで、当日は新郎の方がデカいスプーン(場合によってはしゃもじなど)で無茶をさせられるというお決まりもしっかりこなし、少々つまらないくらい無難に終わった、などと思っていた。

で、しばし考えたのだが、なんのことはなかった。
伯父伯母たちにとっては、今回のケーキバイトが「初めて見たケーキバイト」だったのだ。
年の離れた従兄姉たちの結婚ラッシュは、およそ15年前。その頃はまだ、ケーキはカットだけするものであり、食べさせるものではなかった。

そう考えると、ほんの10年かそこらで、ずっと昔からあったかのような顔(?)をしているケーキバイトってパワーコンテンツ(見た人がこれやらなあかん、ともれなく思う点において)だったんだな、と思うのだ。

***

ケーキカットは戦後に取り入れられた風習だそうで、つまり延々60年近く、みんな結婚式で新郎新婦がケーキをカットする場面を眺めてきたことになる。
対して、ケーキバイトの歴史はせいぜいここ10年。にもかかわらず、今ではこの二つはほぼ同列に扱われている。

ちなみにケーキバイトの由来を調べてみると、どこもかしこも「欧米では古くから行われていた」とあるのだが、肝心の欧米の様子は出てこない。
「僕が稼いで食べさせてあげるよ」
「私が美味しい料理を作るわ」
なんてとうとうと語られるイベントが、欧米で行われているかは甚だ疑問である。
というか、日本っぽいイベントすぎる。

実際にケーキを切って食って気づいたのだが、ウェディングケーキにはちゃんと、「切って食う部分」が存在する。感心したが、そりゃそうか。
そもそもウェディングケーキは「フェイク」を選ぶこともできる。切るところだけが存在し、あとで食べられないというなんとも切ないものである。共同作業もへったくれもない。

じゃああのコンテンツはなんのために存在するのかとさらに掘り下げて調べたら、納得する解答に出会った。

「写真を撮るため」

はいはいはい!

よく司会の人が「シャッターチャンスですので前にどうぞ」って言うよね!

ケーキありきのシャッターチャンスではなく、シャッターチャンスありきのケーキ。
「インスタばえ」ってやつですよ。

***

よくよく考えれば、「ケーキを食べさせ合う新婚夫婦」なんてのろけの極みみたいな場面、「ケッ」て感じだが(一般論です)、照れながら差し出されたケーキを頬張る新婦や、大きなスプーンやへたするとしゃもじでケーキを口に詰め込まれる新郎は、単にケーキを切ってるよりはるかにインスタ映える。そういえば伯父伯母たちも喜んでパシャパシャしてくれていたっけな。

ケーキバイトが考案された時にはインスタはないし、写真写りまで考えて提案したコンテンツかどうかは知らないが、裏を返せば、これ以上にインスタばえするコンテンツを提案できれば、今後長きにわたるヒットコンテンツとなるにちがいない、ということだ。

そんなわけで、私が提案するのはゴンドラリバイバル。話には聞くが見たことがないのだ。
インスタ内でハートがつきまくること必須と思うのだが、誰かやってみてはくれまいか。

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砂東真実

嫁読め!(よめよめ)

結婚することになったので、備忘録的にこれから結婚する人へ役立つような立たないような情報を配信していきます。
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