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編集者の適性

(※画像はアニメサザエさんより)

就活していた頃、あらゆる出版社で編集者の適性を見る心理テストのようなものをさせられた記憶があるが、未だにあのテストで何を見られていたのか判然としない。どうすればテストを通るかは何となくわかるが、そのテストを通った人が本当に編集者に向いているのかどうかはわからない。

ただ、十年近くこの仕事を続けてみると、
「これがないとこんな仕事続けてられないよね」
という能力がちらほら見つかる(気がする)。

で、その中の一つがずばりこれ。

「待ち力」。

絶対売れないと思うけど、このタイトルで書きたい経験談だけはたくさんあるわ、そのくらいこれまでたくさん待ってきたわ、と心で叫ぶ入稿日。
気が気じゃないけどできることがない。
待つことあみんのごとし。
私待つわ、いつまでも待つわ、たとえ残業・終電・徹夜っちゃったとして~も~♪

***

サザエさんにまつわる七不思議(?)の一つとしてよくあげられるのが、「ノリスケは暇なのか」説である。
「おばさーん、伊佐坂先生の原稿が上がるまでおじゃまさせてくださーい」
とやってきては、主婦二人と昼飯を食う(主婦はしっかり家事をしているが、ノリスケは寝てる)。
ノリスケが出版社勤務で、伊佐坂先生の担当編集者ということは周知の事実であるが、こいつなんでこんなに働いてないんだろう、と多くの人は疑問に思う。

あくまで仮説なのだが、経験上、ノリスケが忙しくなるのは、磯野家でグータラしている間に伊佐坂先生が書いてくれた原稿を受け取り、帰社したその後! である。

ノリスケのワークフローはこちら!
帰社。先生の原稿に一通り目を通す。

構成がおかしくないかチェック。問題があったら電話&修正依頼を出し、すぐに原稿を返しにいく。(*)

構成に問題がなければ、赤ペン片手に校正開始。
誤字脱字は赤、疑問点は鉛筆で書き込む。

〆切直前なら電話で都度都度修正点の付き合わせ(*)、そうでなければゲラ(本のレイアウトにした原稿)を出すため関係部署に赴く。

原稿の長さにも寄るが、多分このあたりで終電のがしてる。

*……現在はメールでもすませられるところ。

ノリスケが文芸誌担当なら、このあと挿し絵の手配をするだろうし、単行本担当なら装丁の打ち合わせがある。〆切の頻度的に雑誌っぽい感じもするか……。

何が言いたいかというと、待ってる間はすることがないのである。
やきもきやきもきやきもきすることあみんのごとし(違)だが、「じゃあ私が代わりに書きますよ!!」というわけにはいかないし、早く早くと追いたてたところでキレられるのが関の山。
まぁ今ならパソコン持参で同時並行の仕事を進めるけど、当時はそんなものないはずで、てサザエさんの時代設定がわからんけども!
ノリスケみたいに気心知れた場所で気力と体力を温存しておかないと、その後がもたないよね、という話。
ごめん、子どもの頃この人暇なのかなとな思っていて。多分ノリスケさん、深夜におうちに帰ってばかりで、たまの休日にイクラちゃんに「バーブー?(だれこのおっさん)」とか言われちゃうんだよね。かかれてないだけで。

***

ああ、でも一つだけあった。編集者にできること。それは、

「関係各所への謝罪、調整、ねじこみ」。

これ入稿時間やべぇな。
と思ったら即!印刷所へ電話。30分という微々たる、しかし寸暇も惜しい我々にとっては神のような時間と、データはメールで送ればいい(データをまとめるのに時間がかかるため、これがてきるとかなり余裕が出る)という権利をごり押しでもぎとる。
本当は一時間ほしかったけど……そこは交渉負けである。データの送り時間は20時30分。
当たり前だけど定時はとっくにすぎてるよね。
ごめんなさいすみませんとメールに書き綴る。

そんなわけで今日私が待っていたのは、著者の返事とデザイナーさんの上がり。
著者さんの返事がないとデザイナーさんが動けない、デザイナーさんが動けないと入稿できない……という魔の悪循環。
今はケータイがあるからいいけど、ノリスケはケータイ持ってないから大変だろうな……と同情しながら、著者さんケータイに鬼のような着信履歴を残す鬼編集。

なんとか入稿しました。
ホッとため息。

待ち力は必須だけれど、できることならこんなギリギリランナーになるほど待ちたくない。

やっぱりあみんほど悠長には待てないね。

(2016/12/16)

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