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#3 保険診療でオーソモレキュラー療法は出来る? 保険診療とオーソモレキュラー療法の違い、薬とサプリメントの違いとは

薬とサプリメントの具体的な違い。同じように見える物でも何が違う?

では、もう少し踏み込んで、薬とサプリメントの違いについて解説していきましょう。

先ほども解説しましたが、病院で処方される薬の中には、カルシウム製剤やマグネシウム製剤、鉄剤、ビタミンAやビタミンB、ビタミンD、ビタミンE製剤など各種ビタミンミネラルに加え、血液をサラサラにするためのEPA製剤などがあります。

これらの薬とサプリメントでは、具体的にどのような違いがあるのでしょうか? 1つずつ解説していきます。

カルシウム製剤、マグネシウム製剤とサプリメントの違い

まずは、カルシウム製剤とマグネシウム製剤、それとサプリメントの違いについてです。

カルシウムというと牛乳やホウレン草に含まれているものというイメージですが、実はカルシウムにも様々な種類があります。特に、お薬で使われているカルシウム製剤は、それぞれ効果や目的によっていくつかの種類に分かれています。

例えば、骨粗しょう症の治療を目的に処方される「アスパラギン酸カルシウム製剤」、低カルシウム血症や副甲状腺機能低下症に使用する「グルコン酸カルシウム製剤」や「乳酸カルシウム製剤」、高リン血症の改善や消化管内の制酸成分として胃炎などに使用される「沈降炭酸カルシウム製剤」などがあります。

これらは医薬品であり、治療に必要な場合にのみ処方、使用されるものです。そのため、サプリメントのように栄養補給を目的として処方されることはありません。

もし、これら医薬品をサプリメントのように毎日、長期間摂取するとなると、相応の副作用のリスクが伴います。一番懸念される副作用が高カルシウム血症で、ビタミンD製剤と併用すると更にリスクが高まります。高カルシウム血症になると、食欲不振、悪心・嘔吐、便秘、筋力低下、多飲多尿、精神症状等があらわれ、さらに重篤になると不整脈、意識障害が出現する場合があります。

また、医薬品の中にはアルミニウムが含まれている物もあります。このような医薬品に含まれるアルミニウムによって、便秘になるなどの副作用が出る恐れもあります。

それから、骨にも良いと言われるマグネシウムの場合、お薬で使うマグネシウム製剤は主に「酸化マグネシウム製剤」です。これは便秘の方に下剤として用いるもので、栄養補給や骨粗しょう症の治療目的には使用されません。もしサプリメントのような感覚で摂取した場合は、当然ながら下痢になります。

このように、医薬品の利用は副作用のリスクがあることから、医師の指示のもと、慎重に投与されています。基本的に、病態を抱えていない方に向けてお薬を栄養補給の用途で使用する事はありません。

対してオーソモレキュラー療法で用いる専用のサプリメントの場合、栄養補給を目的とし、食品由来の成分から作られています。例えば、カルシウムなら魚の骨を原料とした「リン酸カルシウム」や、「リン酸マグネシウム」などを主成分としています。(※当方が推奨する分子栄養学実践専用サプリメントの場合)

これらは、人の骨や歯と同じ、生体内に存在するカルシウムやマグネシウムのため、生体利用効率が高い栄養素です。食品に含まれる成分ですので、あまりにも過剰に摂取しなければ、長期間、毎日摂取したとしても、基本的に副作用はありません。

また、ビタミンDについても、オーソモレキュラー療法で用いる専用のサプリメントの場合、羊毛に紫外線を当てて生成されたものを抽出しています。こちらも、生体内に存在する食品由来の成分ですので、薬と違って副作用は殆どありません。

このように、薬のカルシウム製剤やマグネシウム製剤、ビタミンD製剤と、サプリメントのカルシウムマグネシウム、ビタミンDでは、同じように見えても全く異なります。基本的に医薬品には副作用があることから、栄養補給を目的として使用する事は出来ません。

では、使う材料が違うだけで、サプリメントを使用するオーソモレキュラー療法と、薬を使用する保険診療では、同じように見えて一体何が違うのでしょうか? こちらも先ほどと同じく、骨粗しょう症の例で見てみましょう。

オーソモレキュラー療法の場合、骨粗しょう症のケアには、カルシウム・マグネシウムやビタミンD、ビタミンKなどのサプリメントを用いています。併せて、必要に応じて西洋医学的なアプローチも取り入れ、破骨細胞の働きを抑える「骨吸収抑制剤」なども取り入れることがあります。

一方、病院で行われている骨粗しょう症の治療においても、カルシウム製剤やビタミンD製剤、ビタミンK製剤、破骨細胞の働きを抑える「骨吸収抑制剤」などのお薬が処方されています。

この2つのアプローチは非常に似ていますが、一体どこが違うのでしょうか? まず、大きな違いとしては「マグネシウム」の摂取を重視し、身体が自然な形でカルシウムやマグネシウム、ビタミンDなどが使えているかどうかです。

現在の保険診療における骨粗しょう症の治療法では、基本的にマグネシウムは処方されずに「カルシウム製剤のみ」処方されています。これは、お薬で使われているマグネシウム製剤は骨粗しょう症の治療目的には当てはまらず、主に便秘の解消を目的とした下剤としてや、胃酸を中和する制酸剤として処方されているためです。

また、骨粗しょう症の治療で用いられる「ビスフォスフォネート薬」とマグネシウムを同時に摂取すると、マグネシウムがビスホスホネート薬の吸収を低下させてしまうことが知られています。このため、マグネシウム製剤の同時処方は殆ど行われていません。

対してオーソモレキュラー療法では、骨粗しょう症の治療においてもカルシウムと同時にマグネシウムの摂取も重視しています。これは、骨の形成にはカルシウム以外にもマグネシウムが必要な点と、ビタミンDの活性化にマグネシウムが必要なためです。オーソモレキュラー療法では、必要な栄養素を前駆体で補給し、後の利用は身体に任せることで、より自然に体内で栄養が使える状態を目指しています。

そして、オーソモレキュラー療法ではカルシウムの吸収やビタミンDの吸収、利用に至るまでを考慮するのが特徴です。例えば、カルシウムの吸収を促進したり、阻害したりしてしまう原因としては次のような影響があります。

カルシウムの吸収を促進するもの

  • 胃酸

  • アミノ酸やペプタイド

  • 乳糖

  • ビタミンD

  • マグネシウム

カルシウムの吸収を阻害してしまうもの

  • H2ブロッカー、ステロイドなどの服薬

  • 高リン酸の食事

  • 高食物繊維の食事

  • 高脂肪な食事

  • ストレス

カルシウムは胃酸の分泌量やアミノ酸(タンパク質)によっても影響を受けるので、オーソモレキュラー療法ではピロリ菌感染の有無や胃酸の分泌量など胃腸機能もチェックします。

また、ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、吸収するためには十分な胆汁の分泌量も必要です。この胆汁がしっかり分泌されているかどうかや、吸収したビタミンDを活性型に変換するために重要な役割を果たしている肝臓と腎臓の健康状態も重視します。

加えて、吸収を阻害してしまうような食生活やストレスなど生活習慣も見直すようアドバイスしたり、運動して筋肉をつけることも積極的にアドバイスを行っています。

これは、単に骨を作る材料であるカルシウムやマグネシウムなどを摂ったとしても、骨に刺激が無ければ骨の修復は行われないためです。併せて、骨を支えているのは筋肉であることから、筋肉量も重視します。このため、骨粗しょう症のアプローチにおいても、タンパク質の摂取量やビタミンB群の摂取量など、骨に関する栄養素以外のアプローチも同時に行います。さらに、糖尿病などによる合併症として骨粗しょう症を発症している場合は、糖尿病に対する分子栄養学的アプローチも同時に行います。

このように、骨粗しょう症のアプローチでも様々な面を考慮し、根本原因から解決していくようアプローチを行っていくのがオーソモレキュラー療法です。

対して保険診療による骨粗しょう症の治療では、ビタミンD製剤として活性型のビタミンDが処方されるなど、体内での栄養素の働きを人為的にコントロールします。また、アプローチにおいても骨に特化したアプローチしか行われません。

これが、オーソモレキュラー療法と保険診療のアプローチの違いです。比べてみると、オーソモレキュラー療法と保険診療では、使う材料ややり方、考え方に大きな違いがあることが分かりますよね。




※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓


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