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夫婦の朝、そしてセロリ。

日曜日。
息子の泣き声と、「ねえ、もう12時58分だよ」という夫の声で起こされた。

ガバッと起き上がる。
ああ……またやってしまったか。

夫は別に怒るでもなく、マイペースにスマホを操りながら、息子を抱き上げる。

***

夫と付き合い出したのは今から10年ほど前からだが、最初の数年はいつも同じことで喧嘩をしていた。

原因は、私が昼頃まで起きられないこと。

たとえば、月曜から金曜までめいっぱい働き、土曜のデートに備えて金曜の夜は彼の家に宿泊する。
翌日目覚めると、太陽はすでに空の真上。ブランチどころかランチの時間で、どこかに出かけるにしても、家を出るのはだいたい夕方前ということになる。

ぐーすかと眠る私の横で、習慣的に朝早く目覚めてしまう夫は、どうしようもできない時間を持て余していた。

というのも、夫の実家は兼業農家を営んでおり、土日は家族総出で畑仕事をするのが当たり前。方や我が家は、子どもの頃から父の帰宅時間が毎日22時を過ぎており、「土日は朝寝坊の日」なのがお約束であった。

せっかくの休日、午前中からテキパキ動いて充実させたい夫と、せっかくの休日、ゆっくり体を休めてほどよく遊びたい私。

育ってき~た環境~が~ちがう~から~
好き嫌いは~イナメナイ~

『セロリ』っていい曲だなーと、遠い目をしながらしみじみ思うのだ。

結婚すると、この問題はさらに顕著になってきた。
土日だけでなく、互いの平日の時間の使い方にも不満が出てくる。

たとえば私は、家事をなるべく夜に片づけてしまって、朝はギリギリまで寝ていたい。
趣味のことをするのも朝より夜がいいし、夫婦のコミュニケーションの時間だって、二人でダイニングテーブルで夜お茶でも飲みながらゆっくりととりたい。

が、夫はちがう。
夜はとっとと寝てしまい、家事は翌朝早めに起きて片づけたい。
「早起きは三文の徳」だから、三文分を自分の時間として使えばいいと思っているし、休日早く起きてくれれば夫婦の時間がとれるだろう、と考えている。

かみあわない。

「なんで汚れたお皿を洗っていないわけ⁉」と、流しのお皿を夜遅くに片づけた翌日の朝、「また夜更かししたの? 皿は朝に洗おうと思っていたのに」と言われてムキーーーー!!! なんて事件が、新婚当時は結構な頻度で勃発した。

やっぱりとってもかみあわない。

***

さて、セロリを名曲せしめてる理由は、さきほどの歌詞の続きにあると思っている。

Uh~ がんばってみるよ~ やれるだけ~
Uh~ がんばってみてよ~ 少しだけ~

「他人を変えようとするな自分が変われ」という御説ごもっともだが、恋愛や結婚に関してはそれだけじゃうまくいかないと考えている。

「自分も“やれるだけ”がんばるから、あなたも“少しだけ”がんばって」

なのだ。

自分が「やれるだけ」で相手が「少しだけ」なのが憎いではないか。
限りなく相手の心に寄り添う姿勢を見せながらも、でもあなたもちょっとだけ変わってくれないかな?というお伺い。

お互いにそう思い合っていることが大事なのではないかな、たぶん。

***

「早く起きれるように体力をつける」

というたびに、「あなたソレ、10年言い続けてるよね」と呆れたように返される。
とはいえ、午前中には起きられるような時間に布団に入ったり、朝ドラを目覚まし代わりに起き、そのまま二度寝をしないよう頑張る……という私の姿を見るうちに、夫の態度も軟化してきた。

積極的に夜のティータイムをとろうとしてくれるし(お茶菓子も買ってくれたりする)、何より朝に私が起きられなくても怒らなくなった。

「朝、真実が起きてこない時間に買い物に行ったり、一人プレイのゲームをすればいいやって」

あっさりとそう言う。

「あー、寝すぎたな」とは思っても、「起きれなかった、ごめん……」と思わなくていいのは、とても気楽だ。

私はその分、自分が起きている夜に、翌朝が少しでも楽になるようなことを、ワンアクションでもいいからやっておくようにした。

性格曲げてまで 気持ちおさえてまで
付き合うことじゃないけど
一人じゃ持ちきれない素敵な時間に
できるだけ一緒にいたいのさ

夫婦としてできるだけ一緒にいたかったので、10年かけて、少しずつかみ合わせてきた、というわけです。

***

なんで今日こんな話を書いてみたのかというと。

「12時58分だよ」と言われた日曜の朝(昼?)。
慌てて眠気を吹っ飛ばして飛び起きたのち、息子の離乳食の準備をしながらニノさん(テレビ番組)でも見ようかとテレビをつけてみると、そこには

11:07

と表示されていた。

私「……11時じゃん!!
夫「気づくの遅くない?」

13時だと思って行動していたのに、実はまだ11時。
普通に起きていたら「ちょっと遅めの朝」、だったのが、夫の気まぐれなサバ読みのおかげで「2時間得した気分の朝」になった。

夫はたまにこれをやる。「もう11時だよ」と言われて8時だったり。「14時過ぎてるけど?」と言われたけれど10時だったり。
騙されているわけだけれど、なんだかんだちょっと早めに起きられた朝は気分がいいのだ。

これも彼なりのテクニックであり歩み寄りなのだろう。

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砂東真実

書いて読む人。会社勤めの傍ら、副業でフリーとしてライディング、編集も行っております。 現在0歳の息子を育てるアラサー。 ブルーな気持ちを笑い飛ばし、少し明るい気持ちになれるものを書くのが目標。 #お金ライターコンテスト 大賞 いただきました! 育児アカ→@mami_ikuji

嫁読め!(よめよめ)

結婚式や準備、新婚生活にまつわる備忘録から、夫婦にまつわるエッセイコラム。 あまり参考にはなりません(爆)。
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